「それでは…千冬さんと■■…失礼、千冬さんと■●さん…お二人のインタビューを始めたいと思います。」
「『宜しくお願いします』」
「っ…お、お願いします…」
だから、真顔で高い声を出すのを止めて欲しいんだが…まぁこの人の場合、言っても無駄なのはもう分かっているが(本人的に機嫌の良い時ですら、不思議と笑顔がほとんど出せないらしい…)と言うか、そっちは笑ってないで早く進行してくれ、私には無理だ…
……さて、インタビューと言っても…ここに居るのはあいつ本人では無いのであくまで形だけに…と思っていたのだが…『あいつは、何だかんだ私に本音を話している』…との事で、普通に私たちの出会いの話から始めて行く事に…(さっき私に話を聞いた意味は…)
「『私は、初めて見た時からとても綺麗な方だと感じました…同時に、私にうっかり日本語で声を掛けてしまって、どうしようかと悩む姿に親しみやすさも感じましたね…』」
「(やりにくい…)ほぼ同じ印象ですね…まぁあの見た目から普通に日本語が出て来て、こちらは驚きもしましたが…」
「『私からしたら家では昔から使ってたからね。寧ろ日本語の方が楽なんだよねぇ…』」
「(これは私が何か言わないといけない流れか…?)とは言え、お前の見た目でたどたどしさの無い日本語を話されたらやはり驚くものだ…ハーフだなんて、選手紹介の時も言ってなかったしな…」
「『大っぴらに言っても良い事は無いからね…でも、千冬からしたら…私が日本語話せて困る事は無かったでしょ?』」
「……まぁあの時は、私もつい、日本語で話し掛けてしまったからな…と言っても、私が当時話せたのは英語くらいの上…あまり自信は無かったが…」
「『今だといくつ喋れるんだっけ?』」
「日本語はもちろんの事…当時よりはマシになった英語とドイツ語の他、お前に教わったからフランス語はある程度は話せるな…」
「『多くの国は英語が話せればどうにかなるから、十分過ぎる程じゃない?良く聞くバイリンガルだって…実はせいぜい二か国語話せるくらいだしね…』」
いや、脱線してるんだが…まだ止めないのか…?
「お二方の話が盛り上がっている様ですが、次に移りましょう…お二方は元々、それぞれ剣道とフェンシング…同じく剣を使用するもののルールなどはまるで違う競技で名を馳せていた訳ですが…それぞれ剣道とフェンシングに興味を持った事は有りますか?」
何の意図が有るんだ、その質問は…?いや、まぁあいつと私の対比と言う意味では必要かも知れんが…
「『私は正直に言うと特に…フランスだとほとんど剣道について聞く事は有りませんし…千冬に会った後なら興味も湧きましたし、千冬の師に軽く稽古をつけて貰う事も有りましたが…』」
あいつ、そんな事まで話していたのか…何だ、色々言ってた割に仲が良いじゃないか。
「私の方はテレビでたまに見るくらいですね…まぁ興味は一応無くは有りませんでしたが…特別、やってみたいとは思いませんでしたし…」
まぁこの話に関しては、これ以上話題が広がりはしないだろうな…
「■■さんは千冬さんの影響で、剣道に興味を持ったと?」
……ここに居るのはあいつでは無く、兄貴の方なのを忘れていたりしないよな?
「『ええ…私の剣には無い、力強さに惹かれまして…まぁ私の場合…斬るより突く方が得意なので、威力よりも正確さの方が重要では有りましたけど…』」
「(何でこっちを見るんですか…何か言えと?)彼女の剣は確かに、剣道向きとは言い難いかも知れませんね…剣道では突きは敬遠されますし…」
中学生以下は禁止の上、高校生でもあまり歓迎されず…それ以降ですら良くない反応をされる…審判によっては、突きを有効打にしない事も有る程だからな…
「『向いてなかったと言えばそうかも知れません…私自身、もうフェンシングが染み付いてましたし…』」
……一人が声真似どころか…最早完全に他人に成り切っていると言う異様な状況のまま、インタビューは続いて行く…この後はフリートークも有ると言うから笑えない…と言うか、もう既に私は色々限界なのだが…