「…ハァ…ねぇ…本当に良いの…?」
「うん!」
その後私はこれまでの鬱々とした気持ちが何だったのかと思うくらい…上機嫌で刀奈と織斑家に戻って来た…途中で、とある物を買って。
「…私、本当にそんなつもりじゃなかったのに…」
「そんなに気にする?…刀奈は、私が欲しかったんじゃないの?」
「そりゃ…まぁ、そうだけど…でも、それはこう言う意味じゃ…」
とは言え、刀奈の方は今も何か煮え切らない感じ…まぁ、ある意味肝心な私の心は手に入ってないから不満にもなるだろうけど…
「…ちょっと…本当は分かってて、そんな風に思ってるわよね…」
「…フフッ…考えてる事が伝わるって、便利だよね~…」
「…今まであれだけ困ってた癖に…」
「だって私は、刀奈にはもう隠す事は何も無いしさ…だったら、もう口に出さなくても伝わるから楽としか感じないよね~♪」
「もう…」
「…と。ほら、あんまり動かないで…やりにくいから。」
「…と言うか、何で帰って来るなりやるのがコレなのよ…」
「え?だって刀奈が疲れた顔してるから、膝枕でもしようかって聞いたら…刀奈も承諾したじゃない。」
「…疲れてるのは十秋ちゃんの所為だし、耳掃除まで頼んで無い…」
「あれ?嫌だった?」
「…そうは言ってない…」
「なら、良いじゃない…ふぅ…うん、こんなもんかな…じゃ、次…反対の耳もやるからこっち向いて♪」
「……」
「あの…ここまでするの…?」
「こう言うのはちゃんと書面に残すのは大事だからね…ま、紙だと見付かった時に困るから…電子データにはなるけど。」
さっきの契約条項を学園から持って来たPCで電子書類として纏め、お互いの署名をする…まぁ、内容的には法律上アウトになりそうでは有るし…ほとんど形だけでは有るけどね…
「うん、これで完成…これで完全成立だね……ハイ。」
「え…?」
「私の主人は貴女だからね…ちゃんと肌身離さず持ってて…間違っても、引き出しに入れっぱなしとかしない様に…」
PCから引っこ抜いたUSBメモリーを刀奈に渡す…単純に利便性の話をするなら結局SDカードの方が利便性としては高い…けどSDカードの場合、持ち歩くと無くしやすいからね…
「…ハァ…分かった、こっちでアクセサリーにでも加工して身に付けとく…」
「成程…姉さんや他の先生に見付からない様にね?」
「…学園の校則ちゃんと確認してないの?元々、ISをアクセサリーに加工して持ち歩いてる人が居るくらいなんだから、そこまで煩くないわよ…まぁ、普通の高校に比べたら緩いってだけで限度は有るだろうし…あんまり目立たないデザインにするけど…ハァ…にしても…」
"アクセサリー"で連想したのか、そこで刀奈が私の首に手を伸ばし、触れる…正確には、私の首に有る布製のソレを…そして、刀奈が手を動かす度にチリンチリンと鈴の音が鳴る…そう、それは一般的に"首輪"と言われる物で…
「苦しかったりしない?」
「んー…今の所少し違和感のある程度で、特に苦しいとかは無いかな…」
「…十秋ちゃんは肌が弱いしね…後々、ちゃんとしたのを用意するわ…それは安物だから、どんな影響が有るか分からないし…」
「う~ん…多分大丈夫だと思うけど…まぁ、少し残念では有るけど…刀奈と二人きりじゃない時と、後…汗かいたり、お風呂やシャワーの時は外す様にするよ。」
「そうして……でも、本当に良かったの…?私、ここまでして貰うつもりは「違うよ、刀奈」…え?」
「私が、この状況を望んだの…それまでの経緯はともかく…最終的にこうなる事を望んだのは私自身なんだから、貴女は罪悪感とかは感じなくて良いの。」
「そんな風に割り切れないわよ…私、本当にこんな事をさせるつもりじゃ…」
そんな悲しそうな顔しなくても…本当に私は、私の意思でこうしてるんだから気にしなくて良いのに…
「私の心には確かにまだ千冬が居る…でも、刀奈は私が欲しかったんじゃないの…嬉しくない?」
「そりゃ…全く嬉しくないかって言ったら、嘘にはなるけど…」
「なら、良いじゃない…貴女は私を…その心の思うまま、好きに扱ってくれれば良いの。てか、まだ終わってないんだけど…」
こうして従属者が首輪を嵌めた以上…他にも付けないといけない物が有る…
「でも、それは…自由じゃなく「違うでしょ?」え?」
「首輪を付ける以上、アレはセットなの…言ったでしょ?"貴女からの首輪を嵌めたまま"の自由だって。」
私はテーブルの上に置きっぱなしになってる物を指差す…そこには鎖が有る…アレを付けて、始めてこの主従契約は本当に完成となる…そこは私も、譲れない。
「……」
やがてソファに座っていた刀奈が立ち上がり、テーブルの上の鎖を手に取る…そして床に正座していた私の方に顔を向ける……うん、やっぱりね。
「刀奈、今…自分がどんな顔してるか分かる?」
「…そうね…私は今、相当醜い顔をしてるんでしょうね…」
まぁ、確かに…この俗に愉悦ととも言える、暗い喜びに満ちた顔…欲望に満ちた…下卑た笑み。
でも、私にとってその顔は…
「…ううん…綺麗だよ。」
それでも私は…この、更識刀奈と言う少女に…負の感情は浮かんで来ない。
「…お世辞、じゃないわね…本当に、貴女はいつもそうなんだから…」
その言葉と共に彼女の浮かべる表情が苦笑の形になる…
「私は変わらない…多分、これからも。」
「変われない、そもそも変わる気が無いの間違いじゃない?」
「そうかもね…」
私の前に歩いて来た刀奈が、私の首輪に鎖を付ける…
「ねぇ…いつから、気付いてたの…?」
「刀奈がこの状況を言う程嫌がってないのは…最初から気付いてたよ?」
そう、さっきホテルでこの提案をした時からずっと…刀奈は私に、そして自分自身にも"嘘"を吐いていた…だって、申し訳無さそうにしつつも…彼女の目はずっと揺らいでいた…目は口程に物を言うとは良く言った物と思う…正しく、あの時の刀奈はそんな感じだった…本当は喜びたいのに、その気持ちに蓋をしようとしていた。
「こんなの、私の思う形じゃない…私が欲しかったのは貴女の心だけ…本当に、それだけだったのよ…?」
「…フフッ…"嘘吐き"♪」
「…それは、十秋ちゃんもでしょ。貴女はこの状況を望んだわけじゃないでしょ?」
「刀奈、それは貴女には関係無い事だよ…そこまでは、貴女でも踏み込ませない。」
「そうね…ふぅ…私はただ、貴女を自分の物にしたいだけだったのね…心が私に向いてるかどうかなんて…結局どうでも良かったのね…」
「フフッ…そりゃ、全く欲しくなかったわけじゃないんだろうけど…でも、一番の目的はこっちだよね?」
「…本当にくれるの…?私にあげちゃって、良いの…?大事にしてあげられるか、分からないわよ…?」
「…良いよ、貴女なら。」
「…そう、なら…貴女は私の物よ。」
刀奈が私の唇に自分のソレを押し付け…離れる…
「…ふぅ…けどね、私は別に…欲望に負けて獣になる気は無いの…ほら、こっちに座って…」
刀奈が立ち上がり、私を立たせる…鎖では無く、私の手を優しく掴んで…そして、私をソファに座らせる…
「貴女だって犬じゃない…人よ。主従契約は結んだとしても、貴女は自由…形だけでも、私とは…対等の関係で居て欲しい…」
「それだと契約の意味が無いんだけど…」
「そう言ってるのは私よ?私が主人で、貴女は従者…従えないの?」
「…ふぅ…分かった、刀奈の言う通りにするよ。」
「うん…で、首輪はともかく…やっぱりこんなの、要らないわね…」
そう言って、刀奈が首輪から鎖を外し…私の隣に座る。
「全く…無駄な買い物だったわね……まぁ、首輪は…悪くないけど…」
「…ふぅ…何か、刀奈らしいね…主従契約の筈なのに、私を横に座らせてるんだもの…」
「あのねぇ…私、別に暴君じゃないから…ウチの使用人の皆だってそりゃ…"部下"では有るけど"物"とか、"道具"みたいに思ってないわ…何なら、皆だって大事な"家族"よ…貴女もね…そして…貴女は犬じゃないし、当然ペットでもない…必要も無いのに、床に座らせて…私がふんぞり返るつもりも無い……まぁ、犬や…猫の真似は良かったけど…こう、結構…興奮しそうに「ニャア♪」っ…ハァ…私を挑発して、どうする気?」
「あ、やっぱり猫がお気に入り?」
「…犬も悪くなかったけど、やっぱり十秋ちゃんは猫かしらね…性格的には、ちょっと犬感有るけど…」
「ワン♪」
「…う~ん…やっぱり、可愛いのはね「ニャア♪」…そろそろ押し倒すわよ?」
「…良いよ。刀奈の好きなタイミングで、そうしてよ…ニャア♪」
「…鎖なんて買うくらいなら、猫耳買えば良かったわね…まぁ、後々用意はするけど。…ま、今は取り敢えず…」
「あ…」
両肩を掴まれ、本当にソファの上に押し倒される…
「言ったわよね?押し倒すって…」
そして私の胸の方に手を…
「…ハァ…そうだった…貴女今、下着着けて無いのよね…それも、上も下も…」
「その方が刀奈がすぐ出来るでしょ?」
「…それはそうだけど…それはそれで、何かねぇ…そうね…この後買いに行きましょう…これからは、私の選んだ下着いつも身に付けておいて…もちろん、色は黒で良いから。」
「刀奈の好きな色で良いよ?」
「…どっちかと言うと…普段の野暮ったい服に割とエッチめな黒の下着着けてるいつもの十秋ちゃんが唆るのよ…正直、ずっとそう思ってた…」
まぁ、女性用で色の黒い下着ってなると…私みたいに慎ましやかな胸のサイズでも…まぁまぁ派手めな印象のデザインが多くなる…
「だから、今まで通りそうして…次からは下着は私が選ぶけど。」
「うん、分かった。」
「…さて、じゃあ始めましょうか…こっちもそろそろ、我慢の限界よ…」
「…良いよ…刀奈の好きにして。」
とまぁ…そんな流れで始まったのは良いんだけど…刀奈にまた、胸の辺りを歯型だらけにされてしまったり…ホント、こんな小さい胸の何が良いんだか…ま、刀奈が良いなら私がどうこう言う話でも無いんだけど。