「んあ?」
私は目を覚ました…部屋に漂う匂いと視界に入って来る真っ白な壁…そこから今居るのが病室だと気付く。
「あ、駄目だ…押せない…」
一応ナースコールのボタンらしき物はちょうど私の顔の横に有るのが確認出来たものの…私の腕はピクリとも動かず…まぁそりゃそうだよねぇ…ハァ……あむっ!
……取り敢えずナースコールを口に咥えてはみたけど…コレ、どうやって押せば…?
「あひもほにおひてふええら…らふんあひれおへたんらへろなぁ…」
いやぁ…ホント参ったねぇ…
「何をしている…?」
ナースコールが有るのとは逆側…つまり、私の後頭部側から声が聞こえ、そちらに顔を向ける……そこに居た人物の顔を見て、私は文字通り思考が停止した…少しして、頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出す…
「お、おひゃおう…ちひゆ。」
「おはよう……取り敢えず、ソレを口から離せ…」
「…で、何をしてたんだ?」
「いや、病院なのは分かったから…看護師さんを呼ぼうと思ったんだけど…腕が動かないから、取り敢えず口でナースコール押せないかと…」
「……束程じゃないが…お前も時々、訳の分からん事をやりだすよな…」
「あの…寝起きのせいか頭回らなくて…」
「まぁ、そういう事にしておいてやる…で、呼ぶ前にだ…一応私はお前の今置かれている状況は大体聞いている……先に聞いておくか?」
「うん、聞かせて…?」
「そうか…先ず前提として、お前は寝ていた…三日程な。」
「え?そんなに?」
「元々命に別状は無いとは聞いたが、それにしたって普通にグースカ寝てたからな…怒りを通り越して呆れたよ…」
「えと、やっぱり千冬、怒ってたの…?」
「当たり前だろう…ちなみに、束はもっと怒ってたぞ…そもそもお前の相棒が望んだのも確かなんだろうが…腕の関節部分が滅茶苦茶だったらしいからな…もちろん、お前が無茶した事も含めての怒りだがな…」
「えっと…ごめんね…?」
「お前が突拍子も無い事をするのは、もう慣れてる…今更だな。」
私って、千冬にそんな風に思われてたんだ……あ、でも結構思い当たる節…有るかも…
「…で、お前の腕の話だがな…特別問題は無い。」
「へ?でも私…全然腕動かせないんだけど…?」
「お前の症状は…要は腕を酷使した事による神経の麻痺だそうだ。つまり、無理をしなければ普通に治る、と言う事だ……ISの関節部が破壊されてるのに、お前の腕が無事なのは…お前の相棒が守ってくれたからなのかも知れんな…」
「そっか、あの子が…」
「お前、自分のISと話をしてたな…暮桜は喋った事なんて無いからな…相当気に入られたんだろうな……最も、束はそんな機能付けて無いと言ってたが…」
「あー…やっぱりそうなんだね…」
「やっぱり?」
「あの子の声は…機械音声って感じじゃなかったからね…頭の中で、女の子の声が直接響く感じだったの。」
「女の子か…」
「うん、姿も見た…って言っていいのかな…頭の中に浮かんで来たの……まぁ、私が勝手にそうイメージしただけなのかも知れないけど…でも、声は確かに聞いた…」
「そうか…」
「会いたいな…お礼を言いたいし、何より…無茶に付き合わせちゃった事を謝りたいの…」
「お前のIS…シュナイダーと言ったか?まだ修理中だそうだ…終わったら私から束に持って来る様に言っておこう。」
「うん、お願い…それで…私はいつ、ここから出られるの?」
「大体、麻痺が治るのが三週間くらいだそうだ。」
「三週間…いや、待って…そしたら私、結構ギリギリじゃない?」
「三週間で治らない可能性も一応有るしな……と言うかお前…大会出る気だったのか?」
「駄目なの?」
「そもそも麻痺が治っても、すぐに元通りには動かせないだろ…無理だな。」
「そんな…」
「代償は覚悟の上だったんだろ?」
「いや、でも…私の腕は死んでないのに…」
腕が使えなくなるならそれでも良かった…諦めも着いた……でもまだ動くなら、出たいよ…あの子を大きな舞台で活躍させてあげたいしね…
「無理をすれば…余計治らなくなるぞ?」
「分かってる…でも、こればっかりは…譲れない。」
「……仕方の無い奴だ…なら、私から運営に掛け合ってみよう…ただ、出れるかどうかはお前次第だ。」
「分かってる…うん、二週間で完全に治してみせる…そしたら、間に合うかな…」
「……不思議だな。」
「え?」
「どう考えても無茶なのに、お前なら…何故か出来そうな気がして来る…」
「私、昔からやるって決めた事は簡単に投げ出したつもりないんだけど…忘れちゃった?」
「……いや、そうだな…お前はそう言う奴だったな…」
「うん…私は、絶対にこの腕を治す。」
まだ千冬に勝つのを諦めたくないし…何より、あの子と…あの子を作ってくれた束にも申し訳が立たないからね。