会社近くのコンビニ前で連絡して、中で適当にお菓子やらなんやら買って…店の前まで来てくれたタクシーに乗り込んだ。
「ふぁっ…」
タクシーの中で眠気が込み上げて来て欠伸が出る……一応、運転手さんに断ってから袋の中の缶コーヒーを一本取り出して中味を口に含んだ…ふぅ。
……タバコ吸いたい…今はあちこち禁煙だし、タクシーでもそうだから…まぁ私は元々あまり吸わない方だけど…今日みたいに忙しくなると、たまに吸いたくなる…
向こうに着いたら少し吸わせて貰おうかな……千冬は随分前に禁煙したから悪いとは思うし……今回忙しいのは自分のせいだとも分かってるけど、こういう時は吸わないとどうもね…
にしても千冬…本当に様子が可笑しかったな……まぁお酒入ったら少しは口滑らせてくれるかも知れない…その前に私が寝ちゃいそうだけどね…泊まりに行く事も多いから、織斑家に私の私服は置いてあるけど…さすがに仕事着は置いてない…
……あー…眠い…思考も散逸してさっきから上手く定まらない…会社出るまでは仕事してたから気も張ってたけど、今は完全に気が抜けてる…着くまでここで少し寝させて貰おうかなぁ…
「お客さん?着きましたよ?」
「ん…」
運転手さんの声で目を開ける…とか考えてる内にいつの間にか本当に寝てたみたいで、ドアの窓ガラスから外を見るともう織斑家の前……いや、何で千冬は外で待ってるの…?……まぁ、良いか…
「ありがとうございます…」
運転手さんにお礼を言って、運賃を払って外に出る…ふぅ…やれやれ…着いたね…
「完全に寝てたな…悪かったな、疲れてるのに呼び出して。」
「ああ、見てたの…ふわ……んー…気にしないで、今回忙しいのは自分のせいだからね。」
「そうか…まぁ明日は平日だが、何なら泊まって行っても構わん。」
……誘いは嬉しいけど、それは千冬が泊まって行って欲しいって意味なのかな?……仕事着が無いから泊まって行くと面倒だけど…まぁ早めに起きれば良いか、私の家は近くだし…
「う~ん…じゃあ泊まって行くよ。」
「そうか、まぁ立ち話も何だ…上がれ。」
「うん、お邪魔します…」
ちゃぶ台の前に座り、タバコを咥えて火を着けようとした所で異常に気付く…え、何この袋の数…
「わざわざこんなに買って来たの…?」
「ああ。今日はとことん飲みたいと思ってな…」
明日平日で飲む量じゃないんだけど…もしかして、これ…今日私寝れないパターンだったりする…?
「と言うか…お前まだタバコ吸ってるのか?」
「……私が着くなり、すぐ台所から灰皿持って来た千冬がそれ言う?大体、学生時代は千冬も吸ってたじゃない…」
「それはもうさすがに時効だろ。今は私も完全に止めてるしな…」
「なら、私は千冬と違ってちゃんと成人近くなってから吸ってるし…責められる謂れは無いんじゃない?」
まぁ実際、吸い始めた時の私の年齢に関しては法的には本当にギリギリアウトの範囲だったりするけど…それはそうと、こればっかりは千冬に言われても今更止められないな…まぁ、昔は私が千冬に言ってたんだけどね…
「と言うか、私は千冬に影響されて吸い始めた様なものなんだけど…」
「散々、私に説教して来た奴がいうセリフか?」
……疲れてるせいか、普段は言わない様な事を言ってる私も私だけど…何か今日は妙に千冬もガンガン口を開いてる様な…
「千冬…もしかして、もう飲んでる?」
「ん?まぁ…お前が来るのが待てなくて少しな…悪いか?」
……多分、少しじゃないよね…
「ハイハイ…今日は私も付き合うから、ゆっくり飲もうか。」
私はタバコに火を着ける……まぁ一夏君がこの場に居たらさすがに吸わないし、そこは勘弁して欲しい…一息吸った後、灰皿に置いて、床の上に有るビニール袋から缶ビールを二本取り出した。
「ま、乾杯でもしようか…」
「何に乾杯するんだ?」
何に、か…
「私たちの友情に、とか?」
「大袈裟な奴だ…小学生の頃からの付き合いだぞ?」
「これから先も何事も無く、ずっとこの関係が続くならそれに越したことは無い…でしょ?」
私がこれから先も千冬を嫌いになる事は先ず無いし、友情以上の気持ちを持ち続けるのも確実……でも、いつか…別れが来ないとは限らない…
「……確かにな。」
千冬と缶を合わせた後、缶の中味を一気に煽る……いや、照れ臭いんだよね…自分で言ってなんだけど…まぁ飲んだ後なら赤くなってるだろう顔もお酒のせいと誤魔化せそうだしね…
「ぷはぁ…」
一気に飲んだのが良くなかったのかゲップが出そうになり…慌てて千冬から顔を背けて口を抑える……ふぅ。
「ごめんね?」
「随分一気に行ったな…そんなにストレス溜まってたのか?」
「まぁそうかもね…」
そう言う事にしておくよ……それは千冬でしょ?と言うセリフはこの場では飲み込んでおく事にする…詳しい話はこれから聞き出す事にしよう…
「ところで、関係を長く続けたいなら尚更タバコ、止めたらどうだ?」
「さっきも言ったけど…実質、勧めた様な立場の千冬がそれ言っちゃう?」
「だからこそ、だな…大体、私はもう止めてるぞ?」
「……良いじゃない、そんなに頻繁に吸う訳じゃないんだし…」
「一夏の前では吸わないでくれよ?」
「それはもちろん分かってるよ。」
「まぁ…それなら良いがな。」