親友の妹に転生しました   作:三和

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「お世話になりました。」

そう言って、一夏君と一緒に頭を下げる彼女に普通に返そうとして…さすがに私も躊躇う…う~ん…どちらかと言えばねぇ…

「…何と言うか…最終的には、こっちが色々とお世話されてたわよね…」

「ま、確かにね…私も結局、一夏や十秋には相当苦労掛けてたと思うよ…」

「私もそうですね…特に、十秋さんには…」

「ん~…私もそうかも…」

「いや、この中で一番…一夏君や十秋ちゃんに色々負担掛けてたのは、やっぱり貴女だと思うわよ…本音。」

「…ハァ…もうぶっちゃけって良いって話なら、正直…いや、やめておきます。」

「ちょっと一夏君!?そこは…『そんな事無いですよ』…とか言う所じゃないの!?」

「…アハハ…締まらないですねぇ…」

今日は二人が更識家を去る日…普通に挨拶して見送ろう…そう決めてたのに、つい…こんな感じに…まぁ、結局…私たちの場合"護衛"と護衛対象…と言うか、ウチに割と長期で匿ってた事になるんだから…"保護対象"と言うのが正しいかしらね…でも、そう言うライン…早々に越えてたものね…普通に、"家族"の様な間柄だったし…最後もこんなに砕けた雰囲気にするつもりじゃなかったんだけど…ま、結局…こう言う雰囲気が、一番私たちらしいのかしらね…でも、さすがに二人には情を移し過ぎた様にも思う…

これからの事を考えたら、要反省ね…何より、性別関係無く…護衛をする筈の相手に恋愛感情を持つのは、やっぱり良く無かった様に思う…この気持ちは、このまま墓場まで持って行く事にしましょう……ふぅ、さてと…

「それにしてもごめんね…お父さんとお母さん、来れなくて…」

「いえ、仕事じゃ仕方有りませんから。」

「お二人にも、宜しくお伝えください。」

とまぁ、そんな感じで…二人は一応目立たない様にタクシーで帰る事に…千冬さんはまだまだこっちに帰れないとの事だけど…二人に迫る手は大体潰した筈…本当に大変だったけど、そのお陰で今日と言う日を迎えられたんだから…そう考えると、報われるわね…ふぅ…

『さようなら、私の初恋…』

言わないつもりだったのに、つい口からそう漏れた…まぁ、小声だったし…聞こえてたとしても、皆聞かなかった事に…そう思ってた私の両肩が掴まれた。

「お姉ちゃん…今のってどう言う意味…?」

「お嬢様…詳しくお聞かせ願えますでしょうか…?」

「え…?」

二人に掴まれた肩からはミシミシと聞こえてはいけない音が聞こえる…恐怖の方が大きいのか、今の所痛みは感じない…そして、私は悟る…

…これは好奇心からの軽い"事情聴取"では無く…何が何でも話を聞くと言う"尋問"で有ると…そして、何故か今…二人が今までに無いくらいに怒っている…と。

「…あの…二人共、落ち着いて…どうしたの急に…?」

「「……」」

「えっと…それじゃあ、刀奈様…私、先に部屋に戻ってますね…?ごゆっくり…」

「え!?ちょっと本音!?逃げないで!?」

先の一言と共に私の視界から一瞬で消えた…いつの間にか、私の目で捉えられないくらい成長してたのね…そう、私が現実逃避するのを二人は許してくれない様だ…

「「行きましょうか(こうか)…」」

「はい…」






「えっと…一応、今の話を整理するわね…?とにかく、二人も…十秋ちゃんに恋愛感情を持ってしまっていた…そう言う事で良いのね…?」

急遽設けられた話し合いの場…そこで二人から、私は衝撃の事実を聞かされていた…何と言うか、以前…ウチの人間が皆して十秋ちゃんに膝枕を頼みに来る、と言う話を十秋ちゃんの口から聞かされたけど…正直、私はあの時以上の衝撃を味わっていた…

「ええ…お嬢様もそうだったとは…」

「私もまさか、お姉ちゃんもだなんて…」

「…ハァ…参ったわね、ホント…やっぱり罪作りだわ、あの子…」

まぁ、簪ちゃんは一応別にするにしても…あの子って結局…私や虚ちゃんみたいな闇の中を生きてる人間からしたら、一種の光とも言える存在だったからね…無理も無いと言えば、そうなのか…

「…ハァ…で、どうする気?」

「どうするって?」

「二人は、その気持ちをどうするつもりなのかって事…」

二人の気持ちは…確かに分かる…ま、実際私もそうなんだから…余計にね…けど、ハッキリさせないといけない事は有る…

「お嬢様は、どうするおつもりなんですか?」

「私は…このまま、十秋ちゃんの事は忘れようと思ってる…」

「そんな…そこまでしないと「簪ちゃん…貴女には理解出来無いかも知れない…でも、敢えて言っておくわ」…え?」

「私たちとあの子とでは住んでいる世界が違うの…そもそも本来なら、出会うべきですら無かったのよ…」

「でも、今更無かった事になんて…」

「それが、あの子の為でも有るのよ…虚ちゃんは良く分かってるわよね?」

「…十秋さんは、私たちの様な穢れた生き方をしてる人間にも光を与えてくれる…そうする事が負担にならないわけも無いのに…何の下心も無く、そうしてくれました…だからこそ、やはり駄目なんでしょうね…この気持ちを伝えたりすれば、それは彼女への重荷になってしまう…多分、忘れろと言っても…彼女には出来無いでしょう…だから、初めから口に出すわけにも行かない…」

「そんな…」

「だから、このまま忘れるの…出会いそのものを今更無かった事には出来無いけど…この気持ちは、胸の内にしまっておくの…三人で、墓場まで持って行く…そう、この場で誓いましょう…」

簪ちゃんは最後まで渋ってたけど…最終的には、同意してくれた…取り敢えず、一段落…そう思ってた所に…

「大変大変!刀奈様!かんちゃん!お姉ちゃん!」

さっき別れた本音が部屋に駆け込んで来ていた。

「…本音、今は一応大事な話を「ハァ…ハァ…それどころじゃないよ!さっき連絡が有って…二人の乗った車が襲撃されたって…!」…は?」

その日…私たちの今までで一番長い一日はこれから、始まるのだった…






「…ハァ…本当に、締まらない結果になったわね…」

「アハハ…ごめんなさい…」

「あー…ごめん、十秋ちゃんは元より…一夏君が悪いわけでもないのよ…悪いのはこっち…本当にごめんなさいね、もう全部終わったとばかり思ってたんだけど…」

まぁ、二人の救出は何とか出来たけど…結局安全の為…二人はしばらくウチと織斑家を行き来する生活に…これじゃあ諦めようと思っても諦め切れないじゃない…とは言えもちろん、織斑家の方は元より…当然ウチでも元々暮らしてたあの頃とは比べ物にならないくらい…皆でガチガチに警備がされる事になった為…その間、私は十秋ちゃんに手出しなんて出来るわけも無く…私はしばらく生殺しの気分を何度も味わう羽目に…ホント、私としては…あの頃が一番キツかったわね…

…ま、でも…まさか…最終的にウチでも無く、織斑家ですら無い場所で…ほぼ誰にも邪魔されずに、私と十秋ちゃんの二人きりと言う状況が出来上がるのは本当に何なのかしらね…もうそう言う運命なんじゃないか、この気持ちを口に出しても大丈夫なんじゃないか…そう信じたくもなるわよ、本当に…


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「ん…」

 

目を開ける…何か、また夢を見ていた様な気がする…それも恐らく…十秋ちゃんがまだウチと関わってた頃の夢…まぁ、やっぱり内容は思い出せないんだけど…ん?

 

「…パジャマも着ないで寝ちゃったのね…」

 

部屋の電気を消している為か、視界はほとんど利かないが…自分が今、裸なのはさすがに分かる…そして、自分が熱を帯びた物を抱き締めてるのに気付く…

 

「すー…すー…」

 

「十秋ちゃん…」

 

私にとって最愛の少女が腕の中に居た…そして、見えなくても感覚で分かる…彼女も今、裸で有ると…そして…

 

「…やっぱり、貴女は優しいわね…」

 

目を凝らせば、彼女が私に顔を向け眠ってるのが分かる…そして、最早物理的に見えないけど…彼女の手はそれぞれの片手が私の頭と背中に有る…多分、力任せに彼女を抱き締めていた私と違い…彼女は私を慈しむ様に、優しく抱いてくれていたのだと分かる…

 

「…ホント、一つ違いとは言え…一応貴女の方が歳下なのに、貴女はまるで…母親みたいね…」

 

まぁ、彼女の前世の事も込みで考えれば…間違い無く、彼女の方が歳上では有るんだけど…それを踏まえて一つ思う…

 

「私はあの頃貴女をあくまでも、守るべき存在と捉えていたけど…貴女からすれば、私の方がそう言う存在だったのね…」

 

そう考えてしまえば、あの頃彼女が向けて来る包み込んで来る様な優しさ…それに付いても、納得が出来てしまう…そりゃ、ウチの皆が頼るわよねぇ…何よりこの子、私たちみたいな存在を全く怖がったりせず…分け隔てもせず、ソレを全員に向けようとするんだもの…

 

「そもそも貴女は…前世で、あくまで好意を持った織斑千冬と言う存在に会う為に日本に来ていた筈なのに…一夏君を蔑ろにするって事も出来無かったのよね…」

 

決して安くは無いお金を掛けて意中の相手と会うのだ…当然、下心も込みでウキウキしながら会いに行った筈だ…その上で、その相手の家に居る子供と言うのは…口ではどう言いつつ、内心は…二人の時間を邪魔する鬱陶しい存在としか思えない人がほとんどでは無いだろうか…それでも彼女は、彼の姉代わりで有ろうとしたと…確かに今世で生きた時間を経て、彼女の性格に多少なりとも…変化は有っただろうと思う…

 

…それでも、思うのだ…前世の彼女と、今世の織斑十秋…二人の間に、実際はそこまでの違いは無かったのではないかと…彼女が語った話に、嘘は無かった…本当に彼女は、時に自分の想いを押し殺し…意中の相手の弟で有る少年にもまた、この優しさを向けていたのではないか…血の繋がった家族とそう変わらないレベルの愛情を注ぐ事が出来ていたのではないかと…

 

「多分、私なら出来無いわねぇ…どうしても、存在が頭から消える事が多そう…」

 

「…ううん…多分、貴女にも出来るよ…刀奈。」

 

「…起きてたの?」

 

「ほとんど耳元でそれだけ独り言連発されたら起き…ごめん、嘘…元々、刀奈が目を覚ます前には多分半分目が覚めてたんだよね…」

 

暗闇の中でも彼女が目を開けたのは微かに見える…

 

「どっちにしろ、起こしたのには変わらないわよね…ごめんなさい…」

 

「気にしないで…ところで、今何時?さすがにもう日付けは変わってると思うけど…確か…今日は向こうに行く船の時間も有るから、早めに戻るんだよね?」

 

確かに私は今日、学園に戻る…そして、週末だけで無く…週の初めにもあの学園の有る島に戻る定期便…その中でも一番早い便で向こうに戻るつもり…何せ、十秋ちゃんが心配過ぎて疎かにしてた仕事が溜まってるからね…早めに戻って、出来るだけ片付けておかないと本当に大変な事になる…

 

「ちょっと待って…ふぅ…取り敢えず電気点けないと見えないわね…起きるわ。」

 

その言葉に合わせて十秋ちゃんが離れて行くのを名残惜しくも思いつつ…私は、布団から出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に寝なくて大丈夫?」

 

「…これ以上寝たらまともな時間に起きる自信無いからね…どうせ目も冴えて来てるし、今日は時間までこのまま起きてるわ…十秋ちゃんは寝てても良いわよ?」

 

「…仮にも奴隷が主人を放っておいて寝ないよ。」

 

現在時刻深夜二時過ぎ…さすがに電車で向こうに行くにしても始発はまだ…かと言ってこのまま寝たら、間違い無く起きれないのは確定ね…にしても、"奴隷"か…

 

「やっぱり言葉の響きが良くないのよね…従者じゃ駄目…?」

 

「駄目。私は貴女に反抗する権利は元より、給与も要らない…私は、あくまでも貴女の物なんだから…格上げして貰うつもりは無い…と言うか、貴女が望んだとは言え…こうしてタメ口使ってるのも本当は気になるんだからね?」

 

「…ハァ…頑固よね…ま、良いか…さてと、私は先にシャワーでも浴びるけど「もちろんお供します、お嬢様…全身隅々まで洗って差し上げますよ」っ…本当に貴女のソレ、割と破壊力有るのよね…そう言う仕事でもしてたの?」

 

「ううん…前世でもそう言うバイトした事無い、と言うか…バイト経験は無しのまま、普通に短大を卒業してOLやってたよ。今世では…って、そっちは刀奈も知ってるでしょ?」

 

「まぁ、ね…」

 

IS学園の場合…ハッキリ言ってバイトしてる余裕は無い…と言うか、勉強出来る出来無い以前にある程度経済力の有る家庭の子しか入れない…そして、日本では原則中学生はバイト禁止。コレは昭和の途中で定められてるからその歴史も長い…もちろん、全く出来無いわけじゃないけどね…

 

「まぁ、強いて言うなら…社会人としての経験が有ると色々と、ね…」

 

「社会に出るって、大変なのねぇ…」

 

「まぁね…ま、そんなに詳しく覚えてるってわけでもないけど…と言うか、刀奈は将来もっと大変でしょ?」

 

「そうね…」

 

これからの事を考えると気が遠くなりそうになる…今ですら大変では有るけど、まだ楽な方では有るだろう…今後学園を卒業したら、恐らく私の存在は表の世界からはほぼ消える事になる…と言うか、そうしないとならないだろう…そう言えば…

 

「ところで、十秋ちゃん?」

 

「何?」

 

「もし…私が学園を卒業して、十秋ちゃんが卒業した場合もこの契約が生きてる場合は「行きますよ、更識家に…許されるならですけど」…本当に良いの?」

 

「ええ。弾除けでも、性処理道具にでも…好きに使ってください…もちろん、貴女以外の人に"そう言う事"の相手をしろって言われても私はやりますよ。」

 

「それは、私が嫌ね…大丈夫。これでも今は当主だし、万が一そう言う未来が来ても…そんな事にはさせないから…まぁ、私たちで共有はしてる形になるかも知れないけど。」

 

何せ、私の他にも"家族"の中に十秋ちゃんを好きな人が二人も居るからねぇ…と言うか、あの二人にはこの件…さすがに報告しないと駄目よね…ハァ…憂鬱だわ。

 

「一応言っておくと…貴女の物になるって決めた時から、そう言う覚悟はもうしてるからね?…私の事は気にしないで、好きに扱って?」

 

「…ふぅ…」

 

とは言え、そう言う未来はさすがに来て欲しくないのも本音…もちろん、彼女が最期まで私と共に居てくれたら…それが嬉しくないわけでも無いんだけど…少なくとも、"主人"と"奴隷"って形にはしたくない…それならせめて…彼女には"従者"か"部下"で有って欲しい…もちろん、彼女を壊して…どう考えても自棄になったのだとしか思えない、彼女からの提案に乗ってしまった私が…言って良い事では無いのも分かってるけどね…

 

「それで、シャワーだっけ?お風呂にしない?その方が楽でしょ?」

 

「駄目よ。長時間裸の十秋ちゃんと浴室に居たら、多分襲いたくなるから…」

 

「私は別にそれでも構わないんだけど…」

 

「生憎もうそんなに時間無いからね…今回は諦めるわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、私は結局…湯船に浸かってたりする…

 

「…やっぱり、こうなるわよね…」

 

十秋ちゃんが私に触れて来てるのに、私が我慢出来るわけもなかったのだ…

 

「まぁ、まだ時間は有る筈だから…気にしなくて良いんじゃない?」

 

そう、結局…私はやってしまったのだ…彼女の方は邪な気持ちは無く、私の身体を洗ってくれようとしただけ…でも、私がそれに反応して…結局は、ただそれだけの話…

 

「…ハァ…ねぇ、刀奈?」

 

「何?」

 

「私が一切、そう言う気持ちは無くて…ただ純粋に、貴女の身体を洗ってたと…本当にそう思ってる…?」

 

「っ…十秋ちゃん、さっきも言った通り…時間無いから…その言葉は、"冗談"って事にして貰って良いかしら?」

 

「…刀奈がそれで良いなら、そうするよ。」

 

この子、優しいだけの様で…たまにこう言う小悪魔気質なところが有るのよねぇ…と言うか、精神年齢的には間違い無く歳上なのよね…そう考えたら、私みたいな小娘じゃ…勝てなくて当たり前、か…

 

「…ちなみに、本当はどっち?」

 

「どっちだと思う?刀奈の好きな方に決めて良いよ?」

 

「っ!…うん、やっぱりやめましょう…この話。」

 

こうやって時々意地が悪い所も…彼女の魅力の一つ…それでも、それが心地良く思えたりもするのよね…私、やっぱりMだったりするのかしら…どっちかと言えばSだと思ってたんだけど……いや、コレは多分惚れた弱みってやつかしらね…先に好きになったのが私なんだし…強く出られるわけも無いか…

 

…と言うか、何なら彼女の心の中にはまだ織斑先生が居る筈なのよね…彼女はそれをおくびにも出さないけど…ハァ…こんな事されたら、貴女も同じ気持ちなのかって…勘違いしちゃうじゃない…

 

「…ふぅ…そろそろ出ましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

「ん…どうしたの?」

 

「その、しばらく触れないし…もうちょっと…」

 

「別に好きなだけ良いよ?」

 

取り敢えず私は服を着たものの…彼女に服を着る許可を出す事も無く、こうして彼女の身体をまさぐっている…

 

「時間無いから…」

 

「…まぁ、刀奈がそう言うなら…ん…何かやけに手付きが優しいね…別に、強くしてくれても良いよ?」

 

「……」

 

そこまでやったらまた私のスイッチが入ってしまう…何より…

 

「出来無いわよ…こんなにあちこち赤くなってたり、歯型まで付いてたら…」

 

まぁ、やったのは私なんだけど…こうなる前…昨日の彼女に関しても思った事…と言うか、今もずっとそう思ってる…

 

「ねぇ…どうして、貴女はそんなに優しいの…?私みたいな存在に、優しくなれるの…?」

 

こんなにされても彼女は私に文句の一つも言わない…何回痛みで悲鳴を上げたとしても、彼女は私を責める事は無いのだ…

 

「刀奈が私にその事で怒って欲しいって言うなら、そうしなくも無い…って、言いたい所だけど…やっぱり、私には出来無いかな…」

 

「どうして…?」

 

「だって、何をされたとしても…結局、貴女を嫌いになれそうにないんだもの…怒るなんて、フリでも出来そうも無い…刀奈、何度も言うけど…私は優しくない…どっちかって言うと、私は…甘いんだと思う。」

 

「甘い…?」

 

「貴女が…一応パートナーで有る私に対して度の過ぎる行為をしてるって言うのは…確かに、傍から見たら良くないんだと思う。でも…それでも私は怒れないし、嫌だとも思えないんだよね…だって、私は…私に拒絶されて傷付く貴女の顔を見たくないから…」

 

「それで怒られたからって、私は傷付いたりしないわ…だってそれは、当たり前の事だもの…不当に、理不尽に…暴力を振るわれたら、それは誰だって怒るのが普通。そして、パートナーが怒ってくれるから…その人にとって何が良くて、何が駄目なのか…それが分かる様になるから人は加減を覚えるの…普通の人間関係でも、それは適用されると思わない…?」

 

「まぁ、それは私も分かるけどね…けどね、やっぱり私…貴女に何をされても、怒る気になれないの…」

 

「それは何故?」

 

「だってさ、結局何をされても…貴女なら良いかなって、そう思っちゃうんだよね…だから、どうやっても私は貴女に怒れない…だって、貴女は"家族"だから…"家族"である貴女に何をされても…ま、良いかって…そんな風に思っちゃうから…」

 

「じゃあ、仮に…家族で有る私に殺されたとしても、貴女は本当に良いの…?」

 

「う~ん…確か…前にも聞かれたかな、その質問…でも多分、前と答えはそんなに変わらないかな…貴女なら、良いよ…刀奈。」

 

彼女は、変わらない…自分よりも、他人をいつも優先する…例え、それで自分が死んだとしても…

 

「大丈夫…私は貴女を殺さない…」

 

そして、貴女は私が守る…人を優先して、自分を大事に出来無い貴女を…私が、絶対に守る。

 

だって私は、貴女の"護衛"で…"家族"なんだから。

 

「貴女は道具じゃない…私の大切な人。改めて誓うわね…私に、貴女を…守らせて欲しいの…放っておいたらいつ消えて行くかも分からない、貴女をね…」

 

「でも、それで刀奈が傷付くのは嫌だよ…」

 

「じゃあ、貴女も私を守ってくれる?それなら、どっちも死なずに済むんじゃない?」

 

この誓いは永遠…例え、今してる主従契約が切れたとしてもだ…私は絶対に彼女を守る事を誓う。

 

「分かった…私の出来る範囲で頑張るよ。」

 

「それで良いの…出来無い事は、しなくて良いから…」

 

ハァ…本当に私、厄介な人を好きになっちゃったわね…

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、私はそろそろ行くわね…何か有ったら連絡するから。」

 

「うん、行ってらっしゃい。」

 

そこで私は彼女に近付き、抱き締める…外だけど、誰も近くに居ないのは一応確認済み…まぁ、でも…この程度なら仮に見られていたとしても、私たちの関係は悟られる事もないわよね…

 

「…行って来ます…今週はもう来れないかも知れないけど、ちゃんとご飯食べて…良く眠って、元気で居てね?」

 

「もう…私、子供じゃないんだよ?」

 

「悪いけど今の貴女のその言葉は信用出来無いの…ま、でも…一応信じるわ。」

 

名残惜しく感じながらも…私は彼女から離れ、改めて彼女の姿を目に焼き付ける様に見詰める…

 

相変わらず目の光は無いし、首輪の異物感は強いけど…それ以外は私の良く知る彼女…絶対に忘れない。これから先、私たちの関係がどうなろうと…立場が変わろうと…私たちはお互いを守り抜く…その誓いは、破らない。

 

「…今の私と貴女の関係はさすがに伏せるけど、貴女の状態は逐一、織斑先生に報告するつもりよ…早く、また一緒に学園に通いたいと、私は思ってる。」

 

「うん…貴女の気持ちに応えられる様に頑張るから…」

 

「…じゃあ、またね。」

 

彼女に背を向け、私は歩き出す…途中で振り向くと私に笑顔で手を振る彼女が居た…音こそここまでは届かないけど…彼女が動くのに合わせ、首輪に付けられた鈴が揺れているのは見える…アレ、やっぱり不味いわよねぇ…色々と。まぁ、今更なんだけど…ま、その辺はおいおい考えましょうか…私は彼女に手を振り返し、再び背を向けた……今度は、振り返らなかった。

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