合宿所の入り口で軽く膝の屈伸をしてからゆっくり走り始める…さすがに昨日までの練習のスピードからは大幅に抑えてのジョギングペース…
ジャージ着ててもまだ少し肌寒いけど、それでもグラウンドを一周するごとに身体はだんだん温まって来た…そうでなくてももう二、三時間もすれば気温も上がっては来るだろう……まぁあくまで今日は休みだし、千冬が心配だから本格的にやるつもりも無い…もうちょっと走ったら様子見を兼ねて戻る事にする…
それにしても…こうやって深く色々と考えたりはせず外をただ走るのは本当に久しぶりだったりする…社会人になってから、本当に毎日色々忙しくて休みの日ですら、走りに行こうとは考えもしなかった……それでも、やっぱり私は運動する事自体は好きな方なんだろうね…
本当は真に心を安定させたいなら、タバコじゃなくて…私の場合はこうして定期的に身体を動かす方が一番リラックスは出来るんだろうなとは思う…ただ、元々そんなに吸う方じゃないとは言っても…通算して行くと経済的負担は決して軽くは無い、何より…あまり忙しかったりすると私も普通に一日に何本も消費する事は有る…身体に悪いのは分かってるし、それなら尚の事…運動した方が良いのは分かってるけど…やっぱりあのお手軽さは、中々手放せそうに無い。実際…どうしても運動なんてする時間取れないしね…
……とまぁ、そんな話を仮に千冬や束にしたら…多分二人で色々私の為に尽力してくれるんだろうね…だからこそ話す気になれないんだけど…実際束にさえ、たまにアポ無しで私の部屋に来た時に吸ってたりするとお小言は頂戴してしまう…
結局私に出来るのは…敢えて生返事でもして、話を流す事くらいになって……うん、駄目だね…モヤモヤして来た…どうもここ、仮に束の話が無かったとしても…何となく少しアウェー感有るから…一人で居るとあんまり落ち着かないみたい……うん、戻ろうかな。何気に部屋を出てからもう30分程経ったみたいだし…
そう思って合宿所に戻ろうとした所で私たちの練習を担当してくれているトレーナーさんに遭遇…元々練習中も何処か事務的だし…今日も休日と言う事も有ってか、昨日まで以上にこの出会いを歓迎されてないのは、どう見ても顔に出てるからさっさと立ち去りたくは有るんだけど…まさか挨拶の一つもしないと言う訳にもいかないだろう…
「おはようございます…」
「……」
まだ早い時間と言う事も有り、声量は控えめで挨拶したら向こうは一応会釈はしてくれたけど、彼は無言で私の横を通り過ぎて行く……向こうに聞こえない様に軽く溜め息を吐きながらも合宿所の中に入る…向こうは元々その気は無いみたいだし、別にプライベートな時間だからって私の方も無理に親睦を深めたいとは思わないけど…こうもあからさまだとやっぱりね…
まぁ、無理な事を気にしても仕方無いか…さっさと部屋に戻ろう…
部屋に帰ると、さすがにさっきより匂いは薄くなっていた…まぁ残りの匂いはこのまま窓を閉めてもどうにかはなるだろう…問題は…
「まだ寝ちゃってるね…」
そもそも、さっきまで凄まじいまでのアルコールの臭いを発していた千冬の存在で有る…まぁ、今日は合宿所内の食堂も休みだし…もうちょっとしたら…合宿所近くのコンビニで朝食の他に、口臭ケア用のタブレットでも買って千冬に渡しても良い…まぁ口臭の他にももう千冬自身からアルコールの臭いが出てる、と感じるレベルの臭いだから…ベッドにも臭いついてるだろうけど…一応置き型の芳香剤以外にも、衣料用の消臭剤は有るから…それで何とか誤魔化せれば良いんだけどね…
ま、とにかく今は時間潰そうか……私は自身のボストンバッグを探り…トランプと違い、こちらは最初から持って行くつもりで用意した文庫本を取り出す…ふわぁ……うう…まだちょっと眠い…このまま私、机でうたた寝とかしちゃったりしないよね…?……まぁ、良いか…起きてる自信が無くても…どうせ今日は休みなんだしね…