「ん…」
目を開ける…いつの間にか寝ちゃってたみたい……てか、私床で寝てる…
「う…酒臭い…」
部屋の中は酒の臭いで凄い事になっていた。
「うわ…千冬…」
同じく部屋の床で寝てる千冬の姿を発見……周りに大量に空き缶が転がってる…う~ん…昨夜の記憶は…うん、寝る直前まで残ってるね…と言うか、ビールだけならまだしも缶チューハイの空き缶も有る…コレ、私飲んだ覚えないんだけど…一体千冬どれくらい飲んだの?
「取り敢えず片付けちゃわないと…」
オリンピックでは割と合宿中の飲酒が明確に禁止されてるから、ちょっとこのままだと不味い…
千冬が缶を入れていた袋に空き缶を全部放り込んで縛り、千冬のバッグに詰めて…初日に千冬がそうした様に千冬の部屋までバッグを持って…
「あ、そうだ…鍵。」
さすがに部屋には鍵が掛かってる筈…
「う~ん……って、もしかして床に有るコレ?」
私の方の鍵はちゃんと部屋の机の上に置かれている…
「もう…」
無くしたら面倒でしょうに…とにかく私は部屋の鍵とバッグを持ってドアを開ける……
「人気は…無いね…」
廊下を見渡すが左右に伸びた空間には人は居ない…腕にはめたままの時計を見れば、現在午前4時…誰か居たら逆にビックリだけどね…
「千冬の部屋は隣、と。」
何気に今回合宿所に来てるトレーナーさんの部屋も近くに有るので、起こさない様にしないとならないけど…まぁそっと行けば大丈夫だよね……と言うか、例の千冬から聞いた私たちの扱いについて改めて考えてしまう…
調べて来た束は内情知って憤慨してたらしいけど…まぁ文句言われても仕方無いよね、とは思う…私に至っては千冬に巻き込まれただけだからとばっちりみたいな物だけど…正直実際のオリンピック選手や、関係者からしたらそんな事は知ったこっちゃ無い訳で…まぁ今は良いや。
自分の部屋の鍵をしっかり掛け、隣の千冬の部屋に向かう…
「あれ…?」
鍵を差し込んで、回してから感じた感触に首を傾げる…もしかしてと思いながらドアノブを引いてみれば…
「ちょっと千冬…鍵は掛けないと駄目でしょ…」
千冬の部屋は元々鍵が掛けられておらず、その状態で私が改めて回したので鍵が掛かってしまったらしい…
「ハァ…」
溜め息を吐きながらももう一度鍵を差し込み、回す…鍵を抜いてからドアノブを引いた。
「私と部屋の構造…変わらないんだね。」
まぁ当然と言えば当然か…そう考えつつ、バッグを部屋の何処に置こうか考える…既に空き缶しか入ってないし…
「まぁ…普通に部屋の隅に置いておけば良いか…」
さすがにどう言う理由であれ、いきなり部屋に入る様なモラルの無い人もここには居ないでしょ。そう考え、同じく部屋の隅に置いてある…こちらはちゃんと合宿中に使う千冬の着替えなどが入ってるだろうバッグの横に置こうとして……何となくそのバッグに視線が吸い寄せられる…
「っ…」
開けたい…無性にそう思ってしまう…私の頭に浮かんだ内容を言ってしまえば…中には千冬の下着が入ってる筈、と言う事である……ゴクッと唾を飲み込んだ音が嫌に高く部屋の中で響いた気がする…とは言え正直な事を言うと…最近はさすがに見る頻度は減ったけど、私は割と千冬の下着姿は見慣れてしまっている…
いや、子供の頃からの付き合いだし…昔から私が織斑家に泊まったり、まだ両親と暮らしてた頃…千冬が一夏君と一緒に私の家に泊まりに来た事も有るし…千冬の場合昔からその辺は無頓着な所が有って、何なら子供の頃なら普通に一緒にお風呂に入ろうと誘って来たし、千冬が先に入ると…そのまま裸で私の前に現れる事も少なくなかった…
同性と言う事も千冬の方は有って気にはしなかったんだろうけど……と言うか言わないと中学、高校の頃も同じ事をしようとするから…一夏君も居るんだし、とか注意しても普通に下着姿のままではいたりするから…ね。大体、基本的に部屋に私が居ても普通に着替えだすし…
ただ、さすがに高校を出ると二人共色々忙しくなり…お互いの家に泊まる頻度は減ったし…偶に私が来ても、一夏君の事を気にしてるのか裸や下着と言うのは無くな……ってたら良かったんだけど…一夏君が昔からしっかりしてるせいも有って、千冬が私の所に一人で泊まりに来る事が有ると…裸では無くても結局下着姿で私の前に出て来るからね…
……まぁ結局、千冬の下着自体は見慣れてはいる…ただ、こうして本人の知らない所でこっそり見るのはやっぱり感覚が違うので有って……いや、何を考えてるのか私は…
「さっさと部屋に帰ろう…」
私の部屋はアルコールの臭いが充満している…窓を開けておかないと臭いが残ってしまう…元々、私はホテルの部屋の匂いとか気になる方だから芳香剤は持ち込んでるけど…あの臭いはさすがにどうにもならないだろう…
「うわ、やっぱり凄い…」
少し部屋を出ていただけなのに、部屋のドアを開けると同時に…モワッと鼻につくアルコールの臭い…
「これ、廊下の方にも臭い残ったりしないよね…」
正直そうなるとこっちはお手上げだ…取り敢えずこの部屋は換気は出来るけど先ずは…
「千冬…千冬…駄目だ、起きないや…」
休みだし、寝てるのは別に良いけど…ここはあくまで私の部屋で…仮にそうでなくても床に寝かせておくのも良くない…
「しょうがない、取り敢えずベッドに寝かせようかな…千冬?動かすよ?」
返って来るのは寝息のみ…と言うか、あの大量の空き缶を見る限り、完全に酔い潰れて寝てるんだろうけど…鼾をかいたりしないのは凄いね…
「よいしょ…」
千冬を抱き上げる…完全にお姫様抱っこの体勢…私はあまり潰れる事は無いし、私以上に飲む千冬が潰れるって言うのも基本的に無いんだけど……こんなの続くと、やっぱりたまには私もやって欲しいとか思わなくも無い。
まぁ潰れている今の千冬にそれを期待しても仕方無いし、私から一回で良いからやって欲しいとか頼むのは…ちょっと、ハードルが高過ぎる…理由聞かれても答えられないし…
「ふぅ…」
ベッドに千冬を寝かせ、毛布を掛ける…さてと。窓を開けないと…私は部屋の窓を開ける…
「うわ…寒っ…」
さすがにこの時間だと外は一層寒い…千冬は毛布掛けてるから大丈夫だとは思うけど……さて、このままシャワーでも浴びて来よう…何せ服にまで臭いが付きそうなくらい凄い臭いだし…
私は自分のバッグから着替えとタオルを取り出して、部屋に有るバスルームに向かった。
シャワーを浴びて、部屋に戻ってから気付く…
「臭いの元の千冬寝かせたら、ベッドに臭い付いちゃうよね…」
まぁ正直今更…と言うか、まだ寝てるね…休みだし、私もまだ寝たい所だけど…千冬が居るし……千冬の部屋はちょっと…いやまぁ、行ったら今度は…本当にバッグ開けちゃいそうだし…
「走ろうかな。」
ふとした思い付きを口に出す…社会人になってからは朝早く会社に向かう事になるし、何ならここに来てからもスケジュール通りに動くから好きな様に走った記憶なんてほとんど無い…元々、これでも私は運動する方なのだ。
バッグから運動用のジャージを取り出して着て行く……さて、行こうかな。