あまり緊張していない、は…どうやら私の勘違いだったらしく…いざ入店して初めて、これから刀奈とその…するのか、と言う想いが湧いてくる…
まぁ、想う…と言うよりは…自分でも制御出来そうにも無いコレは…寧ろ本能と言うか、感情そのもの…もしかして私、自分で思う以上に刀奈とそうなってしまう事を期待してたの…?…うわ、今更ながらに恥ずかしさが湧いて来て…何より、自分でも少し浮かれている事さえも自覚して行く…さっき刀奈を選べないと自分で、そう思った筈なのに…
浮ついた気持ちに続いて…今度は吐き気すらしそうな罪悪感と、今は…刀奈に対して抱いている性欲が千冬に対しての気持ちより勝っている事が分かって嫌悪感も同時に湧いて来てしまう…いや、私…余りにも最低過ぎるでしょ…
そんな感じで、落ち込んでいる私を後目に…刀奈は慣れた雰囲気で部屋を決め、部屋のカードキーを手に取る……いや、鍵じゃなくてカードキーなんだね…本当に私の常識は古いみたい…
…とまぁ、そんな感じで…こんな些細な事にまで凹んで、追加でショックを受けている私の様子には…幸い刀奈は気付かなかった様で(やり方はバッチリ身に付いているみたいだけど、それでもやっぱり刀奈の方が私より緊張している様だから…まぁ、今は…私の内心に気付かれると正直、本気で死にたくなるだろうからありがたくもあ……いや、それはそれでちょっと複雑でも有るかも知れない…)
「十秋ちゃん?」
「っ…!…何ですか?」
「大丈夫…?」
とは言え、さすがにいい加減…私の様子が可笑しいのは気付かれたみたい…ここは、何とか誤魔化さないと…
「…何でも有りません…えっと、部屋はもう決めたんですよね?ホテルの人に声掛けられたら面倒ですし、早く入りましょう…」
「……そうね、行きましょうか。」
刀奈の方で、私の状態は気になってはいる様だけど…幸い、刀奈は何も聞いて来なかった…ハァ…ホント、自分でも持て余すよ、こんな気持ち…どうしたら良いのか…ま、なる様にしかならないだろうけどね……と言うか、今まで…自分の本心に気付くタイミングなんていくらでも有ったのに、何で今気付くの…?
しかも、刀奈の方が千冬より好きとかなら万事解決と私も言えるのに…単に私は、シたいだけみたいだし…ホント、最悪。
「…ねぇ?」
「っ!…え?」
「…今、私は十秋ちゃんが何考えてるか…ハッキリとは読み取れない…でも、何か悩んでるのは分かるわ…」
「……」
「十秋ちゃん、最後にもう一だけ度確認するわね?嫌なら、良いのよ…?」
…嫌ならって、それは…
「もう、部屋決めたじゃないですか…」
「今なら、キャンセルは出来るわ…」
「……ふぅ…嫌じゃないですよ…」
嫌じゃない…寧ろ、今私は…物凄く刀奈とシたい…ここまで来てお預けになったら…逆に私の方が耐えられないと思う…全ては、私が性欲に負けた訳だから自分でもクズだと思う…でも、それでも…
「じゃあ本当の事を言います…今、自覚しました…私は今、姉さんへの気持ちも捨てられない癖にただ、刀奈さんとヤりたいと…そう思ってしまいました…自分の欲に、負けてしまいました…なので、今度は私から聞きます…こんな、最低の私とシたいですか?」
言った、言ってしまった…ハッキリ言って自分でもクズとしか思えない事を、私を本気で好きになってくれた刀奈に向かって…
「…ハァ…会った時から感じてたけど、十秋ちゃんって真面目よねぇ…」
「っ…え?」
「じゃあ、私からももう一度ハッキリ言うわ…私はね、十秋ちゃんが気持ちに応えてくれないのは残念では有るけど…それ以上に今はただ、貴女とそうなりたいと思ってるわ。」
「…刀奈さんも、今は私への恋愛感情より…性欲の方が大きいと…?」
「ええ。でも、それで良いんじゃない?今、私たちはお互いそうしたいと思ってる…同意の上なら、何の問題も無いでしょ?私は、複雑では有るけど…今は…少し嬉しいわ。」
「嬉しい、ですか…?」
「ええ、だって…十秋ちゃんは私とそうなりたくないのに、私を気遣って…仕方無くここに居るんじゃないと分かったからね…だから、私は嬉しいの。」
そう言って刀奈が浮かべる笑顔から…私は目を逸らした…多分今私、顔が真っ赤なんじゃないかな…
「じゃ、お互いの気持ちが分かった所でもう行かない?そろそろ怪しまれるし、他のお客さんと顔を合わせるのも嫌でしょ?」
そうだ…まだここ、ホテルの入り口だった…何でこんな所で悩むのか…どうせ気付くなら、せめて部屋に入ってからが良かったよ…
「はい、行きましょう刀奈さん…」
そこで私たちは…自然と繋いでいた手を一度離し、改めて繋ぎ直す…俗に恋人繋ぎと言われるその形に……うう…何かまた恥ずかしくなって来た…私、中身はもう十代の女の子とかじゃないのに何でこんなに恥ずかしいのか…ハァ…こんな簡単に翻弄されるんじゃ、簪たちを断る時も大変だろうなぁ…ハァ…ホント、憂鬱…