親友の妹に転生しました   作:三和

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「お二人が知り合った直接的な切っ掛けですが…やはり、あの大会でしょうか?」

 

「ええ、試合後…先にその場で声を掛けたのが私で…連絡先の交換を持ち掛けて来たのは彼女です…お互い国際電話だったのでそう長い時間会話したり、メールのやり取りもあの時点ではそう多くは無かったのですが…」

 

「多くの場合、彼女の方から日本にいる貴女のところまで足を運んでいた、と言うのは本当ですか?」

 

「ええ…お恥ずかしい話ですが…こちらは経済的にはあまり…そこで、気を使った彼女の方から会いに来てくれる様になったのです。」

 

「日本にやって来た彼女に関して、何か特別変わった所などは有りましたか?」

 

「いえ、純粋に私に会えた事だけをいつも喜んでくれた事以外特には…あー…ただ、一つ驚いた事は有りましたね…」

 

「と言うと?」

 

「彼女が初めて私の家まで来た日……その、私は料理が苦手なので基本的に作るのは私の弟なのですが…お客さん、それも私を慕ってやって来てくれた人物と言う事で…少々作り過ぎてしまいましてね…私と弟がギブアップする中、大量に残っていた料理を彼女が一人、ペロリと平らげてしまいまして…」

 

言っても、良いよな…?少なくともフランスの友人もお前が健啖家なのは知ってるとの事だったし…

 

「え~と…ちなみにそれはどれくらい有ったのでしょう…?」

 

「……あの時私と弟がギブアップした時点で、まだ五人前は残っていましたね…」

 

「五人前を一度に食べたんですか?」

 

「ええ…もちろん弟は彼女の為に用意してましたし、食べてくれるのは良かったのですが…まさかあの量を全て平らげてしまうとは思いもしませんでした…ちなみにその後、食べ過ぎと…彼女の食べる姿を見ていたせいか気持ち悪くて動けなくなった私達の代わりにあいつが片付けをしましたよ……それがまた手際が良くて、少し羨ましくも感じましたね…あれ以来、弟は彼女が来る時は事前に教えて欲しいと言う様になりました…」

 

「一応その理由をお聞きしても?」

 

「食べさせる相手が昔から知ってる私か友人、友人の両親くらいでしたからね…ほとんど初対面に近い相手に美味しい、と言われたのが嬉しかった様です…ただ、それ以上に気合いを入れないといけない相手だった様ですが……何せあの量でもまだ余裕が有った様ですし…まぁ彼女自身、食べるだけでなく料理の腕もなかなかだったので…そこも弟の琴線に触れる要素だった様ですが…」

 

「では、どちらかと言えば交流が深かったのは弟さんですか?」

 

「どうでしょうかね…先も言った通り彼女の場合、純粋に私に会いに来るのが目的ではあった様です…ただ、だからと言って彼女は決して私の弟を拒絶した事は有りません。私が急な仕事で出る時も、わざわざ滞在時間を伸ばして弟の相手をしてくれた事も有ります。そう言う意味では、弟が私の知らない彼女の事を知ってる可能性も有りますが…」

 

「成程…弟さんにも話を聞いてみたくなりましたが、難しいでしょうか…?」

 

「……ご存知かと思いますが、弟の立場は今は私以上に色々と複雑でして…少々難しいと思います……ただ、電話のみなら可能かも知れません…」

 

「成程…では、彼女に関して貴方の知る印象的なエピソードは何か有りますか?」

 

印象的……色々有るには有るんだが、本当に何処まで語って良いのだろうな…

 

「そうですね…でしたら、一つこんな話が有ります…先ず、彼女は黒を好むのはご存知ですか?」

 

「ええ。彼女は服装から持ち歩く小物まで…基本的に全て黒で統一する、と聞いています。」

 

「……一度私はそれに関して、彼女から一つ拘りを聞いた事が有ります。」

 

「拘り、ですか?」

 

「彼女は人に物を贈る時…昔から絶対に黒色以外の物を用意していたそうです。」

 

「それは何故でしょうか?」

 

「『自分が好きな色だからって他の人が好きだとは限らないし、何より親しい人なら…尚更、明るい色を身に付けていて欲しいから…』…彼女は自分を地味で有ると思い込んでいる…いえ、脚光を浴びるべきは自分では無い、といつも考えていた様ですね…だから、好みとはまた別の部分で目立ちにくい黒を普段から身に付けていたのでしょう」

 

「つまり、彼女は目立ちたくなかった、と?」

 

「自分に光が当てられる事をとにかく彼女は嫌っていました…共に出掛ける時も私にオシャレを進める癖に、自分は最低限の格好しかしたがりませんでした……とにかく、何処までも相手を立てる女性でしたよ。」

 

それこそ、病的な程に…

 

「ここまでで分かると思いますが、彼女は自分に自信が無いだけの…何処までも普通の女性です…人と比べてそれ程特別な部分が有った訳でも有りません…フェンシングの世界で有名で有る前に、私にとってはただ、気の良いだけの友人でした……まぁ健啖家で有ったり、決してユーモアのセンスが有る訳でも無い私と居る時間をとても楽しんでいたり、変わった部分が無いとは言いませんが…」

 

そうだ、私はお前を嫌った事など…一度だって無い。告白されて受け止められたかは分からんが、それでもお前はずっと私の親友だ…お前がどれ程嫌がっても一緒に居たさ……全く、狂う寸前まで私の事を想っていたと言うなら…いっそ全て打ち明けてくれれば良かったんだ…

 

何が起ころうと、今更私がお前を拒絶出来る訳が無いんだからな……人の心に楔を打って居なくなりおって…私が、そんな結末受け入れられる訳が無いと言うのに…

 

「貴女にとって、彼女は大切な親友だった…それだけなんですね…」

 

「ええ。選手時代の彼女に興味が無いとは言いません…だからこそ、この取材を受けました……ですが、私が知ってるのはそうでは無い生前の彼女の姿ばかり…ただ、それでも良いと…私は思っていた…」

 

私の事を好きだったと言うお前…それが、全てで良い…逃がさないぞ…この結末を私は絶対に認めてやるつもりなど無い。人の心にズケズケと入り込んだんだ…ちゃんと、責任は取ってもらうからな…

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