「ちーちゃん…」
「私に聞くな…!これがOKのサインかなんて私には分からないぞ…!?」
聞いて来てる面子には■●さんもいる訳だが、今の私には敬語を使う余裕など無い…
「いや、このタイミングで相部屋なんだから…そう言う事じゃないのか?」
「まだそうとは限らんでしょう…!?何せ向こうの私は、子供の頃からあいつと同じ空間で過ごす事も多かったんですから…!?」
「すっごい慌ててるけど、二人がくっつくのは嫌とか?」
「……それを私に聞くのは意地が悪いぞ!?」
確かに、二人の幸せを望みたくは有る…だがな…!
「お前の立場だったならどうなんだ!?複雑な気分にはならないのか!?」
「う~ん…束さん的には■ちゃんならいつでもWelcome!なんだけど。」
「あー…お前ならそう言うんだろうよ…」
聞いた私がバカだったな…
「で、結局…君は反対なのか?」
「……向こうの私はここに居る私とは別人ですしね、アレが考えた上で選んでるなら好きにすれば良いと、そう思いますよ…ええ…ただ…」
「ただ?」
「冷静に考えて"私"が、そこまで考えてる様にも思えないんですよ…」
「…とすれば、向こうの君は普通に家族の感覚で相部屋にしたと?」
「その可能性が高いかと思います…あいつには、酷な話でしょうが。」
と言うか、仮に実際そうだとしても…"私"がそのつもりだとハッキリ口にしない限りは、あいつの方からは手を出さないのが目に見えてるんだよな…
「うわ…ちーちゃんって酷い女だねぇ…」
「私に言うな!」
いっそ、あいつの方から"私"に手を出せば話は早いんじゃないか!?
「向こうの自分の事だと思って、好き勝手に考えてるな…」
「!…何の事でしょう?」
「いや、もう顔に出てるよちーちゃん…」
「ハァ…もう見ててもどかしい…普段大量に飲み食いする癖に、何で据え膳に手を出さないんだ…」
「普通、食欲と性欲は別の欲求だぞ?」
「でもさ、■ちゃんの場合似た様な物じゃない?結局の所、ストレスで大量に食べてる様に見えるし…」
「まぁ、普段から誘ってる様にしか見えない程無防備な奴相手に我慢してるからな…それはストレスも溜まるだろうな…」
「向こうのあいつが時折タバコ吸うのは、そう言う理由も有るでしょうしね…」
「でも、私たちの知る■ちゃんは吸ってた形跡無いんだよね…」
「一応見えない所で吸ってた可能性は有るから、その辺は何とも言えないがな…」
「ハァ…全く、早く襲ってしまえば良いと思うがな…」
「それをちーちゃんが言ったら駄目じゃない?」
「何故「私の知る限り、ちーちゃんも割と似た様な事してたからね」…まぁ、そうかもな…」
とは言え、まさか同性の友人が性別超えて私を好きだなどと…言われるまで考えた事が無かったからな…今思えば、あいつには色々酷い事をしたと思う…ただ…
「私は向こうの私程、思わせぶりな事はしてない筈だがな…」
「あちらはほとんど家族の様に育ってるからな…当然無防備にもなるだろうな…」
「さすがに、裸同然の格好で何度も現れるとかやらないよねぇ…」
「当たり前だ、親しき仲にも礼儀有りと言うだろうが。」
同性だからこそ気安くなるものと良く言われるが、実際は気安過ぎるのも良くない。それは、友人だとしても普通に失礼だ…
「ま、ここまで来たら見守りたいところだが…」
「さすがに、部屋の中にカメラは無いよ…ここ、まぁまぁランクの高いホテルみたいだし…」
「もし有ったらそれは確実に盗撮用だろ?寧ろ、二人が部屋に入る前に私が絶対回収する…」
こうなったら誰にも無粋な真似はさせん。全く、こうまで向こうはお前を信頼してくれると言うんだ…いっそとっとと襲ってしまえ!
「その状況で襲ったら、今度は■ちゃんがクズ過ぎない?」
「ふぅ…あいつは十年以上我慢して来たんだ、そろそろ良いだろ?」
「自分の事じゃないのに強気だよねぇ…」
「ほっとけ。」
「と言うか、わざわざ持ち込みOKのホテル探したのか?」
「いやぁ…だってホテル内のレストランだと、あまり沢山食べるのはばかれるじゃない?」
それに予算も跳ね上がるし。と言うか、宿泊費こそ一応出してくれる事になってるけど…実質素泊まり前提の予算しか提示して来ないの何なのか…もう政府に不信感しか湧かない…
「何やら不穏な事を考えてる様だが、少なくともお前の異常な食欲まで…向こうも考慮してないと思うぞ…」
「でも予算、ギリギリだよ?」
「そもそも、ホテルのグレードが高めなの忘れてないか?」
「まぁ、それは私の選択ミスかなって思うけど…」
「なら、お前が悪くないか?」
「う…」
反論出来無いか…
「ま、海外旅行となるとお前も私もまだ初心者の範疇だし…これも良い経験だろ?」
「そう、かもね…」
とは言え、予算的に乏しいのは事実なんだよねぇ…本当に、あまりに千冬に対する扱いが悪い…
「お前が私の事を考えてくれてるのは…まぁ、嬉しい…ただ、一つ良いか?」
「何?」
「……この大量の食い物、一旦どうにか出来無いか?少なくとも真面目な話する雰囲気じゃないんだが?」
「それとこれとは別だよねぇ…」
と言うか、ここにある物全部…保存なんて利く作りじゃないし無理言わないで欲しい…でも、こうして千冬から視線を逸らせば…実際に外の店とホテルの売店で買い込んだ食べ物が目に入ってしまうし、私もこの空気でコレだと現実逃避はしたくなる…いや、だからって食欲は抑えようと思って中々抑えられる物じゃないしさ…
「てか、千冬も何か食べない?」
「要らん……では、さすがに今回は不味いか。」
「一応、これが夕飯だからね…」
とは言え、千冬が手を出すのを躊躇う理由は分からなくも無い。
「ドネルケバブ、ブラートヴルスト、カリーヴルスト…要は全部肉だろ?」
まぁ、つまりはそう言う事…私と違って千冬は普通の体質だから、カロリーは凄く気になると思う…うん、一応普通の人より太りにくいと自負してる私でも気持ちは少し分かる…でも、今注目して欲しいのはそこじゃない。
「ノンノン。ドネルケバブは焼肉を挟んだサンドイッチと捉えても良いけど、ブラートヴルストはソーセージをパンに挟んだ…要はホットドッグだね…そして、カーリヴルストはカレー風味のケチャップ掛けたソーセージとポテトのセット…後は、ニシンの塩漬けを挟んだビスマルクサンド何てのも有るよ♪」
ちなみに、ブラートヴルストが普通にソーセージの事で…実はカーリヴルストと被ってるんだよね…使ってるのは良く見たら同じ種類のソーセージみたいだし…ドイツはソーセージの種類がいくつか有る筈なのに、まさか被るとは…むぅ…チェックが甘かったかな…
「何かまたテンション高いなお前…と言うか、せっかく外国行くのに普通の観光地より先に屋台の食い物ばかり調べてるのは何なんだ…?」
「いや、先ずは何処でも食べられる物を先に確認しない?」
そこ特有の物なんて後でしょ。
「…で、ドイツと言えばやっぱりビールだよね♪」
「まぁ、種類は確かに豊富だな…と言うか今思えば…普通にこいつらを全部一人で運んで来たのも凄いがな…」
……そもそも、こうして無理矢理テンション上げないとこの空間に居るの耐えられないしさ…まぁ、相部屋にされてたのは…ホテル着くまで知らなかったんだけど…
「お前な…他の客やホテルの従業員が凄い目でお前の事見てたの、気付いてたか?」
「さぁ?」
嘘、ホントは気付いてた…でも、相部屋なの知った辺りから部屋に着くまでの記憶は…少し曖昧な所も有る…
「でさぁ、食べるよね?」
まぁ、食べてくれないと非常に困る…私、これでも緊張してるから…ちょっとこのままだと間が持たない…
「ハァ…良し。なら今夜はとことん飲み食いするぞ。」
「そう来ないとね♪」
と言うか少しは察してよ、私のテンション可笑しい理由をさ…貴女と二人同じ部屋、それも同じベッドで寝るとか…私には結構辛いんだからね?……そりゃ、家では時々そう言う事も有ったけどさすがに二人で旅行来てる様な状況でこれだと本当に…ハァ…ホント、罪な人…