親友の妹に転生しました   作:三和

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「…ふぅ…ただいまぁ…」

「おかえりなさい…夜食はもう出来てますよ。」

放課後、今日の授業の復習があらかた終わった辺りで更識先輩が戻って来た…明日は英語が有るから、予習も必要だな…

「……」

「…あの、何か?」

取り敢えず更識先輩から顔を逸らし、今出してたノートをしまっていると視線を感じた…そちらに目を向ければ更識先輩が突っ立ったまま、私を見詰めている…

「…んー…いや、頑張って仕事終わらせて戻って…私が迎えるのが、貴女と同室になってからの常だったけど…迎えて貰えるのも悪くないなぁって…後、新婚家庭ってこんな感じなのかなぁって…ちょっと、想像しちゃって…」

「…ハァ…そもそも、例え新婚家庭でも毎回水着エプロンで出迎えは無いのでは?…それと、私は同性を好きになる事は無いので勘弁してください。」

「…あー…うん、何かごめん…」

…さすがに少し言い過ぎて…は、いないな…とは言え、返って来るのがこれだけ憔悴しきった表情と声では…さすがに私も、調子が狂う…

「取り敢えず、夜食の方は温めればすぐ食べられる様になってるので…お腹が減ってるならさっさと手を付けてしまってください…私はまだやる事が有るので、話は食べ終わってから聞きます。」

「…そう言う話だったわね…分かったわ、夜食の方はありがとう…」

「そんなにお疲れなら、話は明日でも構いませんが?」

鈴がこっちに来るまでには終わらせておきたいが…まぁ、まだ時間は一応有る…

「いえ、良いのよ…良く分からないけど、早めに話を聞きたいんでしょ?」

「…鈴の話を聞くの自体は余談ですし…興味は有りますが、その後に私が貴女にする話の方が本題です…」

結局の所、脱線しまくった末でも有るし時間の無駄では有るのだ…まぁ、十秋には内緒にしてくれと言われた上…途中まで聞いてしまった為に聞かざるを得なくなってるのが正直な所だ…こうして時間も遅くなり、ある程度落ち着いた今となっては…聞かない方が良かった気がしないでも無い…そもそも、どう考えても既に一夏たちの方でケリの着いてる話だ…

「…そう言えば気になってたんだけど、貴女のその…鈴って、呼び方…要するに鈴音ちゃんの愛称よね?どう考えても貴女と鈴音ちゃんは会った事無い筈なんだけど…いつから、そんなに仲良くなったの? 」

「別に隠すつもりは有りません、貴女の話が終われば…話しますよ。」

まぁ、どう考えてもこの人には伝えないとややこしくなるからな…ハァ…一夏や千冬さんには言えないのにな…面倒だ…

「そう?ま、とにかく…夜食の方、頂くわね?」

「どうぞ。食べ終わったら声を掛けてください…さすがにその頃には終わってると思うので。」

「…了解、洗い物もしちゃってから呼ぶわね。」










「…えっと…そうそう、鈴音ちゃんが怒鳴っちゃった所まで話したわね…それでウチの人たちが再協議…最終的にウチの名前は出さずに、鈴音ちゃんに一通りの説明を終えた後…また一夏君が、接触して来たそうよ?」

「……」

一度許されたのに、アウトになってるかも知れないと…その状況ですぐ判断出来る辺り、一夏にも素人感が無いんだよな…

「…一夏君の提案は一つ、きっちりウチと鈴音ちゃんとで契約書を交わす事…ま、半分形だけにはなるけどね…」

「…ハァ…何となく察しました…つまり、その契約を交わす話を…あくまで貴女の家主導で進めた事にして欲しいって言われたんですね?話を出したのがあくまで鈴の友人で有る一夏である以上、本来正式な契約にはなり様が無い…が、最初からそう言う重い契約だったと鈴が思えば…鈴自身に、ある種の精神的拘束が掛かる事になる…つまり、二人の護衛の方でもそこで鈴へある程度信用が生まれる…更にある程度、破格の口止め料でも出れば…良くも悪くも、安易に秘密を喋るバカはそう居ない。」

「…さすがね、要はそう言う事よ。」

「…もっと言えば、その口止め料は二人の護衛を依頼したであろう千冬さんから出てるとでも言えば…鈴も必要以上に、精神的苦痛を受けなくて済む…そして、何故この話を十秋に内緒にしなくてはいけないのか…十秋は一夏がその為に積極的に動いたのを知らない…それを知れば、十秋がまた必要以上に悩む事になる…加えて言えば、十秋は更識家の方に今回の話は伝わってないと思っていますが…実際はちゃんと後で、一夏の口からもきちんとこの一件を報告しており…全て丸く納まった様で、実際はしばらく鈴にもちゃんと監視が付いていた…その事自体も、十秋は何も知らない…まぁ、下手したら…契約の場に十秋がついて行ったりしてるんじゃないですかね…手間は掛かったけど、何とかなったと本人は思っているのでしょう…何なら、監視が付いていたのは鈴も知らない…そしてその口止め料、後に護衛料…もしくは、一夏と十秋の二人に別に支払われてるだろう生活費から補填はされてるものの…契約の時点では、ちゃんと更識家が出していた…つまり、鈴がそのお金を何に使ったのかも…更識家の方で細かく確認出来ていた…と、言う所でしょうか?」

「…そこまで見えているなら、そんなに細かく説明しなくて良かったわね…今朝のアレは、割と無駄な時間だったのかも…」

「…まぁ、話が逸れたのは私の所為でも有りますので…あまりお気になさらず…唯一分からない事が有るとすれば一つ…鈴は結局、いくら貰ったんですか?」

「…ふぅ…聞きたい?」

「まぁ、少し…」

「…額をそのまま言うと、嫌らしい話になって来るし…取り敢えず、ヒントだけ…ある程度高度な専門スキルが必要になる仕事の月収から、保険料などの差し引き無しの満額…大体、それくらいかしらね…」

「……」

…高度な専門スキルが必要な職業と言うと、医者や弁護士なんかを思い浮かべるな…その上で保険料などの差し引き無し…私は今思い浮かべた職業の平均月収は知らないが、普通のサラリーマンよりはさすがに高くなる筈…その上で務めた年数など色々と含まないといけない要素は有るが、これ以上私の知識では難しいか…ただ、恐らく…40~50クラスは行くのでは無いだろうか…本人は確か、元は中華料理屋の娘と言っていたな…月々に小遣いは貰えてたとしても、当時中学生と考えればさすがに最高でも1~2万…下手したらそれ以下で数千円程度……まぁ、どう考えても…貰って喜ぶどころか、頭を抱えるしか無い金額だな…

「…ハァ…ま、友人の為に動いた事自体は間違いでは無かったと私も思いますが…飛んだ臨時収入ですね…と言うか、仮にそのお金が鈴の親に見付かっていたのなら…ヤバかったのでは…」

「…まぁ、ちょっとね…あまり良いやり方だったとは思わないけど…ただまぁ、それだけ…危ない事をしたんだと彼女には知って欲しかったからね…命を奪われるか、生き残れる代わりに怪しい大金を受け取るかって言われたら…皆、後者を取るでしょ? 」

「…ちなみに、そのお金を鈴はどうしたんですか?」

「…庶民的…って言ったら、言い方が悪いかしらね…放課後の買い食いなんかでチマチマ頑張ってたみたいよ…結局、使い終わったとこっちが判断出来たのが受け取ってから約一年…何なら、一週間くらいは手を付けずにそのまま隠してたみたいね…にしても、ここまで時間掛けるのはこっちも予想外だったわね…欲の無い、本当に良い子だったわねあの子…さすが、二人の親友って感じね…」

まぁ、そんな物を受け取る羽目になった鈴には少し…同情する…

「…で、何で突然鈴音ちゃんの話を?ここからが、貴女が本当にしたい話なんでしょ?」

「ええ、それなんですが…実は、鈴の方で諸々の手続きが早く終わったそうで…今は、織斑家に居るんです…十秋と一緒に。」

「え?…ちょっと待って、鈴音ちゃんは…いつから、織斑家に居るの?」

「…既に今日で滞在三日目…つまり、貴女が帰った日に入れ違いになる形で織斑家を訪れたそうで…ちなみに、来週こっちに来る予定だそうですよ。先に言いますが、一週間泊まる許可自体はちゃんと一夏と…一夏経由で、千冬さんからも取れてるらしいです…ま、本来で有れば当然無理でしたが…今は十秋があそこに居ますからね…」

「…あの、でも…一夏君と千冬さんは、今の十秋ちゃんの状態…知らないのよね…?」

「ええ…貴女と十秋に起きた事は私も、二人に話してませんから。それと、初日のあの抜け殻状態についても…鈴から電話を受けた一夏は、話していません…つまり鈴は、十秋が休学してる事以外ほとんど何も知らないまま…織斑家に向かったんです…ただ十秋の事を頼むと一夏に言われただけで。」

「…何か嫌な予感がして来たわ…そもそも、何でその事を私に話すのかってのも問題よね…本来であれば、私にこの話をする必要は無いだろうし…」

そう、何も起こらなかったのなら…鈴が織斑家に行った所で、この人に報告する必要は無い…本来なら、その筈だったのだがな…

「…二人に何が有ったの…?…多分、私に責任が有る話よね…?」

「実はですね…」











「…あー…うん…そう言う事、ね…」

「貴女には、後々の事を考えると…一応話す必要が有るかと思いまして…」

「…と言うか、二人が久しぶりに会って…普通に楽しい時間を過ごしたってならなかったのは…確実に、私の所為よね…」

「…離人症について、どの程度の知識が有りますか?」

「…多分、貴女と鈴音ちゃんと同じくらいには…私も知ってるかしら…でも、まさか…そんなに酷い状態になってたなんて…全然、気が付かなかった…」

「…貴女が付けた噛み跡…化膿しかけてたとの事ですが、それも気付いてなかったんですか?」

「…うん、本当に全く「あいつが送って来た自撮り写真、どうせ消してないですよね?確認してみては?」…分かった、見てみる…」

更識先輩が携帯を持って来て私の前に座る…しばらく操作していたが…やがて…

「…あー…うん…コレは…確かに酷いかも…」

「私にも確認させて貰えますか?」

更識先輩から携帯を借りる……成程、コレか…

「…鏡越しとは言え、アイツも自撮りは初めてだったんでしょうね…全身を写しているので、傷そのものは少し分かりにくいですね…」

これなら分からなくても仕方無いか…傷そのものはそこまで大きくは無いし、拡大すれば漸く分かるか…と言う程度だ…まぁ、画質は荒くなるが…見た感じ、確かに酷い様に思う…

「でも、私なら気付いた筈…と言うか、コレやったの…そもそも私だし…」

「…一応傷は治って来てるとの事ですがね…」

「…怒らないの?」

「もう私が言いたい事は言いました…ただ、鈴はそれなりに怒っていたので…後は鈴が貴女をどう責めるか、と言った所でしょうか…ただ、鈴自身は自分にはもう責める権利は無いと思ってるかも知れませんが。」

「…でも、彼女と私のやった事は似てる様で全然違う…私は十秋ちゃんの優しさにつけ込んで…ただ苦しめただけ…鈴音ちゃんは、あくまで壊れ掛けた十秋ちゃんを助けようとしただけだもの…」

「その辺は私も言いましたが…ま、後は鈴が何と言うか…ですね…何なら、十秋は気にもしてないでしょうが。」

「…それが分かるから、余計に辛いのよね…あの子なら、絶対私を責めないって…ホントに、どうしてあの子…あんなに優しいのかしら…」

「鈴の感じた事を言えば、十秋はそもそも…自分以外の家族や友人が幸せなら良くて、自分の事は心底どうでも良い様で…私はもう半分諦めていましたが、それでも鈴は十秋と話すのを諦めなかった様で…結果"あの"十秋にワガママを言わせる事に成功しています…ま、それだけ十秋も限界でも有ったのでしょうが。」

「私には無理ね…結局、私は縋る事しか出来無かった…彼女は私を甘えさせてくれたけど…彼女は、私に甘えようとはしなかった…鈴音ちゃんはちゃんと十秋ちゃんを救えたのね…」

「鈴に依存してはいますが、一応そうなりますね…私にも出来無かった事です…」

「…ふぅ…まだ、あれから十秋ちゃんと話してもいないけど…私、本当にあの子の事はもう諦めるわ…私には多分、もう無理だもの…と言うか、私以外の家族にも無理ね…そっちも貴女との約束通り、私が説得して…きちんと諦めさせる…それぐらいの責任は、ちゃんと果たすわ…十秋ちゃんにもちゃんと伝える…もちろん、契約も私の方で切るわ…」

「良いんですか?」

「これ以上は、本当に十秋ちゃんを苦しめるだけだもの…そう言えば、この学園に来てから十秋ちゃんを好きになった子が居るんだっけ?そっちはどうするの?」

「…ハァ…ま、私と一夏で話を着けるしかないでしょうね…アイツはもう相当弱くなってしまった様ですし、最低限元気になったとしても…これまでの様には振る舞えないかも知れません、以前程人に気を使えない可能性が高いですね…鈴の方も、後は千冬さんに任せるつもりの様です…ま、貴女がさっき言った奴の事も有りますし…最悪、ここを辞める可能性も有るでしょう…」

「…私には引き止められないし、もうその権利も無いわね…あ、でも…そしたら千冬さんはどうするのかしら…」

「ここを辞める、いや…一夏は残る事を考えると…そう言うわけにも行きませんかね…」

「結局一番良いのは、あの子が戻って来る事よね…千冬さんもその方が気は楽じゃないかしら…ちゃんと、両方の様子を見れるし…」

「…ふぅ…二人の時間を過ごしたいなら、寮監室を使えば良いですかね…」

「…と言うか、こうなると最終的に私と同室に戻るのも色々アレよね…そう言えば、貴女は元々一夏君に告白して保留されて…お互い気不味くならない様に、十秋ちゃんと部屋を交換したんだっけ?」

「ええ…ま、私自身貴女の事は苦手なので…結局あちらに通ってますが今の所、進展は無いですね…と言うか、セシリアとの事がどうなってるのかも分かりませんが…」

「そう言えば、小学校の時は十秋ちゃんがモテ過ぎて大変だったなんて話だけど…中学の時もしばらくアレな雰囲気だったみたいね…とは言え、実は一夏君も人の事は言えないみたいよ…ま、彼は幸い…十秋ちゃん程鈍感じゃなかったみたいだけど…ただ、それなりにトラブルも有ったみたい…何なら、一夏君にフラれた人がそのまま十秋ちゃんに惹かれたパターンも有ったみたいね…ま、十秋ちゃんなら…そう言う子を放っておけなかったでしょうしね…」

「…ハァ…人の事よりも、自分の事を気にして欲しい所ですが…ただまぁ、最終的に千冬さんと結ばれたとしても…それはそれで、不安も有りますが…」

「…十秋ちゃんは、千冬さんと結ばれるかどうかって事以外…自分の人生に、ほぼ興味が無いのよね…」

「…そもそもの話、本人は告白もほぼ…諦めてますしね…」

「どうなるにしても、他にしたい事とか…何か無いのかしらね…」

「…強いて言うなら、自分が大切にしてる多くの存在が幸せかどうかだけは…気になるそうです…」

「…ハァ…その人たちは、と言うか…私と貴女もそうだけど…こっちとしては、先ずは十秋ちゃんに幸せになって欲しいんだけど…」

「…ちなみに鈴は、十秋は幸せの先の大往生しか認めないとの事です…加えて言えば、もし自分を助ける為に十秋が死んだのなら…あの世まで追い掛けて、ぶん殴ると啖呵を切ったそうですよ?」

「…凄いわね、逆に私にはそれは言えないわ…かえって、十秋ちゃんの負担になるって考えちゃうし。」

「ま、私もそうですね…そうでなくても、私は簡単に死ねない理由が有りますから。」

「貴女は、贖罪の為…ずっと生き続けないといけないのよね「貴女も、当主としての役割を投げ出すわけには行かないのでしょう?」…そうね、でも…親友の為なら死ねるって、本心から言える彼女の事はちょっと羨ましい…ま、私はもうその資格も無くなったし…貴女の言う通り立場上、私も簡単に…死ねないんだけど。」

「…ただ、自分の幸せを求める権利はどちらにも有るのでは?」

「…そうね、それはそうかも…私も、ちゃんと相手探さないとね…貴女は、一夏君が好きなのよね…お姉さん、応援してる「一夏に乗り換えたりしませんよね?」…大丈夫。彼の事は、十秋ちゃんを好きになってからちゃんと吹っ切れてるから…それにしても、そんな啖呵を切った鈴音ちゃんも好きな人が居て…ちゃんと自分の幸せを求めようとしてるのよね…どうして、十秋ちゃんはそうしないのかしら…いくら一度死んだからって…せっかく、新しい人生を送るチャンスが巡って来てるのに…何なら、前世の時に好きになった人が…ちゃんと今世の、この世界にも居て…しかも、実の姉で…前世の時より、距離も近い…いくら実の姉だからって、簡単に諦めちゃうのは…さすがに、勿体無いと思う…先ずは千冬さんの気持ちを、確認してからだって遅くない…と言うか、仮にフラれたとしても…十秋ちゃんなら、愛してくれる人はいくらでも居る…ハァ…ホント、分からないわ…」

「…私は、もうそこを理解するだけ無駄だと思ってます…ただこうなった以上、何としても千冬さんに引き取って貰いたい所ですが…」

「全てはもう、千冬さん次第…?」

「先ずはアイツが告白しないと、何も変わらない気がしますがね…」

「あー…そうねぇ…」

ま、私たちが悩んでも仕方無い…結局コレは、何処までも当人同士の問題でしかないのだ…

「…ふぅ…そろそろ、時間も遅いですね…私はそろそろ休みます…」

「…私はシャワー浴びてから寝るわね…おやすみ、箒ちゃん。」

「おやすみなさい、更識先輩…」


166

今日はここに滞在する最終日…と言うか、そろそろ日付も変わる…

 

「…あの、明日は早いから…あたし、もう寝かせて欲しいんだけど…?」

 

「もうちょっとだけ…だって、今日が最後なんだよ?」

 

「だからって、あたしもソコの匂いばかり嗅がれるの…嫌なんだけど…」

 

…と言うか、いつもみたいに舐め回されるよりは確かにマシかも知れないけど…鼻息が当たってくすぐったいから、これはこれで辛い…

 

「だって…ここが一番匂いが強いし…このまま、私の鼻の中に鈴の匂い染み付けたい…」

 

いや、ソコだと多分…アンモニアの匂いがほとんどでしょうに…何ならあたし、さっきトイレ行ったばかりだし…と言うか、さすがに言ってる事がキモイ。いくらコイツでも嫌だわ…

 

「…じゃあ、アンタが寝てる間に…鼻の中をウエットティッシュで、しっかり拭いておくわね?」

 

「えー…!?」

 

「…ハァ…そもそもそんな事出来るわけないでしょうが、もう諦めなさいよ。」

 

「だって、どうしても…鈴の匂いが無いと…」

 

「…ハァ…そもそも、それは気の所為よ…元々、アンタはそれが無くても…何の問題も無く、生きて来れたでしょ?」

 

「だって、それは…"寂しい"って言うのが本当はどんな事か…ちゃんと分かってなかったから…私、やっぱり鈴と離れたくない…」

 

「…ふぅ…だったら早く元気になれる様頑張りなさい…そしたら、また向こうで会えるから。」

 

「…でも、向こうではもうこう言う事…してくれないでしょ?」

 

「そりゃ、あたしとアンタは多分…同室にはならないしね…それに、学園に戻れたら千冬さんにも会えるんだから…そっちに頼めって、言ってるでしょ。」

 

「…ねぇ、やっぱり…鈴のパンツを「いや、もう明日の朝まで履かないわよ…あたし」…何で?」

 

「だって後はするか、寝るだけしかやる事無いんだから…その意味が無いじゃない?」

 

「…今夜一晩だけ履いてくれたら匂いが「あのねぇ…だから、何であたしがそれを置いて行かないとならないのよ…一応気に入ってるのばかりなんだから、嫌よ」うー…あ、じゃあ私の「却下」何で!?」

 

「…いや、確かにサイズ自体は合うかも知れないけど…だからって、パンツの共有はしたくないわよ…てか、アンタのって割と派手だし…あたしの趣味に合わないからちょっと…それに、仮にあたしが履いたとして…アンタそれ、どうする気?」

 

「…それはもちろん、鼻を覆って寝「嫌に決まってんでしょそんなの…てか、さすがに汚い」…鈴のは汚くな「いい加減にしなさいよ…次は、物で殴るって言わなかった?」…ごめんなさい…嫌いにならないで…」

 

「ならないわよ…」

 

…と言うか、今更こんな事程度でアンタの事を嫌ったりなんて…逆に出来無いわよ…ましてや、アンタがこうなった原因も考えたらね…もちろん、半分自業自得とも思うけど…それでも、あたしはアンタを放っておく気にもなれない…それにしても…

 

「…それにしても意外ね?」

 

「スンスン…何が?」

 

「だから嗅ぎすぎよアンタ…いや、これだけあたしに執着してるのに…キスの要求はして来ないからね…」

 

「…だって、鈴は好きな人居るんでしょ?だったら、鈴のファーストキスを勝手に奪うわけには行かないから。」

 

「…そう言う気遣いは出来るのに、変なワガママはやめないのね…」

 

「…その、子供がぬいぐるみ抱いて寝る様なものって…思ってくれたら…」

 

「世の子供の親にブチ切れられるわよ?全然違うわよ…」

 

てか、そんなエロガキが居たら…さすがに嫌だわ…

 

「大体アンタ、あたしを母親扱いしてたけど…こちとら、まだ高校生。こんなデッカくて、何より…こんなに変態な娘は、あたしは要らないわよ。」

 

…と言うか、身長だけ見たら立場が逆にしか思えないでしょうに…

 

「…んー…まぁ、さすがに…鈴に、本当に母親そのものになって欲しいわけじゃないけど…」

 

「でしょうね …てか、そもそも…母親に欲情する子供は性別問わず居なくはないでしょうけど、さすがに少数だろうし。」

 

「…と言うか、変態って「違うの?」…違わないかも。」

 

「否定しなさいよ…ハァ…で、もう良い?あたし…そろそろ寝ときたいんだけど。」

 

普通に明日は平日…しかも、IS学園は本土から直通のモノレールが有るって聞いたのに…変なタイミングで編入するあたしは、寮生の休日移動用の船しか使わせて貰えないのよね…加えて、あたしの為にわざわざ…平日に急遽出港させるとかで、間違っても…遅刻出来無い…てか、ウチの連中に散々脅しを掛けてIS学園に来れる様にしたのに…初日からやらかしたなんて知られたら、あの連中に何言われるか…あの面々を調子に乗らせると、絶対ろくな事が無いからね…

 

「…朝まで抱き締めてくれる?」

 

…上目遣い…あざとさは、あんま無いわね…コイツはあたしの知る限り、あんまりこう言う仕草しない奴だと思ってたんだけど…実はやっても違和感無いタイプだってのを、この一週間で嫌と言う程…分からされたわね…にしても、今のコイツは要求する事こそ割とアレなのに…端々で、本当に可愛いのよね…ハァ…ま、コイツは計算してやってる様子は無さそうだけど…つか、それはそれとして…

 

「…ハァ…身長や、身体自体の大きさ的にも…抱き締めるのはアンタの方でしょ?ま、残りの時間…アンタの抱き枕になってあげる……うん、だけど…ソコに顔埋めて、抱き着こうとするのはやめてね?」

 

…てか、別にソコは大して柔らかいわけでも無いから…寝にくいでしょうに…ま、あたしは胸に関してもあまり大きく無いし…そっちも本当は寝づらいと思うんだけど……う…自分で言ってて何か虚しい…

 

「うー…」

 

「口尖らせて唸らないの…頼むから顔埋めるにしても、せめて胸に…いや、一旦待って…」

 

「むっ…何?」

 

「…いや、タオル濡らして来て良い?ソコから上げた顔を…そのまま胸にベタベタくっ付けられながら寝るのは…何か嫌だわ…」

 

「…早く戻って来てね?」

 

「…ふぅ…タオル持って来て、アンタの顔拭いて…それ洗濯機に放り込んだら戻るわよ。」

 

…と言うか、明日の朝は結構早めに起きて…先にシャワー浴びないと、ヤバいわよね…?…てか、あたし…起きれるかしら…割と寝不足気味なんだけど…ま、とにかく…さっさとタオル取りに行きましょ…そう言えば、明日は家事やる時間は無いわね…とは言え、洗濯機はこれから入れるタオル以外何も無いし…後は放っておいても大丈夫かしらね……正直、不安しかないけど…今更、学園に行くのをやめるわけにも行かないしね…そもそも、その名目が有るからあたしはこの国に戻って来れたんだし…ま、十秋の事はもう…なる様にしかならないわね…もう、あたしに出来る事は無いし…後は、コイツ次第ね…

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