『それで私に相談をか…』
「はい…不躾なお願いで申し訳無いんですけど…」
結局あの後私は食い下がったものの…あの野太刀擬きは千冬と束、兄さんの三人の意見で本当に使用禁止が決定…いよいよ千冬に勝つ方法が浮かばなかった私は、電話で柳韻さんに何か良い案が無いかと聞いてみる事にした…
『千冬君と同じく君も弟子の一人で有るし、長い付き合いだ。知恵を貸すのは別に吝かでは無い…ただ、確かにルール有りきの試合で同じ武器、同じ流派で君が千冬君に勝つのは難しいだろう…』
「そうですよね…」
『一つ聞きたいのだが、力技で突っ込むのは寧ろ彼女の得意分野だ…先ず勝てないと想像は出来無かったのかな?』
厳しい所を突いて来るなぁ…
「う…えと、何とかなるかと思って…」
『……弟子を人外の括りに入れたくは無いが、私から見ても彼女は規格外だ…機械的補助が有っても、そう簡単には届かないだろうな…』
「やっぱり、私が千冬に勝つのは無理でしょうか…」
『…君の言う通り、確かに「剣術」では難しいかも知れないね…』
……剣術では?
「他に何か手が?」
『…君は選ばなかったし、忘れているかも知れないが…例えば篠ノ之流自体、何も剣術に限った流派では無いよ?』
「あっ!」
そうだった…篠ノ之流は実戦的流派だったね…
『仮に間合いの外から攻撃するにしても、何も君の良さを殺してしまう重たい野太刀を選択する事は無かった筈だ…刀以外なら君が選ぶべき武器は寧ろ…』
「槍や薙刀、ですか?」
『正解だ。多少特殊な系統にはなるが、長巻も該当するだろう…』
……でも、私にはそれらの武器を扱った経験が無い…
「柳韻さん…」
『何かな?』
「私にもう一度稽古を付けて貰えませんか?…その、月謝だってちゃんとお支払いたしますか『焦っている様だね』…え?」
『別に教えるのは一向に構わないし、何なら今更君から月謝を取るつもりも無いが…仮に今から私に師事を受けても…残念ながらその大会までには仕上がらない。』
確かに、そうだろうね…私と千冬は何だかんだ同じ時期に篠ノ之流免許皆伝を頂いた……口に出して言うだけなら簡単だけど、それでも認めて貰えるまでかなりの時間が掛かった…確かに今から付け焼き刃でやるくらいなら、IS自体の腕を磨いた方がまだ良いかも知れない…でも…
「それなら…私は一体どうしたら…」
千冬にああは言ったけどやっぱり不安…答えが聞けるなら…聞きたい。
『君なら…問題は無いだろう…』
「?…と言うと?」
『例え初めて持つ武器でも、君の場合は…その心の赴くまま振るうだけで良いと…私は思う。』
「それで…本当に良いんですか…?」
『君の場合は、寧ろ流派に縛られる方が強みを消してしまうだろうね…』
「私の強み、ですか…?」
『恐らく、千冬君は私以上にそれを理解出来ている筈だ…彼女に聞いて見るのも手だが、君は恐らくそうしないだろうね…』
「そうですね…」
聞いてしまったら…意味が無いと思うから…もちろん、どうしても分からなかったら…いつかは聞くかも知れないけど…
『今私から出来る助言はこのくらいだ…参考になったかな?』
「…はい、ありがとうございます…今度、そちらに改めてお礼に伺いますね?」
最近は色々忙しくてあまり顔出せて無いしね…良い機会かも知れない。
『ああ、楽しみにしているよ。』
「はい、その時は改めてまた連絡させて頂きます…では、失礼します。」
私はスピーカーモードにしていた携帯のボタンを押して、電話を切った……ふぅ、緊張したぁ…やっぱり柳韻さんの声聞いてると自然に背筋が伸びる気がするよ…