親友の妹に転生しました   作:三和

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「千冬…千冬…駄目だね、完全に寝てる…」

 

あれから大体二時間程…テーブルに突っ伏して、千冬は寝てしまった。

 

「う~ん…まさかビールで酔い潰れるとはね…」

 

ドイツはビールの種類こそとにかく豊富で、味も千差万別…最も、度数は有っても大抵はどれも普通に5%前後で…別に日本のビールに比べて特別強かったりはしない。

 

ただ、お酒好きの人が海外から来たりするとテンション上がって来てついつい飲み過ぎる事も有るらしい…まぁ、度数低くても一応アルコールだからねぇ…元々炭酸ガス入りのせいも有ってか、アルコール特有のえぐみを感じにくいし。

 

「幸い食べ物に関しては全部食べてくれたし、片付けるのには特に困らないけど…」

 

まぁ、ゴミの分別ルールは有るんだろうけど…ホテルまで来てあまりそこら辺細かく気にするのも可笑しな話…取り敢えず最低限種類だけでも分けて、袋詰めして部屋の中に置いておけば…外出した時や、チェックアウトの時に従業員の人が纏めて処理してくれるだろう。

 

……取り敢えずそこは良い、気にしなくても…だけどねぇ…

 

「このままベッドまで運んだら不味いよねぇ…」

 

問題は今現在も爆睡している千冬をどうするか…千冬を運ぶ事なら出来るし、部屋着ならそのままベッドで寝かせても良いんだけど…今千冬が着てるのは当然余所行きの服…着替えはさすがにいくつか用意してるだろうけど、それでも服に皺が出来るのは良くない…

 

「こっ、こう…!もうちょっとラフな格好に着替えさせた方が良いよね…!」

 

……声が上ずってしまう…いや、ただ着替えさせるだけ…!何もするつもりは無い……と、そこでふと冷静になった…

 

「う~ん…」

 

良く考えたら…意識の無い人間の服を脱がせ、且つ着替えさせるのって…結構難しい様な…

 

「まぁ、幸い千冬が着てるのは良く有るレディーススーツだし…取り敢えず着替えまではさせなくても良いか…あ。」

 

最も、上だけ脱がすならまだしも…下はそのままと言うのは…でも、下も脱がすのか…さすがに我慢出来無くなるかも…

 

「ブツブツ言ってても仕方無いか…」

 

今は無理にでも性欲を押し殺す事にする…いや、私を信頼して無防備な姿を晒してる千冬を襲うとか…そんな卑怯な事する訳には行かないよね…

 

 

 

 

「はひー…」

 

あれから更に二時間後…漸く千冬のスーツ上下を脱がし終えた…いや、千冬の方に抵抗が無いから脱がすの自体は思ってたよりはまだ楽だったんだけど…千冬の身体を動かす度に…その、千冬が一々色っぽい声漏らすから…自分の欲求と何度も戦う羽目に…

 

「いや、ある意味千冬本人よりも強敵だよね…っ。」

 

ベッドの上に居る千冬にチラッと視線を向け、すぐに逸らす……上がシャツで下がパンツって…もう何かエロい…

 

「ハァ…」

 

脱がせたスーツ上下はもう部屋に備え付けのハンガーに掛けて有る…取り敢えず千冬の身体に毛布を掛けてから、部屋のカードキーを持って私は部屋を出る事に……一度部屋から出て、頭冷やさないと寝れないよ…

 

 

 

 

路上喫煙自体に罰則は無くても、さすがに公共施設内でそのままタバコを吸うのは禁止されてる…とは言え、日本ではここ最近すっかり数の減りつつ有る喫煙所と、ラウンジやテラスなど外に面した所では一応吸っても良い事になってる…

 

時間もそろそろ日付けが変わる頃だからか、人気の無くなっているロビーをキョロキョロ見渡しながら私は吸える場所を探す…まぁ、外で吸っても良いんだけど……あ、あそこにしよう。

 

レストランのテラス席と思われる辺りに来て、私はポケットからタバコを取り出す…そう言えば、ここ誰も居ないけど入って来て良いのだろうか…まぁレストランも閉まってる時間とは言え、閉鎖されてないみたいだから良いのかな。

 

ソフトケースタイプの箱からタバコを一本抜き出して咥える…さて……ん?

 

「あれ?」

 

ライターが見付からない…部屋に置いて来たのかな…吸おうとしてた時に見付からないと余計に吸いたくなる…うー…

 

「Excuse me, sir(すみません)」

 

声を掛けられ、そちらに目を向ければ…う~ん…男性?それとも女性?見た目どちらとも取れる人が立っている…声もハスキーボイスだったから余計に判別が付かない…と言うか、これだけ近くに来られて私、気付かなかったのか…さて、それはそうと英語ね…ドイツの公共施設の職員は英語を履修してる人が多いらしい…とは言え、この人は別にホテルの従業員には見えない…まぁ、私の見た目だと日本人には見えないし…一応今でも共通語扱いで有る英語で声を掛けるのは妥当と言える所…まぁ、とにかく返事は返さないと駄目か…私あんまり英語自信無いんだけどなぁ…

 

「You're asking me?(私に聞いたの?)」

 

「Yes, can I help you?(ええ、何かお困りでは?)」

 

……can I help you?はお店の従業員とかが声を掛けてくる時に使う常套句…要は何かお探しですか?の意。基本的には何か返事はしないと失礼に当たる…ただ、普通に日本の中学で教える時はいらっしゃいませと言う意味だと教える事が多い…つまり日本人の感覚だと、無視して良い言葉だと勘違いしてしまうのだ…本当にこの辺は改善すべきだと思う…まぁ、特に海外に行く事想定して教えてる訳じゃないから仕方無いと言えば仕方無い……と、脱線したか…少なくとも今回はもう少し砕けた意味になるだろうね…

 

「I forgot my lighter…(ライターを忘れてしまったみたいで…)」

 

「Here you are.(どうぞ)」

 

渡してくれたそれは多分、注入式のガスライター…それも結構高い物に見える……と、それは置いといて…先程からどうも違和感を感じる…どうにも私以上にこの人の発音に気になる点が有る…う~ん…ちょっと確認してみようか。

 

「Thank you……もしかして日本語話せます?」

 

「……おや、何故お分かりに?」

 

「発音に日本語を話せる人特有のズレが有りましたから…」

 

私も経験有るから分かるけど、大体英語を覚えたての日本人が英語を話しても…本場の人たちには通じない事が多々有る…まぁ、そもそも日本語には存在しない発音が有ったり、根本的に文法などのルールも違うからその辺きちんと把握してないと中々通じないんだよねぇ…で、この人は見た目的に日本人では無いだろうけど…多分、どちらかと言えば日本語の方が話しやすい人なんじゃないかと感じた。……そんな事を考えつつ、私はタバコに火を着ける…

 

「ふぅ……取り敢えずライターはお返しします…で、まだ何か?」

 

ライター持ってた割に自分はタバコを出す訳でも無く、向こうはずっとこちらを見詰めている…

 

「貴女に興味が有りまして…織斑千冬と一緒に居た貴女に…」

 

「……千冬のファン…と言う感じでも無さそうですね…」

 

視線からは特別悪意は感じないけど、純粋な敵意みたいのが込められている様に思う……もちろん、千冬では無く目の前の私に向けて。

 

「……今回の大会の出場者の一人…ですかね?」

 

日本語を話せる辺り、その可能性が高い…そう言えばテレビで出場者の特集してた気がするけど…う~ん…この人の事覚えてないなぁ…と言うか、この人女性なのか。

 

「ええ…実は前大会も出場していました。」

 

……えっと…居たっけ?正直、まるで記憶に無い。

 

「あの…失礼ですが…」

 

「分からなくても仕方有りません…私、すぐ負けてしまいましたから。」

 

「はぁ…それで、私に何か?」

 

「今大会…貴女も出場するんですよね?」

 

「ええ、まぁ…」

 

別に隠す様な事でも無いか。

 

「今大会こそ、私は優勝したいと思っています…Ms織斑を破って…もちろん、先ずは貴女から。」

 

「……宣戦布告、ってやつですか。」

 

まぁ、こう言う宣言をされるのは嫌いでは無い。ただ…

 

「ふぅ……私なんて大した事無いですよ、千冬のゴリ押しで棚ぼた出場決まっただけの存在ですし…それと、私と千冬だけに目を奪われてたら足元を掬われますよ?」

 

仮にも大会に出て来る人たち…しかも二度目…一度目より出場者の人数も増えてるし、さすがに全体のレベルも上がってる筈…私と千冬以外を見る気が無いなら、普通にこの人は何処かで負けるだろう。

 

「成程…肝に銘じましょう…」

 

彼女は私に背を向けて歩いて行く……あ。

 

「あの!名前、教えてくれないんですか?」

 

彼女が振り向いた。

 

「そうですね…では、会った時のお楽しみ、と言う事で。」

 

「お互い、会う前に負けるかも知れませんよ?」

 

「その時はその時…でしょう?」

 

彼女が再び背を向けて去って行く…何だろうね…何か、凄く厄介そうな人に目を付けられた気がする…

 

「でも、気分は悪くないか。」

 

こう言う出会いが有るなら、ここに来た甲斐は有ったと言える気もする…

 

「ふわぁ…」

 

まぁ、今夜はもう休む事にしよう…私は吸い終わったタバコを携帯灰皿に放り込む……いや、そう言えばあの格好の千冬の横に寝る事になるのか…

 

「床で良い、か。」

 

もう私も酔ってた事にして床で寝てしまおう…正直同じ寝床に入ったら、襲わない自信が無いから…

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