とまぁ…そんな感じで、忙しい毎日を送り…第二回モンド・グロッソの日が近付いて来ていた…
「…で、調子はどうだ?」
「さぁ…私的にはまずまずかなって思うんだけど…千冬はどう思う?」
「…そうだな、私から見れば今のお前は…これまで見た中で一番強いだろうな…」
「……私はもうずっと公式の試合なんて出てないんだけど…それって要は…学生時代より強く見えるって事?」
「ああ。今、お前はあの頃より強い…間違い無くな…」
「全く実感が湧かないんだけど…」
「まぁ、こうして顔を合わせても敢えてお互い本気では戦わなかったからな…そう感じてても不思議は無い。」
「大体、私が使うのは剣じゃなくて槍なんだけど?」
「お前どちらかと言うと技で攻めるタイプだが…まぁ元々剣で戦うのが合わなかったんじゃないか?……ああ、いや…お前が下手って訳じゃない、並の相手ならお前には敵わないだろうしな。」
「……ま、剣じゃ千冬には勝てないだろうなって…昔から思ってたけどね…でも技で攻めるって…私、今回に至っては完全に我流なんだけど?」
「先生から聞いた事が無かったのか?」
「柳韻さんから?何を?」
「……多分、お前が自分で気付くのを待ってたんだろうな…まぁ今ならもう、私の口から言っても良いだろう…お前はな、要は一種の天才なんだ。」
「天才…?私が…?」
「学生時代、お前と試合してるとな…非常にやりにくかったよ…お前は恐らく自分じゃ気付いて無かったんだろうけどな…試合中、何度か篠ノ之流には無い動きを繰り出していたんだぞ?」
「え?いや、私はちゃんと篠ノ之流を「お前の動きは多くの場合、その型から微妙に外れていたんだ…つまり応用だな」でも柳韻さんは止めなかったよ?」
「そりゃ止めないだろ、試合のルールから外れた動きはしてないしな…ちなみに私からどうして直させないのか先生に聞いた事が有るが…『彼女の場合は好きにやらせた方が強くなる』…そう言っていたよ。私も頭が硬いから初めは良く分からなかったが…最終的に分かったよ…お前は自由にやらせた方が強い、と。なら私が止める必要も有るまい…ライバルが強いほうが私も張り合いが出る…ま、結局お前は応用の範囲を抜けられず…パターン化しやすくなって私も対処しやすくなったから、決着は最後まで着かなかったが。」
「つまり私は…そもそも最初から誰にも習わない方が強かった…?」
「身も蓋も無い話になるが、恐らくはそう言う事だ…まぁ仮に何でも好きにやらせたら、お前は今度試合に出られなくなるだろうからな…そう言う訳にも行かなかったが。」
「……」
私が、天才?そんな訳…
「まぁ信じられないのは分かるがな…少なくとも方向性は違うが、間違い無くお前は私に匹敵する才を持っている…大体においてだな、お前…一切習ってない筈の槍をどう振るうか悩んだ期間…少なかったんじゃないか?」
「!…そう言えば…」
確かに普通はもっと戸惑うのかも知れない…最初振ってた時は剣に似た所が有るから使えるのかな、何て…考えてたけど…
「真っ更な状態から練り上げたお前の本気の槍捌き…見られるのを楽しみにしている…今回は気楽だぞ?既存の試合のルールには縛られないからお前の好きに槍を振るえる…多分、ほとんどの奴は相手になるまい。」
「決着を着けるのに、それなりに時間は掛かるだろうけどね…」
私の槍に零落白夜の様な、ピーキーな能力は付けていない…あんなにハイリスク、ハイリターンの能力を使って勝つ自信はさすがに無かった…
「鍛え直したからな、学生時代のカンも戻って来てるだろう…少なくとも体力不足で倒し切れないって事は無いんじゃないか?」
「簡単に言ってくれるなぁ…」
「まぁとは言え、お前のソレもどうかと思うがな…単に槍から推進剤を吐くだけの機能を…単一機能と言い張ろうとするんだからな…」
「ワンオフよりは楽だと思ったんだよ…大体、学生時代の私の売りはスピードだったからね。」
「お前中々当てさせてくれなかったものな…お陰で、私たちが公式戦に出る時は毎回デモンストレーション扱いにされてたが。」
「練習試合でもほぼ時間一杯二人での斬り合いになるからね…だから学校では、公式戦以外二人で戦わせて貰えなくなったんだよねぇ…」
とは言え、大抵は私が先に疲れて終わるだけで…結局綺麗に決着が着いた事は無い。
「フッ…楽しみだ…今回初めて、本当の意味で本気のお前と戦えるからな。」
「…さっきから言おうと思ってたけど、あの頃は試合としては毎回私の負けだったよ?」
「お前が疲れて終わっただけだろう?本来自由な発想で戦える筈のお前が型に囚われ、その癖…無理矢理応用に走るから無駄な動きも増えてたからな…そりゃ疲れもするさ…ただ、今回お前は既存の技術を習ってないんだ…その場その場で最適で自然な攻撃を放てるはずだ……まだ信じられてない様だから改めて断言してやろう…間違い無く、お前はあの頃より強い。今度は私ですら届くか…怪しい程に。」
「……ありがとう、少し…自信が湧いて来た。」
「礼は良い…借りはお前の槍で返してくれ。」
「物騒なお礼だなぁ…」
「良いじゃないか、私がそれを望んでいるんだからな。」
「うん…ふわぁ…あ、もうそろそろ時間も遅いね。」
「ん…もうこんな時間か…束め、声を掛けてくれれば「駄目だよ、朝から付き合わせちゃったから疲れてるのかも知れないじゃない?」…それも、そうだな…なら今日は労ってやるか。」
「うん、じゃあ束に一声掛けてから休もうか。」
「ああ…いや…もしかしたら寝てるんじゃないか?」
「あー…座ったまま寝てるって事?じゃあ尚の事声掛けないとね。」
「そうだな。」