「さて、先ずはこうして来て下さってありがとうございます…」
今回、私への取材を申し込んで来た女性からの挨拶でやり取りが始まった…
そう、"女性"なのである…私も電話して聞こえて来た高めの声に驚いたのだが…
当時の企画は私とあいつの了承さえ取れればそのまま実現出来るところまで漕ぎ着けていたそうなので…まさか女尊男卑の今ならまだしも…当時にそこまでやり手だったと言う事実に改めて私は驚いたのだ……いや、失礼な話だとは思うが…何より見た目も下手したら私より歳下では無いのかと思う程若く見える…さすがにそんな事は無いと思うが…
「緊張してらっしゃいますか?」
「え…あ、はぁ…少々…」
考え事をしていただけなのだが、彼女にはそう見えたらしい…いや、全く緊張していないと言えば嘘にはなるのだが…
「先にも言いましたが、気楽にして良いですよ。」
そう言われてもな…
「それは分かりましたが…何故、今この部屋に居るのが私だけなのでしょう…私は確かに彼女とは親友で有ったと自負はしてますが…フェンシング選手としてのあいつの事はあまり知らないのですが…」
あいつはその頃の事をほとんど話してくれなかったからな…
「そうだったんですね…いえ、実を言うと…彼女の現役時代の成績などは資料で大体残っているんです…なのでもし、何か当時の事を聞いていれば…と、思った程度なので…」
「では、何故私に?」
この時点でISを駆るあいつの姿について聞きたい訳じゃないのは既に明白…この場に呼ぶのはあいつの兄貴だけでも良かった筈だ。
「織斑千冬さん…貴女は■■さんとは公私共に仲が良かったんですよね?」
「公、と言うより私の部分が大半ですが…」
「……実は彼女自身はメディアへの露出は基本、徹底的に拒否しており、その素顔については…昔から謎の部分が多いんです…」
「そうなんですか?」
あいつは私以外に、少なくともフランスにはそれなりに友人だっていた筈だが…そっちには聞かなかったのだろうか…
「なので貴女にはプライベートでの彼女の姿をお聞きしたいと…あ、もちろん答えられる範囲で構いません。」
「成程…」
プライベートか……何処まで言っていいのだろうな…少なくとも私に恋愛感情を持っていた、と言うのは言うべきでは無いんだろうが…
「…では、始めて宜しいでしょうか?」
「……どうぞ。」
まぁ何とかなるだろう……と言うか、モンド・グロッソ優勝のインタビューの時より気を使わないとならないのは一体どう言う事なんだか…ハァ…あいつが死んで以来、あいつに関して色々悩む事が増えた気がするよ……いや、当時苦労をかけていたのは…結局、私の方なのかも知れないがな…