『そうしてこの世に再び生を受けたその女は…今度は嘗て向こうで想いを寄せた相手の妹と言う立場で、今この瞬間を生きているのです…』
「……」
『…ふぅ…で、ご感想は?』
「それは…本当の話なの…?」
彼女が話してくれたあの子の過去…前世で出会い、抱いてしまった織斑千冬と言う一人の女性への燃え上がる様な想い…あっちではせいぜい壁になるのは同性と言う事だけだったのに(まぁ、それだってハードルとしては十分に高いけど…)こちらでは同性の上、織斑千冬とは血の繋がった姉妹と言う間柄になってしまった事でせっかく再会出来たのにもう告白を口にする事さえ出来無くなったと思ってしまい…その癖、向こうでも言えなかった為に吹っ切る事も出来ず…自ら抱いてしまった想いが一種の呪いとも言えるものになってしまい、その所為であの子は今もずっと…苦しみ続けているのだと言う…普通では有ればとても信じられない様な内容…
……でも、あの子の場合…どうも冗談とか、家族としての普通の好意としてさえ、姉で有る織斑先生に口に出す事を執拗に避けている様に私も感じてた…だから…
『…さて、私はあくまで独り言を言っただけですから…どう判断するのかは結局、貴女次第です。』
「……」
…そうね、あくまでさっきのはそう言う話だった…聞いて何を思うのかは私の自由、か……梯子を外されたとか、そんな風に思うのは私のワガママよね…
『最後に貴女に聞きます。貴女に…あいつを救う事が出来ますか?』
「…正直、分からないわ。でも、出来るだけの事はしてあげたいと…今は、そう思ってる…」
『そうですか…』
「今日はありがとう…その、良ければまた相談に乗ってくれる…?」
『…ここまで話してしまった以上、私にも責任は有るでしょうからね…分かりました、私に出来る範囲で有れば…ただ、次からは電話する時間は考えてくださいね?』
「それは…ごめんなさい…」
『では、失礼します…あいつの様子を見に行ってやってください…そろそろ起きてるかも知れませんし…』
「そうね…改めて、本当にありがとう…」
電話を切る…携帯に表示された時間を見れば一時間半程経過していた…そうね、早く様子を見に行かないと…
「…刀奈さん、おはようございます…」
寝室に戻ると彼女は目を覚まし、身体を起こしていた…ただ…
「まだちょっと顔色が悪いわね…もう少し横になっていた方が良いわ。」
彼女の身体を手で軽く押して、ベッドに戻す…この子は目を離すとすぐ無理するからね…ホント、最初に会った頃からそう言う所だけは全然変わらない…
「すみません…」
「気にしないで…私の所為でも有るんだし…」
でもと言うか、ほぼほぼ私の所為でしか無いんだけどね…まぁ、この子はそう言ってもどうせ納得しないから、ね…
「…そう言えば十秋ちゃん、結局昨日の夜から何もお腹に入れてなかったわね…おかゆでも持って来るわね…ちょっと待ってて。」
「…いえ…大丈夫なんで気に「良いから、待ってて」あ…」
遠慮しようとする十秋ちゃんを遮って寝室を出る…この子の場合、少し強引に行かないと…さて、付いててあげたいけど…ご飯は食べさせないと…
いくら食事を注文出来るとは言っても、さすがにおかゆや雑炊みたいのは無い…取り敢えず近くに有ったコンビニに走る事に…レトルトしか無いけど、手に入るだけマシかなぁ…あ、ついでに私の方も朝ごはんにサンドイッチでも買っておこう…取り敢えず今日は看病に回すとして…最悪明日もかなぁ…あの子は一回体調崩すと復帰するまで時間掛かる事が有るし…その癖、その割には無理するし…ホント、初めて会った時から一夏君共々…ヒヤヒヤさせられるのよね…まぁ嫌だとは思わないけどね、慣れたのも有るけど…そもそも、色々聞いた今も…あの子が好きだからね…私を選んでくれないのは仕方無いにしても、悩み続けたままなのは良くないとも思うし…
「ホント、心配ばかり掛けるわよね…」
つい、独り言から紡がれる…幸い、もう外で人気も無いとは言え…今の私が口にして良い言葉じゃないけれど…それでも、これぐらいは良いわよね…これでも、まだ私はあの子の家族の一人のつもりだしね……例え、あの子がもうそれを許してくれなくてもね…
「まぁ…卑怯だとは思うけど、こうやって甲斐甲斐しく世話してる内にあの子が私に靡いてくれるとか…逆に無いかしらねぇ…」
とは言え、前世で二十歳前後まで生きて…当時出会った一人の女性に心奪われて…その後亡くなり、この世界に転生してからもそのたった一人の女性を今も想い、恋い焦がれてるんだから難しいかしらねぇ、やっぱり…
「ま、それでもろくに何もやらずに諦めるなんてのは私のキャラじゃないしね…あの子に嫌われない程度には、これからもアタックしつづけようかしらね…」
忘れた方が良いとか、そんな烏滸がましい事は言えない…何より実の姉妹と言う関係になってしまってる以上、逆に完全に吹っ切るのは難しいのも分かってる…でも…例えそれでもと、そんな風には…私もまだ思っていたいかな…