親友の妹に転生しました   作:三和

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「ああ…その事か…」

 

あの後とても寝ている気になれなかった私は彼の所に向かい、一夏から聞いた事を確認してみる事にした……ちなみに、束と娘のクロエは今も仮眠を取っている様だ…

 

「いつかはバレる、と思っていたが…予想より早かったな…まさか今になって、あいつに関する取材の話が出るとは思いもしなかったよ…」

 

「では、やはり貴方も状況を把握していたと?」

 

「ああ。私の両親はおおらかな様で、昔から脆さが有るからな……どちらかと言えば有事の際、一番影響を受けるのは母の方でな、大抵は母の事を支えようとする内に父の方も消耗して行き…最後は共倒れになる形で二人とも潰れる、と言うのが定番のパターンだがな……ちなみに私はもう実家を出ているが、あいつが中々出て行かなかったのは…何だかんだ二人の事が心配だったからだ…」

 

以前…実家に住みつつも両親をたまに邪険に扱う事も有ったあいつに、二人の事をどう思っているのか聞く機会が有ったのを思い出す…

 

『あー…嫌ってる訳じゃないよ?まぁただ、私が子供の頃はちょっとした行き違いと言うか何と言うか…色々当時の私に無理をさせたと今も思っているらしくて…結構過保護になる時も時々有ってさ、もう気にしなくて良いって言ってるんだけどなぁ…』

 

聞けば、フェンシングを習うのを勧めたのも両親だと言う…

 

『いや、辛くなかった訳じゃないよ?ただ、それでも…一時期は結構楽しかったんだよね…まぁ、最終的に練習がどうのとかじゃなくて…フェンシングをやってる事自体、もう単純に嫌にもなった時も確かに有ったけど…別にそれで両親を恨んだ事は無かったんだけどね…』

 

フェンシングが嫌いになった理由そのものは聞けなかったが、あいつはそれから公式戦に呼ばれても基本的に断る様になったと言う……そんな時、とある親戚が勝手にモンド・グロッソにあいつの事を売り込み、あいつがその事を知らされた時には…もうとても、あいつの意思で出場放棄出来る様な状況では無くなっていたと言う…

 

『いや、もう参っちゃったよ…いくら戦うの自体は嫌いじゃないと言っても、別に目立ちたい訳じゃ無かったのに…まぁお陰で千冬にこうして会えたし、準優勝しても思ったより私の事が分かる人が居なかったのも幸いだけど…』

 

……いつの間にか脱線して来たが、フェンシングは…あいつにとって両親との絆を形成する一因でも有るのだろう…だからそれを否定されてる様でつい、キツい言葉も出てしまったのだろうな…

 

「私は外から妹と両親を支える事を決め、あいつは二人と共に暮らして支えて行く…当時あいつとの会話はほとんど無かったが…自然と、そんな風に役割が決まってしまったな…」

 

思考に耽っていた私の耳に、彼の声が聞こえて来て我に返る…最近はこうして会話している時でも…つい、あいつの事を考えてしまうな…学園で教師としての仕事をしている時は、忙しいせいかそうでも無かったが。

 

「君も知っての通り、あいつはあれで頑固な方だ…何が起きても簡単には折れないあいつが居たから、二人はまともでいられてたと言っても良い…」

 

「……つまり、あいつが亡くなってしまい…それが原因で二人は可笑しくなってしまったと?」

 

「そうだ。あいつがもう居ない、と言う現実を直視出来無くなったんだろうな…私では、どうする事も出来無かったよ……まぁ私の場合、両親に限らず…昔から人と接するのはあまり得意な方でも無いがな…」

 

だろうな。彼は基本的に妹のあいつは元より、両親の事も大事にしているのは当時会ったばかりの私でも何となく分かったが…それでも、向こうからは…今こうして会話してる間も何処か壁が有る様に感じて来る…彼の場合、両親と妹の距離感すら時折怪しくなるのに相手が全くの他人なら…相手は会話自体を放棄したくなる程の圧迫感を感じるかも知れんな…実際は恐らく、感情表現がただひたすらに下手なだけなんだろうが。

 

いよいよ付き合いも長くなって来てるのでそんな彼にもう慣れている私と、そもそもそんな物を気にもせず気に入った相手なら懐に入って来ようとする束と違い…今でもクロエは彼をどちらかと言えば苦手にしている程だからな…それでも最近はクロエの方から彼に話し掛けるパターンも増えても来ている…束と彼が最終的にそう言う仲になるのなら、良い傾向とも言えるだろう……残念ながらこの壁が消える事は…これから先も無さそうだが。

 

「ま、とにかく私が動こうと決めたのはそう言う理由だったんだ…決心の着かない私を誘ったのは束だがな……すまなかった、君にはやはり伝えるべきだったな…」

 

「良いんです、気にしないでください…私も二人の事は気にしていましたし、先に言われていたなら…それこそ全てを投げ出して二人に会いに行っていたでしょうから…」

 

二人は…両親との愛情を受けた事が無いに等しい私の心の内に気付き…時折、あいつにする様に私にもそれを与えようとしてくれた…歳も歳なので非常に照れ臭くは有ったが、悪い気分では決して無かった…直接出会えた回数はそう多く無いが、一夏の方もそう思っているだろう…何なら、二人の元に向かう私に強引について来た可能性すら有っただろう…ある意味、伝えられなくて良かったのかも知れない…

 

「ま、二人の事は今は結局どうする事も出来無い。今はもう一つの話を考える事にしようか…」

 

「あいつに関する取材の件、ですね…」

 

「ああ。君は、どうする…?私は君に委ねようと思う。」

 

「私に、ですか…?」

 

「ああ…君は、どうしたい?」

 

改めて考える…私は、あいつの事を知って欲しいのか否かを……そうだな…私は…

 

「私はこの話…」

 

案外、すんなり出て来たその答えを…私は彼に告げた。

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