車の中…カリカリと音が響く…
「おい…」
「ん…何?」
「何じゃない…今度は何を食べてる…」
「ん…マーブルチョコレート…食べる?」
「要らん…あれだけ食ってまだ食うのか…」
「いや、おやつはまた別だし…」
「千冬、気にするだけ無駄だぞ…」
「……そうですね。」
「……と言うか、何で兄さんが来てるの?」
「そう言う言い方は無いだろう?お前の退院に合わせて、わざわざ迎えに来てくれたんだから…」
「そこが既に可笑しいんだけどね…」
いや、もちろん来てくれてありがたいな、とは思ってる…別に文句は無い…けど…
「食べるのは構わんが、こぼすなよ?掃除するのは手間なんだ。」
「分かってる……と言うか、兄さん…仕事は?」
「休みを取った…本当はお前の入院に合わせて、取る予定だったんだがな…」
……この人、結局どんな仕事してるんだろう?そう言えば聞いた事無いなぁ…
「いや、居たとしても三週間くらいだし…そんなにやって貰う事無いんだけど、来てどうする気だったの?」
「ん?そもそも食事も一人で出来無かったんじゃないか?」
「まぁ、そうだけど…」
この人の場合、別に変な下心とか無いのは分かるけど…それでもねぇ…
「まぁ、私が付いてあげられれば良かったんですけどね…」
「ま、君が付く事が無いのはこいつも良く分かってるだろうからな…」
……そりゃあ分かるよ。千冬は私より先ずは一夏君を優先するって言うのは…兄さんが毎日様子見に行ってたみたいだけど、それでも心配だろうしね…正直私としても、一夏君に何か有ったらなんて…考えたくないから寧ろそっちを気にして欲しいって思う。
「一夏君、何も無かった?」
「無いな、寧ろ私よりしっかりしてるくらいだ。」
「……また、お小遣い一杯あげたりしてないよね?」
「さて…」
「いや、答えてよ…またあげたの?寧ろ一夏君…困ってるんだからね?」
「まぁ、私はそんなに使い道が無いからな。」
私と千冬以上にアレな生活してるからね、この人…前に束にせがまれて、千冬と私も含めて三人で家に行った事有るけど…本当に家の中に必要最低限の物しか無いし…まぁ、子供の頃から自分の部屋にマンガの一冊すら置いてなかったみたいだけど…その割に、数少ない友人とは話が通じてるみたいだから理由聞いたら本屋で立ち読みして内容も記憶してたって言うし…いや、母さんから毎月ちゃんとお金貰えてたんだから普通に買えば良かったのに…
「いつもすみません…」
「千冬、謝らなくて良いって…一夏君にお金渡すの、もうこの人にとっては数少ない趣味みたいなものだから。」
「酷い言われ様だ…弟分を可愛がって、何か問題でも有るのか?」
「いや、お金イコール愛情じゃないでしょう…その癖、お金渡してるのに別に色々買い与えてるしさぁ…」
「……お前も何か買って欲しいって意味なのか?」
「何でそうなるのよ…私、今は自分で稼いでるから良いってば。」
「……残念だ。」
……何で本気で残念そうなの?自分の兄ながら、本当にこの人って色々ズレてるよね…
「楽しそうだな、■■。」
「千冬…何処をどう見たら、そう見えるの…」
「お前は…いつも私や一夏に遠慮してる節が有るからな…」
「いや、まぁ…兄さんって昔からこんなだし…自然と私もこう言う対応になるんだよね…」
学生時代は避けてたけど、今ではもう慣れちゃった…だってこの人に気使う方が馬鹿らしいんだもん。クールなのかと思ったら、実際は天然混じりの勉強の出来るバカって感じの人だし……まぁ、天然は私もみたいだけど。
……と言うかね、千冬…一夏君はともかく、貴女には線引きしないと、私…色々我慢出来無くなりそうだし…
「……」
「何?」
車を運転してる兄さんが、ミラー越しに私に視線を送って来る…
「……いや、何でもないさ。」
……じゃあ意味深な視線送るの、やめてくれない?バカなのかと思ってたら、たまにこうやって鋭い所も有るんだよねぇ…ホント、やりにくいなぁ…
「……で、今度は何を食おうとしてる?」
ジト目を送って来る千冬から顔を背ける…
「メロンパン「確実にこぼれるからここではやめてくれ」…じゃあ、あんぱんにする。」
「いや、一旦食うのをやめないか?」
「……もうちょっとだけ。」
いや、何か今日お腹空くんだよねぇ…