相変わらずケンカの絶えないウチの両親…あたしを連れてこの国に初めて来た日は、異国の地でも頑張ろうとか言ってたのに…
…既にこっちに来て一年以上経ち、もうすぐ二年近くなるのに…二人はまだ慣れてないみたいで、ずっと鬱憤をお互いにぶつけ合っている…ちなみに、あたしはいい加減中国とこの国の文化の違いにも慣れて来ていた…
日本と言う国は、中国と同じアジア圏でも根本的に色々な事が違う…確かに、あたしも最初はかなり戸惑った…それも、親友二人とその姉、そして…他の友人たちの手も借りて…最初の頃は本当に大変だったけど、何とか…今のあたしが居る…
「…駄目ね、こんなんじゃおちおち宿題も出来無い…」
日本では、長く連れ添った夫婦だからこそケンカは当たり前…それも、お互いの言いたい事を言い合う事でお互いの悪い所を自覚し、直せる…など、必ずしも悪い事でも無いと言う…
「…うん、でもこれは…違うわよね…?」
今は店の片付けをしている時間…店を手伝っていたあたしも、さすがにこの時間にはもう部屋に居るパターンがほとんど…で、片付けは専ら両親がやってるんだけど…
「…まぁ大抵、片付けが進むどころか…寧ろ余計に荒れてるのよね…」
大体、この時間に二人ともお互いに不満が爆発してこうなるのよね…微かに聞こえるけど…お互いに悪い所を言って、そしてそれで治まるならまだしも…今度はお互いの人格面への攻撃…果ては、私が生まれる前の話にまで言い合いの内容が飛んでる…あ~…もう!
「もう限界…!」
私は携帯を手に取り、電話を掛ける…
「…もしもし、十秋?」
「…本当にごめん…!」
「気にしないで。そっちも大変だよね、本当に…」
悪いとは思ったけど、せめて愚痴くらいは聞いて貰おう…そう思って、十秋に連絡した所…
『ウチは大丈夫だし、良ければまたこっちにおいでよ。』
…結局あたしはその言葉に乗る形で、こうして十秋と行動している…
「…と言うか、別に泊まりじゃなくても…」
「んー…鈴のご両親のケンカ、実は私も見た事有るけど…あれだけヒートアップしてると、多分もうお互いの事なんて見えてないし…例えるならアレって…もう反撃して来ないサンドバッグ相手に攻撃してる様なもんだね…お互い相手を罵倒してるつもりで、実際はもう壁に向かって喋ってる様な物だから自分にほぼダメージが無いし、怒りのエネルギーが中々空にならない…ま、残念だけど…あれじゃあ頭が冷えるのに相当時間掛かるよ…姉さんもそこら辺分かってるから、いつも敢えて…ご両親の頭の冷えて来る夜遅い時間に鈴の家に連絡してるんだよ。ま、とにかく…ウチは泊めるのは一向に構わないし、鈴自身の為にもそうした方が良い…ただそれでも、その事を気にしてる鈴からしたら複雑なのも分かるけどね…」
まぁ、酷い時だとウチの両親…たまに、店のシャッターも閉めるの忘れて…そのまま店内でケンカしてるからね…つまり、外から言い合いしてる姿が丸見えな日も有ったりすると言う事…ただ一応アレで、時折近隣住民に謝ったりもしてる…幸い、元が商店街近くで…ある程度騒音に慣れてる人も多いし、一応二人はいい加減他の住民が我慢ならなくなる時間には落ち着くし…近所の方々もある程度こっちの事情も知ってる様で、今の所はギリギリ許されてる状態らしい…近くと言う事で、ウチに食べに来てくれてる人が結構多いのも有るとか…とにかく今は、本当に辛うじて…ウチはあそこに住むのを許されてる状態だ…そろそろ本当に、いい加減にして欲しい…このままだと最悪、あたしまで困る事態になる…とは言え、あたしに出来るのは結局…こうして避難する事だけ…
「ま、最終的に蚊帳の外で有る鈴に八つ当たりの矛先が来ないとも限らないし…落ち着くまではこっちに居た方が良いよ。」
「…ごめん、いつもありがとう…」
「気にしないで、こっちはこれぐらいしか出来無いし…」
これぐらい、ね…ホント、あたしが今までどれだけアンタの存在に助けられて来たと…そろそろ、あたしが本気でアンタに感謝してる事をもっと自覚して欲しい…
「…と言うか、ごめんね?こっちこそ買い物付き合って貰って…」
「良いのよ、寧ろ…買い物の途中にあんたに電話したあたしも悪いんだから…これぐらい、何て事無いわよ…」
「うん、ありがとう…」
「…で、今日の夕飯の献立とか…決めてるわけ?」
「実はまだ…ま、一夏も姉さんもほぼ好き嫌い無いしね…」
「アレルギーとかは有ったっけ?」
「さぁ…ま、今の所は特に無いね。そうだ、鈴は何か食べたい物…有る?このままご飯、ウチで食べるでしょ?リクエスト有れば、言ってくれたらやってみるけど?」
「…と言うか、今日アンタが当番なのよね…買い物行って、料理もするの大変よね…」
「ま、私も一夏も慣れてるしね…ちなみに姉さんも料理出来無い分、手が空いてたら買い物くらいは行ってくれる事も有るよ…っと、話逸れちゃったけど結局…今日は何か食べたい物有る?」
「逸らしちゃったのはあたしだから、気にしなくて良いわよ…にしてもリクエストかぁ…特に無いかしらね…アンタも一夏も、大体作ってくれた物は何でも美味しいからね…」
「…ま、そう言ってくれるのは嬉しいけどね…」
褒められてるのに相変わらず、浮かべるのは例の顔…何でそうコイツは、感謝されたり褒められたりするの…苦手なのかしらね…
「私の場合、少しでも出来る事をいつもただ必死にやってるだけ…料理なんか特にそうでね、正直味付けも微妙かなぁ…と。」
余程料理に思い入れでも有ったのか、今回珍しく理由が返って来たなと思っていたら何か微妙に聞き捨てならない発言が返って来た…ほぅ…微妙、ね…
「つまりそれは…アンタがしてる微妙な味付けを美味しいと思ってるあたしの舌も微妙…って、言いたいわけね?あたし、これでも料理作って…お客さんからお金を貰ってる料理屋の娘なんだけど?」
もちろん、まだあたしの作った物はお客さんに出すのを許して貰ってはいないけど…これでも努力は続けてるつもり…ま、現在のあの環境じゃ…当分そこまでのレベルには行けそうにないけど…
「いや、そんなつもりじゃ…!」
「…ふぅ…そう言えばこの国には、謙遜も過ぎれば嫌味になるって言葉が有るんだってね…あたしも色々と喋りでやらかす方だから人の事は言えないけど、今のは良くないんじゃない?」
「…ごめんなさい…」
「…ま、良いわよ…」
あたしはそこで話を一旦止める…外だし、あんまりやり過ぎるのはさすがにね…と言うか、本来あたしも偉そうに言える立場じゃないし…何なら、あたしは別に十秋を責めたいわけでも無い…
「…あたしはね、十秋…アンタのそう言う所が認められないの…褒められたり、感謝の言葉を貰って素直に受け取れない所がね…」
それでも、コレだけは聞いて欲しかった…あたしも確かに、色々と素直になれない所は有る…ただ、十秋の場合はいつも何かが可笑しい…だって、十秋のコレは照れ隠しとかじゃない…あたしは見てて分かるのだ…十秋は、本気で自分の行いを大した事だと思っていない…
「…ふぅ…私はただ、いつもお節介をしちゃうだけ…大抵は最後まで手は貸せないし、それで一度でも私が手を出した人が助かったとして…私に、そこまで強めの感謝を送るのはまた違うんじゃないかなって…だって私は、その人に最後まで何かをしてあげたわけじゃない…私はただ、私の出来る事で足を止めてる人の背中を押してるだけ…押した方向が果たして本当に正しいのかも分からないし、その所為でその人が後で要らない苦労をするかも知れない…それでも何故か、放っておけないからいつも出来る事をしてる…その上でその人の道が開けたとしても、それはあくまでその人の努力が実っただけ…私はいつも、ただ背中を押してるだけなの…本当に自分のやってる事が正しいのかって、いつも悩みながらね…」
…ま、確かに…そう言う事なら十秋の言ってる事も分からなくもないけど…ただ…
「…成程。じゃあさ、余計にアンタのやってる事って…違うんじゃない?」
「え?」
「アンタは誰かの背中を押してるだけ…確かにアンタにとっては、ただそれだけの事なんだと思う…でも、アンタに押されて感謝を伝えてる方も…分かってる筈よ?自分の努力も大きいってのは…それでも、最初に背中を押してくれたアンタが居なかったら…その努力の、最初の一歩が踏み出せなかった…どっちみち、今の自分はここには居なかった…そう思うから、アンタがただ当たり前の感覚でした事に対して…アンタが思ってる以上の感謝の気持ちで返して来る…確かに、アンタからしたら何でそんなに大袈裟にするのか…分からないかも知れない…だってアンタは、当たり前に自分の出来る事をしただけだから…ただ、押された方からしたらそうじゃなかったから…アンタが最初に背中を押してくれたから、ここまで歩めた…確かに自分の努力の部分は大きい…それでも、アンタが背中を押してくれなかったらその努力しようと言う想いも芽生えなかった…恐らくそう思ってるから、アンタに助けられた人は皆アンタに強く感謝するのよ…そしてそれも、助けられた事で感謝をしたいと思ってる人間にとって…アンタと同じく、当たり前の行動って事。例え、アンタがどう思おうとね…少なくとも、アンタが当たり前と思って人に"ソレ"をやるんだがら…アンタに助けられたと思ってる人が当たり前にアンタにする感謝…それを蔑ろにはするのは違うんじゃないのって、言ってるわけ。…ふぅ…ま、感謝が重めな理由なら…普通赤の他人にそこまで親身になる人間が少ないから、余計に…アンタみたいな奴への感謝の念が強くなりやすい、ってのも有るでしょうね…アンタが当たり前だと思ってる事は、実際は世の中の当たり前じゃないしね…」
人が誰しも、血の繋がりも無い赤の他人にだって普通に優しく出来るなら…少なくとも戦争は起きないし、もっと小規模で言うなら虐めなんて無い…あたしは元より、十秋も本人はそうだと認識してもいないけど虐められてた…十秋みたいな人は、この世界にそんなに居ないのだ…
「…鈴のその考え方は、私も好きかな…私に当てはまるかは、何とも言えないけど…」
肯定も否定もしない…上手くかわしたわね…ハァ…今は何言っても無駄か…
「…ま、そう思えるなら今はそれでも良いわよ。」
それでもいつか、絶対にアンタにあたしの感謝の気持ちをちゃんと受け取って貰うつもりだし…何ならこの返し切れない恩もいつか、返したい…
「…ふぅ…ま、とにかく荷物持ちくらいはするわよ。」
「うん、お願い…」
先ずは…自分の口に入る物くらいはちゃんと自分の手で運ぶって所から始めようかしら…って、コレ…別に恩は返してないわね…ただ自分が作って貰うから運んでるだけ…ま、でも…全ては何れ、ね…と言うか、コイツの事は嫌いじゃないと言うより…寧ろ、好きな部類に入るんだけど…何か、普段は割とポジティブに考えられるあたしでさえ…どうにもコイツと二人で話してると、ネガティブな思考に引っ張られて行く様に思えて来る事が有る…
…と言うか、本人の元の思考は明らかにネガティブ寄りなのに…やってる事は人助けって言うポジティブさ…コイツ、普段疲れないのかしら…あたしはそれに助けられてる方だから否定は出来無いけど、心配にはなるわよね…もちろん、素がネガティブだからって人助けをするの自体は別に可笑しいとはあたしも思わない…ただ、コイツの場合はその度合いが異常なのだ…
明らかに自分の性質と反対の行動をやり続ける…知らない人が見たら、普通に前向きな人間にも見えるレベルで…加えて、コイツはその行動を賞賛される度に、自分で深みに嵌ってる様に見える事すら有る…
人からは行動を賞賛されてるのに、自分自身からその行動を否定されてる……別にあたしは、十秋の心の中全てが分かるとまで言うつもりは無い…ただ、十秋の場合…正直、何となく顔見てるだけで…何を考えてるか分かるパターンが多い…コレに関しては別にあたしだけじゃない、一夏も時々同じ事を言ってる…
…ただ、あたしは何故か…コイツと居るとそれ以上に色々と伝わって来る事が有る…ま、もちろん…今考えてる事に関しては、伝わって来てる事は勘違いだと思いたい…だって、十秋が当たり前にやってるソレが…実は十秋の性質と正反対の行動だったとすれば、そんな矛盾を孕んだまま…果たして正常に生きていられる人間はいるのだろうか…
…まだほんの子供であるあたしにはここまで、それ以上はまだ考えられない…それでも、このまま十秋の状態を放っておいたら…何れ大変な事になるんじゃないか…あたしはそう思えてならないのだ…だから、あたしはいつも考えている…十秋を助けられる方法を…
…もちろん、あたしが考えてる事が単なる大袈裟な思い込みって言うならそれでも良い…それならあたしの一人相撲だった…ただ、それで良い…あたしの親友はこれから先も何事も無く、今のまま生きていられる可能性が高いと言う事だ…ただ、もし…そうじゃなかったら?
「…鈴?どうしたの?」
「!…ごめん、ちょっと考え事をね…あ、そうだ…今日の夕飯のおかず…餃子が良いんじゃない?」
「あー…良いね、んー…スーパーに冷凍のは有るだろうけど、せっかくだし…中身の餡から作ってみよっか…ま、皮はさすがに市販のだけど…」
「良いわね、あたしも手伝うわ。」
…ふぅ…ま、色々悩ましいけど…結局は、単純で良いのかも…誰彼問わず無闇に人助けをするなと言っても、どうせコイツはやるのだ…それはもうあたしにも分かり切っている…だったら、あたしの役目は…
「…十秋、どうせなら基本の具材以外にも色々入れてみない?」
「…良いね、何を入れようか?」
あたしの役目は、放っておくとすぐにネガティブ思考に陥りやすいこの親友を…自分の本来の性質を忘れるくらい、楽しませる事。もちろん…あたしの家庭の状況も有るし…ずっとそんな事は出来無い…でも、こうして十秋の傍に居られる今の様な時間くらいは…あたしが手を尽くすべきだろう…
「ほら、十秋…そろそろ起きてよ…もう昼だから…」
身体を揺さぶられる感覚で目を覚ます…少し寝惚けつつも、さっき寝るまでの事を思い出す…どうも鈴が起きるのを待つつもりが、結局寝てしまった様だ…
「…やっと起きたわね、おはよう…十秋。」
「んー…おはよう、鈴…?」
「ん?何よ、その変な反応?あたしの顔に何か付いてる?」
「…いや、大丈夫…何でもないよ。」
「何よ、一体…変な奴ね。」
何か、鈴が私に向ける目が昨日より優しい様に感じる…気の所為、かな?
洗面所で私が先に顔を洗って歯を磨き…次に鈴と交代する…
「……」
「…何よ、早く着替えて来なさいよ。」
「…分かった、行って来る。」
まぁ、一応鈴に怒られそうな事を思い浮かべてたのでさっさと洗面所から退散して部屋に向かう…ま、要は…小学生の頃と全然鈴の見た目が変わってないなぁ…と、鈴の姿を鏡越しに見ながら改めて考えていたのともう一つ…
…何で、鈴は胸を隠さないのかな…
多分、さっき私が吸いたいと言った時にパジャマのボタン外してそのまま…つまり、私の視界にはさっきまで何度も鈴の胸が視界に入ってたりする…
まぁ、幸い…私自身鈴に欲情する様子は無いけど…ちょっと目のやり場に困る…そして…
…一回甘えちゃった所為か、何か…鈴にまたソレを求めそうになってる自分が居るんだよね…
自然と鈴の胸に視線が吸い寄せられてたけど…どう考えても性欲のソレじゃない…とは言え、あくまでも親友で居てくれる相手に…何度もソレを求めるのもどうかなと思って抑えようとしてるんだけど…
…ハァ…私、こんな甘えん坊じゃなかった筈なんだけど…
…と言うか、前世から考えても誰かにこんな風に甘えたいとか思った記憶は多分無い…それも何故、鈴なのか…確かに、鈴なら…少しなら"ソレ"を許してくれるかも…何て、思わなくもない…口調が少し荒くなりがちだけど、鈴は結構優しいからね…その小さな身体に有り余る優しさを備えてたりする…
…とか考えつつ、私は部屋のタンスから着替えを出す…ちなみに、学園からこっちに戻る時にカバンに入れてた服はもう全部こっちに入ってたりする…結局刀奈がやってくれたからね…取り敢えず服を着ようとして…
「待った。」
「え?」
いつの間にか部屋に居た鈴が私の手を掴んでいた…ちなみに、鈴は既に着替えを終えてパジャマから私服姿になってたりする…胸が見えなくなって…ホッとした様な、残念な様な…そんな不思議な気持ちを抱いていたり…とか考えてたら鈴が部屋のタンスの引き出しを開けて、そこから何かを取り出した…
「…ほら、パンツ…上はまだ良いにしても、また履かない気?」
「あ…」
忘れてた…
「取り敢えず居間で待ってようかと思ったけど、途中で思い出してね…もしかしてと思って、中入ったらこれだもの…」
「ごめん…」
「別に謝らなくても良いわよ……それと、一つ聞きたいんだけど…」
「何?」
「…さっきはあたしも、うっかりしまうのを忘れてたから、まぁ…視線が行くのは分かる…でも、もう着替えたのに何で…まだあたしの胸に、アンタの視線が来てるのかしら?」
「…ごめん…」
「…ハァ…ま、あたしが見てた頃のアンタの状態考えたら…アンタが人並みに甘えるって事が出来るようになって嬉しいとも思うけどね…ま、その相手があたしってのはちょっと複雑でも有るんだけど…アンタが今求めてる事も結構アレだし…」
「…と言うか、性欲じゃないって分かるの?」
「…どっちなのかくらい、アンタを見てたら分かるわよ…目付きの質がどっちかと言うと、母親を求めるソレだし…」
「…ごめん、大丈夫…えっと、さっきも迷惑だっただろう「…ハァ…良いわよ、またやってあげる」え!?良いの!?」
「…アンタがそんな反応するなんてね…確かにいつか、アンタに恩が返せたらとか思ってたけど…まさかこんな事を何度も求められるのは本当に複雑だわ…」
「…本当に良いの…?」
「さっき良いって言ってるし…もういっそ、今週一杯付き合うわよ…アンタが望むなら、だけど。」
「えっと…それはもう、是非…」
「…正直、アンタや一夏に食べさせたくて…特技としてずっと料理の練習してたつもりなんだけど…まさか、どっちかって言うと一番恩を返したいと思ってたアンタから求められるのが"コレ"って言うのが本当に複雑ね…」
「何かごめん…鈴の料理自体は楽しみでは有るんだけど、今は…」
「…ハァ…と言うか、アンタは当初満たされたから食欲が落ちたって思ってたみたいだけど…素人考えでは有るけど…あたしの見た感じ、多分…心の方に異常が出たから連動してそっちも落ちたって方が正しいでしょうね…胃の状態も可笑しくなってそうだし、あまり油を多用する中華料理はちょっとね…あたしとしても、残念だけど…」
「ごめん…でも、元気になったら食べたい…」
「…嬉しい事言ってくれるわね、それ自体はOKよ…ま、でも…先ずは…かしらね…アンタが元気になるのに役に立つなら、あたしも嫌じゃないと言うか…ま、あたしも結局アンタなら良いんだけどさ」
「…その、良いって…」
「別に恋愛感情じゃないし、性欲でも無いわよ…単に甘えたいって話なら良いわよ…って、事。」
「…ありがとう、でも…どうして…?どうして鈴は、そこまでしてくれるの?」
「…どうして、ね…だったら…アンタは、何で例の刀奈って奴にそこまでしてやろうと思ったわけ?さすがに、性欲と嬉しかった事だけが理由じゃないでしょ?」
「それは…"家族"だから…」
「速攻で答えが出たわね…」
「え?」
「…あたしも、アンタの事を親友で…且つ、家族みたいな存在だと思ってる…だから、その家族から多少強めに甘えられても良いかなって…もちろん、元気ならあまり重く迫って来たらビンタで返すけど…でも、今のアンタなら…一肌脱ごうかなってそれくらいは思うわ…それくらい、アンタには感謝もしてるし…何より、家族だと思ってるからね…」
「でも…こんな事させて、私にそんな資格は「ちょっと…何言ってるわけ?」…え?」
「あたしが、アンタをそう呼びたいってそう思ったのよ?そこに資格とか…無いでしょ?それとも、アンタは嫌なわけ?あたしと家族なのは…」
「そっ、そんなんじゃ…」
「…あ、重くは捉えなくて良いわよ?あくまで、精神的なって話で…別に実際にそうなりたいとかじゃないし…それでも、嫌かしら…?」
「嫌なわけ、ない…私も正直、鈴の事はそんな存在だと思ってた…」
まぁ、付き合いもかなり長いし…向こうの家庭の事情とは言え…何度もウチに泊まりに来てたしね…加えて、あの頃は姉さんも深夜にバイト行って朝帰りのパターンが多かったから…普段私と一緒に寝るのを強行する姉さんが不在となり、そのまま鈴と同じ布団で寝るパターンが多かった…まぁ、まだ小学生の時の話だしね…
「なら、良いじゃない…ただ、その前に一つ良い?」
「えっと…何?」
「お腹減ったから、先にご飯にしない?もう、昼よ。」
まぁ、確かに…私はあんまりお腹減ってないけど…鈴は…
「ねぇ?自分はお腹減ってないとか思ってない?ちゃんと、アンタも食うのよ…量が少なくても良いから。」
「…うん、分かったよ…」
…ちなみに結局、冷蔵庫に入ってるおかず類はほとんど食べられず…改めて私は、心が満たされて満足してるんじゃなくて…ただ身体の方が可笑しくなっただけなんだと実感してた…実際、昨夜食べた切りで、朝ご飯も食べず…大体、昼とは言ってたけど…今は昼過ぎ…さすがに、胃がちゃんと働いてるならお腹減ってないと少し不自然…
「…いや、今のアンタは減ってても分からないだけだと思うわよ?精神的ダメージの方が大きいのは間違いないんだろうし…」
そして二人で冷蔵庫のおかずの方に手を付けて…ちなみにその後、使った食器は結局、鈴が洗って片付けてたりする…何か私、昨日から何もしてない…
「良いから今は休んでなさい…あ、そうそう…アンタ、携帯確認した?」
「…見てないけど、何で?」
「ほら、例の…刀奈って奴からまた要望来てるんじゃない?」
刀奈から…来てるかも …取り敢えず、早く返信した方が…
「待ちなさい…ハァ…あたしが確認するわ…と言うか、契約切りなさいって言ったばかりなのに…アンタ、また送ろうとしたわね?出し惜しみしろとまで言ったでしょうに…」
「でも、刀奈は「少なくとも昨日送ってるし、それで十分でしょ…ま、もちろん今日は連絡してない可能性も有るけど…とにかく、携帯はあたしが取りに行くわ」…うん、分かった…」
結局押し切られた…まぁ、鈴は言い出したら聞かないし…まぁ、確かに…私のやった事が良くない事なのも分かってはいるんだけど…
「ほら…ちなみに、今日は一夏と後…例のセシリアって奴からメール来てるわ…学園に来てから知り合って、親友になった奴だっけ?」
「そう、結局私がこうなるまでにほとんど話出来無かったけど…」
「…ま、そいつ代表候補生なんでしょ?なら、さすがに簡単には学園やめたりもしないでしょうし…後は、アンタが早く元気になれば良いだけよ…そしたら、また会えるでしょ?」
「うん…」
「そう不安そうにしないの…で、メールなのは二人共気使ってくれたんだと思うけど…どうする?すぐ返信する?…あまり余裕無さそうなら、あたしが後で一夏に電話して…アンタの状況伝えたりも出来るけど?」
「…返信は、するよ…でも今は…」
「ホント、余裕無い感じね…で、吸うの?」
「うん…吸いたい…」
「…ハァ…ま、良いけど…そうね、じゃあソファの上に寝て…アンタが上だとあたしが辛いから、あたしの方がアンタの上に乗るから…」
そして鈴が着ていた服を脱ぎ、私の身体の上に鈴が乗っかり…胸に付いた突起が口元に来た瞬間…勢い良く吸い付いて……二回目だけど、感想は…未だ感動無くならずと言おうか…何かもう、コレが何でこんなに落ち着くのかって不思議に思う感じ…でも正直、癖になりそう…
「んっ…飽きないわねぇ…そんなにコレが良いわけ…?」
「…正直、鈴には悪いけど…ずっとお願いしたいかな…」
「…ハァ…だから、あたしじゃなくて…早く千冬さんにお願いしなさいよ…まぁ、平日のこの時間に下手に出歩いて補導されても困るし…しばらくは暇みたいなもんだから良いけど…んんっ…」
何かこう、言語化出来無い心の内のモヤモヤが溶けて行ってる気はする…確かに刀奈に限らず、コレにハマる人が多いのも分かる…正直、余程捻くれた人でも無い限り…大抵の人はこの行為に幸福感を感じるんじゃないかな…コレを今週一杯させて貰える…私、結構早めに回復する可能性も有るかも…ハァ…最、高…そうやって鈴の胸を吸ってる内に、私の意識は再び落ちて行った…