親友の妹に転生しました   作:三和

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「别再这样了!(いい加減にしろ!)」

「…我愿意说多少遍都行。(何度でも言います。)就因为是孩子就不懂吗?在武断地下结论之前,请先好好听听他的话!(子供だから分からない?そう決めつける前にちゃんと話を聞いてあげてください!)」

あたしはそれを、ドアの向こうで聞いていた…





その日、あたしは学校を休んだ…と言っても、別に体調が悪かったわけじゃない…ズル休みだ。

昨夜は織斑家には行かず、両親…と言うか、父親と大ゲンカ…あたしも虫の居所が悪かったというか、途中から引っ込みが付かなくなって…加えて、一夏に十秋…二人の事を悪く言われた事が、あたしにとって決定打になった…父さんも余裕が無く…本気で言ったわけじゃないのも分かってる…

…うん、だけど…親友を悪し様に言われてあたしも黙っていられなかった…あたしも本気で言い返して…気付いたら、頬に痛みが走っていた…叩かれた…そう感じた瞬間、あたしは部屋に駆け込んで…結局朝に…あの後は静かになったから、二人共頭は冷えたんだと思う…母さんから話をしましょうって言われたのがもう数時間前…無視した。

昼ご飯を告げる母親の声も無視して…そして、さっきから鳴っている携帯の音もあたしは無視している……音が止まった…いい加減鬱陶しくなって来たので、あたしは携帯の電源を落とす…初めからこうすれば良かった…そう思いながら、部屋の床であたしは所謂体育座りの体勢をして膝の上に顔を埋める…そうこうしてる内にいつの間にか寝てしまったらしく…気が付いたら放課後。一夏や十秋…それに、弾や数馬…心配は、されてるだろうなと思う…でも、今はどうでも良い…てか、いくらあいつらでも結局は今のあたしの状況をどうにか出来るわけじゃ…?

「…何かしら?」

部屋の外から言い争う声が聞こえる…この声は、十秋?

「请从那里过去!(そこを通してください!)」

「你算老几…!(お前に何が…!)」

「太吵了!(うるさい!)」

…部屋に向かって足音が響いて来る…その間も十秋は父さんとずっと言い争っている…少ししてノックの音が聞こえた…しばらく迷ったけど、あたしは無視した…再びノック…更に、今度は声も聞こえた。

『鈴、居るんでしょ?出て来て…』

その声はさっきまで、父さんと言い争いしてたとは思えない程優しい声…あたしは、それも無視した。

ごめん、十秋…

『连我这个家人都做不到,你又怎么可能做到呢。(家族の俺に出来無いんだから、お前に出来るわけがない。)快回去吧。(もう帰れ。)』

その言葉の後に、外から溜め息の様なものが聞こえた…ま、そりゃ…呆れるわよね…そう思った直後、すぐにさっきよりも強いノック…ドンドン!とドアを強く叩かれる音は、親は元より…今まであたしを助けてくれていた親友にすら向き合えない今のあたしを責め立てるかの様…耳を塞ごうとしたあたしの耳に十秋の声が聞こえて来る…

『鈴!そうやって黙ってても貴女が何をして欲しいのか全然分からない!そこから出て来て、ちゃんと話して!』

『喂!别这样!(おい!やめろ!)』

『别打扰我!(邪魔しないで!)…鈴、聞こえてるんでしょ!?どうしても嫌なら無理に顔を出さなくても良い!でも、返事だけでもして!お願い!』

あたしは…

『鈴!』

「…そこで待ってて…」

あたしは立ち上がり、部屋のドアを開けた…

外には昨夜のあたしと同じ目に遭ったのか、頬が赤くなっていて…それでもあたしに笑顔を向けてる十秋、それと…彼女の後ろにはあたしの父さんと母さん、更に後ろに一夏…弾や数馬まで居る…ハァ…結局いつもの面子が全員居るじゃない…

「…取り敢えず、十秋だけ中に入って…他は待ってて…」

「喂,我啊(おい、俺は)「是女儿决定的(決めたのは娘さんです)」我可是你爸爸啊!(俺は父親だぞ!)」

「那个打断您女儿说话并动手打人的人,到底在说什么?(娘さんの話を遮って殴った人が何を言っているんですか?)」

十秋がそう言うと父さんが黙り、俯いた…容赦無いなと思いつつ…少し気持ちがスッとしてもいた…

「…入っても良いんだよね?」

「うん…」

「そっか、じゃあ…一夏、弾君に数馬君も…皆ちょっと待っててくれる?」

十秋が後ろを向いてそう言うと三人が頷いたのが見えた…十秋がまたこっちを向く…取り敢えずあたしは十秋の手を引いて、部屋の中に一緒に入った…

「鈴。」

「何?」

「この部屋、鍵付いてるんだよね?掛けちゃって。」

「良いのかな…」

「今ご両親に踏み込んで来られても、まともに話が出来無いでしょ?」

「…うん、それじゃ…」

「…ふぅ…さてと…こんにちは、鈴…そう言えば、私がこの部屋に入るのは初めてだったかな?」

「そうね…いつもはあたしの方がアンタの家に来てるしね…てか、アンタ…痛くないの…?」

「え?…あ、コレ?大した事な「少なくともあたしは痛かったし…何せ、数時間経過した今でもまだ少し痛いくらいなんだから…アンタも痛くないわけないでしょ?」そうでもないかな…」

「十秋…」

「本当に大丈夫…信じてた実の父親に、ろくに話も聞いて貰えないまま…喋ってる途中でぶたれるって言う状況を体験してる鈴の方が、心も含めて痛いと思うからね…」

十秋は、今あたしの抱えてるもう一つの痛みをしっかり言い当てた…

「…ふぅ…確かに痛いけどさ、それでも…アンタは痛くないって話にはならないでしょ?」

「本当に私の事は気にしなくて大丈夫…私は今日ただ、風邪を引いてる事になってる鈴の様子を見に来ただけだったの…けど、実際家に来てみたら鈴のご両親の様子が可笑しくてね…お店を開けてない事自体は一応分からなくもない…でも、何か二人が…というか、お父さんの方があからさまに様子が変なのに気付いてね…あの中で一番中国語の話せる私が問い質す事にしたの…それで、全部聞いた…いやぁ…つい、相手が大人…鈴の父親って事も忘れて怒鳴っちゃってさ…ま、アレで溺愛もしている娘を叩いたんだから自分も痛いに決まってるのに…そこ忘れて偉そうに言ったらこう言う目にも遭うよねぇ…」

…コイツは何を言ってるのか…要するに、ウチの父親を感情のままに怒鳴ってしまった…良く考えればウチの父親も今回してしまった事が辛かったのは分かった筈なのに…だからコレは…そこを忘れて偉そうに説教なんてしてしまった自業自得、的な事を言いたいんだとは一応伝わった…まぁ、それ自体は客観的に見れば確かにそうなのかも知れない…ただ、あたしが聞いてるのはそう言う事じゃない…

「…ねぇ?今、あたしはそんな事を聞いてるんじゃないの…痛いでしょ、って…アンタに聞いてるの…」

「痛くない「そんなに赤くなってて、痛くないわけないでしょ?」…本当に痛くないよ、鈴…鈴の辛さを考えたら、そんなの全然…感じない。」

コイツは、こんな時でも自分よりも他人…今回はあたしを優先するのか…いつもなら怒ってるだろうけど、今回はもう…あたしの方も色々精神的にキテるのか、そんなの通り越して呆れの方が強かった…

「ホント、アンタ変わんないわね…そう言う所…ふぅ…ま、ここに居ても冷やす事も出来無いわね…」

「…うん、そう思ってくれた所で一つ提案なんだけど…取り敢えず、今回もウチに泊まらない?」

「…ハァ…そりゃ、ここに居ても気が滅入るだけだから良いけど…それだけだと今回の場合、何の解決にもなってないし…」

「ま、今回は話を聞いただけの私でも…いよいよ行き着く所まで行ってるなって感じだしね…それでも、ここに籠ってるよりは良いんじゃないかな…私は…今、鈴とお父さんに必要なのはとにかく時間だと思ってる…一時的に距離を置いて、一回頭冷やすのが良いと私は思う。」

「アンタの言い方だと、単に今日泊まれって言ってるだけには聞こえないんだけど…何が言いたいの?」

「…家出しよ、鈴♪」

その時の十秋は、今までに無いくらい楽しそうにあたしは見えた…








「このバカ者!」

「痛っ!」

「あ!ちょっと姉さん!?叩くなら私を叩いてよ!鈴を誘ったのは私で、一夏は何もしてない!悪いのは私なんだから!」

「…ハァ…私もそんな事は分かってる…だが、一夏はお前を止められる立場に有ったのにそうしなかった…もちろん、凰の状態がそれだけヤバかったのはもう聞いてはいる…だが、だからこそ…安易にこんな事をすべきじゃない…で、有る以上…この場では傍観した一夏が責められるのは当然だ…この場合、一夏を巻き込む選択をしたのは十秋…お前だ…ただ、それでも凰を助けたいと考えたお前の覚悟そのものが間違ってるとは私も思えないんでな…だから、お前は殴らん。」

「違うでしょ!?どっちみちやらかしたのは私なんだから…先ず責められるべきは私でしょ!?」

「おい、十秋姉…やめとけって…」

「ちょ…離して一夏…!」

「…ハァ…結構向こうでの一件が尾を引いてるな…頭冷やさないといけないのは十秋姉もだろ…千冬姉、取り敢えず十秋姉の頬も冷やした方が良いと思うし…話は一旦これで終わりで良いか?」

「ああ、行って良い…」

「分かった…で、鈴「あたしは…千冬さんとちょっと話したいから残るわ」…そうか?じゃあ、後から来いよ?」

「離して一夏!まだ話は…!」

「はいはい、さっさと向こう行こうな。」

十秋が一夏に引き摺られて行くのを、結局あたしは部屋から二人が出て行くまで見詰めていた…

「…で、何の用だ?凰?」

「その、結局一夏だけ殴った本当の理由は何ですか?そりゃ一夏が責められる理由は分かりますけど…どっちみち十秋も責められないといけない話なのは変わらないですよね?」

助けて貰って何だが、あたしはずっとそれが気になっていたり…

「…ハァ…お前はやっぱり鋭いな…逆に苦労するぞ、色々。」

「その…もう色々と身に染みてます…」

「…ふぅ…ま、結局な…今のアイツはアレで…結構頭に血が上ってるからな…私が怒ってもちゃんと伝わらない可能性が高い…と言うかそもそも、自分の何が悪いか…最初から分かってる様な奴にグダグダ説教するのは私は嫌いだ…時間の無駄だしな。説教と言うのは本来、自分のやらかした事の何が悪いのか分からない奴に対して教える為にやるものでしか無い…何が悪いのかをちゃんと理解してるのに、説教なんてしても仕方無いだろう…学校の教師で有れば敢えて、そう言う生徒相手でも"見せしめ"的にやる場合は有るだろうがな…そこまで賢い奴ならどうせ教師の思惑も分かってるだろうからな…その教師がバカでも無い限り後でそいつにフォローくらい入れるだろうが、教師としてはそう言う奴相手なら役割を背負わせやすくて楽…と言う話にはなるか…」

話がズレてる様で、何となく…さっきのやり取りの本質が見えて来てたりした…

「さっきの場合…どうせ頭に血の上ってる十秋には何言っても伝わらない…でも、諸々分かってる一夏を見せしめとして怒る事で十秋の心に響く様にしたと言う話ですか?」

「本当に色々賢くてやりにくいなお前…ま、それ自体は嫌いなタイプでも無いが。」

「…あたしも、千冬さんの事は結構好きですよ。」

「…ただ、私は生意気な奴はあまり好かん…今はまだ、人生の経験も色々と足りないんだから…あまり偉そうに物を言うのは控える事だ…大人は単に偉そうなだけに見える時は確かに有るかも知れないが、それでも無闇矢鱈に怒らせれば…大抵子供相手でも"大人の対応"って奴で子供にも的確にダメージを与えて来るものだ…要は文句が有るにしても、相手が大人なら尚更言い方は考えろって事だ…お前の場合頭の回転が早い分、つい…要らん事まで言って人を怒らせてるパターン結構有るんじゃないか?ま、これに関しては相手が子供、大人…関係無くの話だが。」

「それは…まぁ、色々と…」

「だろう?ただ、それで都合が悪くなったからって殴るのはやり過ぎだとは思うがな…どう聞いても、今回の親父さんの対応はソレだ…だから、最早自分の娘とすらまともに話し合いも出来無いくらい頭に血が上ってるから…一旦、距離を置かせることにした、と言う十秋のやり方自体は正しいと私は思っている…ま、この場合…色々と裏で動かないといけないのは私になるって事に関して、忘れてる節が有るのは…少し、頂けないがな…」

「その、ごめんなさい…」

「…ふぅ…ま、その辺はお前は気にするな…どっちみち、私も普段はバイトが有るし…基本はさっき言った通り、見えない所で動くのが多くなるだろうな…少なくとも、お前の世話自体はあまりしてやれん…何て、お前はもう分かってるか…いつもの事だしな…」

「…まぁ、それは…はい。」

「!…さて、私はそろそろバイトに行く準備をしないとならん…ま、とにかく…お前は気にするな…着替えやら、必要な物はちゃんと持って来たんだろう?取り敢えず色々ケリが着くまでは、ここに居ると良い…」

「…ありがとうございます、千冬さん…」

「…礼なら十秋に言え…お前の家で散々親父さんとやり合ったのも、何なら…戸惑うお前を急かしてここに連れて来たのもあいつだ…」

「はい、それも…分かってます…」

「まぁ、迷惑だとか…その間の食費とかは本当に気にするな…その辺の諸々は全部、後でお前の親父さんにしっかり請求するからな…」

「…えっと…それは良いですけど、大丈夫ですか?父さん割と頑固だし…何より、日本語があまり「何だ?お前気付いてなかったのか?」え?」

「…ンンッ…我总算还是会说中文的…你忘了?经常给你家打电话的可是我啊?(私は一応、中国語を話せるって事だ…忘れたか?お前の家にいつも電話してるのは私だぞ?)」

思いの外流暢な中国語に戸惑う私に向けて、悪戯っぽく笑った千冬さんは座っていたソファから立ち上がり…私の横を通りながら、ポンポンと肩を叩いて部屋に入って行った…







「あの、十秋?千冬さんって、中国語話せたの?」

「…え?今更?だって姉さん、良く鈴の家に連絡してるの知ってるでしょ?」

「いや、見た事は無かったし…」

「…あー…ま、その辺…アレで結構スマートだからね…姉さんは…」

「ちなみに…千冬さんに習ったから、十秋も中国語話せるわけ?」

「あー…実は私は独学…と言うか、鈴を初めて夜ここに連れて来た日…つい、引っ張って来ちゃったけど色々どうしようと思いつつ…取り敢えず鈴の家に電話掛けたら、途中で横から姉さんに携帯取り上げられてね…取り返そうとしてたら、姉さんの口から私より遥かに発音が綺麗な中国語が飛び出したからね…私もあの時は驚いたよ…」

割とあの時は衝撃が大き過ぎて、そんな事を十秋から聞いたのも結構後の事…まぁ、正直…実は千冬さんって中国人?って思っちゃうくらい、あの時の事は現実感が無くて…その後しばらく逆に思い出せなかったくらいだからね……ま、これは後で聞いた話で完全な余談。

そして、今回の騒動の顛末としてあたしから言えるのは…結局あたしの家出は実質一ヶ月に渡ったって事と…その時点でもうあたしは小六…つまり、この流れから例の中学では家を抜け出さないとならない程…大きなケンカは無くなったと言う話に繋がる事になるんだけど…実はあの頃何が起きていたのか、あたしも具体的には何も知らない…

気が付いたら、一ヶ月の間は時折チラチラと顔出すだけになっていた本来の自分の家に帰る事になっていて…割とビクビクしながら帰ったら父さんが…あの、頑固な父さんが…まさかの泣きながら頭を私に下げて来て…本気で許しを乞うてる姿を見て…ま、あの日は驚き過ぎて…前日と言うか、帰ったのは学校終わってからだし…今朝まで住んでたが正しくなるかな…とにかく、ずっとお世話になってた織斑家に速攻帰還したのは笑い話か…で、結局…たまたま既に帰宅してた十秋の付き添い有りきで父さんと話す事に…とは言え、父さんが丸くなってたと言えば聞こえは良いんだけど…どっちかと言うと頑固親父が急に、デレ分の多過ぎるツンデレみたいになったからさすがに不気味だったのが本音…何とかその変わり様に慣れて来た頃に聞いたら、十秋のプロデュースとの事で…速攻親友を問い質したけど…本人も理由が良く分からないと言ってたから…まぁ、コイツの場合…"誰か"の為に必要だと思ったらいつも労力惜しまないし、"当たり前の事"をやったって感覚しかないんだから覚えてなくても無理も無いか…とも、感じちゃったんだけどさ…

ま、何にしても…コレがあたしにとって十秋に感じてる一番の恩…正直に言えば、あの後すぐにケンカこそ完全には無くならなかったけど…結局仲の良さだけで言えば、ウチの両親は日本に来る前よりも仲が良くなってたと思う…当初母さんも戸惑ってたものの…いつの間にか何も無ければ、四六時中父さんとベッタベタになるくらいには開き直ってた…何より、父さんがこの一件以来加速度的に丸くなっていったから最終的にウチの両親のケンカはゼロに…もう気付いたら、いつもあたしは一体何を見せられてるのかって…毎日の様に思うくらいには、別の意味で色々と家に居づらい状態に…

ちなみにその辺親友二人に話したら…

『あー…ま、仲悪いより良いんじゃない?』

『俺に言われてもな…』

…と言った感じ…色々と家の中が目のやり場に困る感じにはなったけど…それでも、十秋に一夏…千冬さんに弾、数馬…皆には本当に感謝してる…でも、一番あたしを助けてくれたのは…やっぱり十秋、アンタ…

…だから、あたしはアンタを助けたい…あたしの迷惑とかそんなの考えなくて良い…だって、これだけ手を尽くしてアンタはあたしを助けてくれたんだから…あたしもアンタの為に出来る事はしたいって、そう思ってるから…


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「…ハァ…また寝ちゃったか…」

 

十秋はまたあたしの胸を吸いながら寝てしまった…もちろん今は日中、最終的に学園に戻る前提なら…生活サイクルが狂わない様に本来起こすべきでは有るんだろうけど…

 

「…んっ…正直…どうもコイツの場合、所謂うつ病とかの感じがするのよね…」

 

前にたまたま本で見た内容を思い浮かべて行く…そこまで詳しく覚えてるわけではないけど、正直…合致する症状は結構有る様に思う…そして多分、コイツのコレは過眠ってヤツかしら…要は精神の消耗による疲労の所為で普通より寝過ぎるってヤツ…

 

「っ…やっぱり病院に…いや、環境変わったらそれはそれで悪化しそうね…本格的にヤバくなるまでは下手な事は…」

 

…と言うか、あたしにこうやって甘える事で安定している様にも見えるから…取り敢えず今はこのままで良いのかも、と言う気がしないでも無い…ハァ…やっぱり、今週一杯はこうしてやるしかないかしらね…っ…てか…

 

「すー…んっ…すー…んっ…」

 

「んんっ…!…だから…!何でアンタは寝ながらあたしの胸を吸うのよ…!と言うか器用ね、アンタ…!」

 

今寝たばかりなので、十秋の状態を考えれば起こしたくは無い…ただ、この状態が続くのはあたしもさすがに色々と辛いのよね…てか、怒鳴ってこそいないけど割と今大きな声出ちゃった気がするんだけど…聞こえなかったのかしらね…コイツは気にせず寝てるけど…ま、何にしても…

 

「…ハァ…んっ…!…ふぅ…」

 

取り敢えず、コイツには悪いけどまた口から乳首を引っこ抜く…にしても、あたしが吸うのを許可した瞬間、親友のハイライトの消えていた目が一瞬だけど…確かに光ったのを目撃してしまったあたしはどうしたら良いのかしらね…それだけあたしの胸が気に入られてるって事を喜ぶべきなのか、それとも…さっさと意中の相手に頼めば良いのに、情けなくもあたしに逃げてるとコイツを責めるべきなのか…ま、どっちみち後者は選べないのよね…コイツの好きな人で有る千冬さんは、IS学園の教師で…あたしが入る予定にもなってる学園の寮の寮監にもなっており…下手に学園の敷地内から離れられないとの事だから…ま、もちろん…あたしが全部千冬さんに言えば話が解決すると言うなら、あたしはそうするつもり…正直こうなった以上、もう十秋が自分で告白するのを待ってる場合じゃない様にも思うし…

 

一応、万に一つも丸っきり脈ゼロで完全にフラれたってオチはさすがにあたしも無いとは思う…思うけど、万一十秋がフラれた場合も強引に千冬さんを説得して押し切るとかは考えてる…てかそもそも、話を聞く限り十秋は千冬さんが実の姉になってしまった事で何度か諦めようとしたのは確か…ただ、それでも忘れられなかったのはあの千冬さんの過剰なスキンシップの所為…仮に十秋が前世の記憶なんて無い普通の少女だったとしてもアレはどうかとあたしは思うし、どう考えても色々とやり過ぎだ…

 

正直、十秋が本当に普通の少女だったとしても姉が恋愛的…と言うか、性的な意味でも好きになってた可能性はゼロでは無い様に思う……いや、もちろん…普通は気持ち悪がる可能性の方が高い様には思うけど…あたしの知る限り、そう言う話は無くも無いからね…

 

ま、結局の所…千冬さんは色々と責任を取るべきだとあたしは思う…てか、何が悲しくて親友の恋愛模様…それも、普通の恋愛なら未だしも…相手が本人にとって身近な相手どころか、実の姉と言うバリバリ距離の近い人間が好きと言う恋愛模様を割と間近で見届ける羽目になってるのか…十秋を助けたいとは思ってたし、本当に偏見は無いから…あたしもある程度遠い所に居るなら、素直に応援出来るんだけど…

 

「…と言うか、コレで本当に千冬さんも十秋の事が好きだった場合…あたしのやってる事ってどうなのかしらね…」

 

まぁ、状況が状況だし…何より、"十秋の為"である以上…この役を買って出た事に別に後悔とかは無いんだけど…正直、色々複雑では有るし…後…

 

「千冬さんが実は本気だった場合…あたしって本当に大丈夫かしら…」

 

その場合…結構本気で詰められる気がする…まぁ、それでも後悔はしない…いやでも、あたしだって自分の恋愛だってしたいし…他にもまだまだやりたい事だって、いくらでも有るし…まだ死にたくはないなぁ…何より、十秋がちゃんと幸せになる所を見届けるのも楽しみでは有るし…人生の目的の一つでは有るのだ…もちろん、お節介なのは百も承知。それでも、昔からいつも人の事ばかりで自分の事は如何にもどうでも良いって言うスタンスの十秋の事がムカつくのは確か…もちろん、あたしはあたし…十秋は十秋。人生って言うのは人と色々な所で関わり合う事さえ有れど…大事な選択は、相談こそ出来ても実際に選び取るのは自分自身で…本当に大事な所では人はいつも自分一人…そこに誰かの存在なんて関係無いのは分かってるつもり。

 

…でも、それとこの…"あたしが気に食わない"と言うのは別の話。あたしが幸せでも…十秋が不幸なのはあたしは嫌なのだ…だからと言って、それが逆転した所であたしは別に十秋を憎むとかは無い…それならそれで十秋が幸せなのを喜びつつ…自分の幸せをさっさと掴み取るだけの話でしか無い。

 

とにかくあたしは、十秋が幸せになるのを見たいだけだったりする…何が何でも闇の中に居ようとしてた親友が、光の中で戸惑いながらも笑ってる姿が見たい…ただ、それだけ…それが見れるだけであたしの人生の目標の一つがもう叶うのだ…あの変な所で頑固な馬鹿が、ソレを普通に享受出来る様になるまで…それ相応の時間が掛かると、あたしは思ってる…

 

てか、多分…最終的に千冬さんと無事結ばれたとしても…何かアイツ、まだ色々やらかしそうな気がするのよねぇ…ハァ…アイツからはこれから先もずっと目が離せない様な、そんな予感がして仕方無い…

 

「…ハァ…何にしても、先ずは…今は十秋のケアが必要よね…」

 

そう考えながら、あたしは居間に戻って来る…部屋から持って来た毛布を眠る十秋の身体に掛ける為に…

 

「…そう言えば、今朝の時みたいにまた幼児退行しないかしら…その時にあたしが居ないと不味いわよね…ハァ、仕方無いか…んっ…頑張れば何とか入れるかしらね…身長の低さも割とコンプレックスだったんだけど…だからこんな事が出来てると考えれば…う~ん…やっぱり駄目ね、素直に喜べないわ…」

 

そうぶつくさ言いつつも、取り敢えずさっきの様に十秋の胸の上に乗る形に戻る…と言うか、さっきコレやった時も薄々思ってたけど…ソファーベッドでも無い普通のソファなのに、あたしたち二人でそこまで問題無く寝れるのよね…全てはあたしが小柄だからと考えると複雑では有るけど、そのお陰で十秋のケアの一端として役にたってると思えば……いや、やっぱり無理ね…あたしは十秋程、自分の存在をそこまで人助けの道具の様に使えないわ…ハァ…改めて、コイツの異常性が分かるわね…ま、それでも…こんな事ぐらいでコイツの助けになるなら、それも取り敢えずアリかしらね…ま、とにかくこのまま毛布を掛けて、と…寝れるかしら?

 

「…おやすみ、十秋…」

 

…疲れが残っていたのか、結局あたしはそのまま目を閉じてすぐに意識が落ちて行くのが分かった……ハァ…アンタはあたしを温かいとか言ったけど、アンタも十分そうよ…暖房器具としては最高ね…良く、眠れそうだわ…

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