部屋に入ろうとして、カードキーを使ってもドアが開かないと言う定番(実際、日本国内のホテルでも多くのお客さんは一度は有るらしい…)の現象が早速起こり、夜中に申し訳無いと思いながらも仕方無く…フロントに行って従業員の方に頼んで開けてもらう事に…さすがにホテルの従業員ともなれば、私や千冬の様な怪しい発音の英語でも通じるから楽で良いよね…ちなみに、実は日本語が通じる従業員も一応このホテルには居るとか…まぁ、とにかく予算は掛かったけどお高めのホテル選んで良かった…
……ただ、カードキーの仕様に関しては文句を言いたい…頼むから一番簡単と言われる翳す奴か、差し込み口に挿入したらその瞬間に普通に開くやつにして欲しい…差した後、ゆっくり抜く事で途中磁気に反応して開く…なんて発想は中々出ない…まぁ、ちゃんと説明されたのに忘れてた私が悪いんだけどさ…
…で、私が戻ってからも普通に寝てる千冬を尻目に…取り敢えずゴミを片付ける事に…
「ん?」
千冬の座ってた方に有った瓶を持ち上げたら少し中身が残ってるのに気付く……部屋内の冷蔵庫にわざわざ入れておく程の量でも無い様なのでそのまま飲み干す…関節キスで有る事に気付くけどまぁ、今更…それぐらいなら今までも良く有ったから問題は…
「本人寝てる所でやると、やっぱり意識しちゃうよね…」
問題有り有りだった…いや、この歳にもなってそんな事で一々慌てるのかって話では有るんだけどね…
「ハァ…」
頭を振って煩悩を追い出しつつ…さっさと片付けを進めて行く……ふぅ…こんな物かな…
「寝よう…」
取り敢えず化粧を落として歯を磨き、楽な格好に着替えてからベッドまで向かい…眠る千冬を出来るだけ見ない様にしつつ…枕と、予備と思われる毛布を回収…床に横になった……いや、何の為のダブルベッド何だか…最も、分かっててもそのまま一緒に寝る気にはなれないなぁ…と言うか、こうしてちゃんと枕と毛布使って寝てたら…少なくとも酔ってそのまま寝てしまった、と言う言い訳は使えない様な…まぁ、もう眠いし…後は朝になってから考える事にしよう……眠りに落ちる直前…先程の女性が浮かべていた、何処か蠱惑的な笑顔が脳裏を過ぎった…
結局、あの人は誰だったのか…まぁ、朝にでも千冬が起きて来たら心当たりが無いか聞いてみる事にしよう…あれだけ雰囲気の有る人なんだし、もしかしたら千冬は覚えてるかも…そう考えた辺りで、私は完全に眠りに付いた。
「ん…」
目が覚める…う…身体痛い…さすがに床で寝たのは失敗だったか…とは言え、あの格好の千冬の横に寝るのは…さすがに私にはハードルが高い…
「んー……う…」
立ち上がり、軽く伸びをしたら身体のあちこちからバキボキと音がした…いや、凄いね…何かもう…ついでに言えば、地味に私もアルコールはちゃんと回ってたらしく、そこまでキツくは無いけど…あまり爽やかな目覚めとは言い難い…
「ん…シャワーでも浴びようかな…っ…」
チラッとベッドを見れば、毛布が床に落ち…普通にあの格好を晒す千冬の姿……うわ…寝起きだと更に刺激が強い…
「……」
敢えて何も考えない様にしながら千冬の元まで向かい、自分の使った枕と毛布を戻し、床に落ちてた毛布を拾って千冬の上に掛け直す…そのままバスルームに向かった。
温めのシャワーは中々に心地良かった、取り敢えず起きた当初よりは調子も良くなってる…いや、バスルームの鏡見たらあんまり宜しくない顔色してたから…
カーテンを少し開けて確認してみれば天気が良い…ちなみに現在時刻は午前八時…まぁ、今日を入れて三日は特に急ぎの用は無いし、このまま出掛けたい気分になるけど…千冬はまだ寝てるしねぇ…昨夜無理に付き合わせた事考えれば起こす気にはなれない…まぁ、起きて来るまではゆっくりしてようか…
ホテルの部屋に備え付けられてる飲食物のセットは無料と有料の物が存在する…日本だとホテルでも旅館でも大体全部置かれてる物は無料なんだけど、海外だと普通に有料だったりする事が有る……まぁ、後で精算するのが普通だし…特にケチケチする様な値段でも無いだろうけど…出来ればタダだと嬉しい。
「Complimentary…うん、タダだね…」
最もご丁寧にComplimentaryの下に日本語で免費、無料のって書いてるから間違えようが無いんだけど。
ちなみにComplimentaryは英語で、直訳するとそのものズバリ…無料、と言う意味。他にも敬意を表す、と言う意味も有るとか。
つまり、この表記は…ホテル側が敬意を持って、お客様に提供するとか言うニュアンスを含んでいるそうな…
「敬意ねぇ…」
特に何かを感じた訳では無いけど…まだ寝起き気味のせいか、思ったより低い声が出てしまう…
「……」
取り敢えずComplimentaryと書かれた紙の下に有ったインスタントコーヒーのドリップパックを部屋に有ったカップにセット…それで、お湯を沸か…!
「……ケトルだ。」
……いや、あまり馴染みが無いとは言え…何で私はケトルで驚いたのか…んー…まだ寝惚けてるかな…
「まぁ、楽だし良いか。」
最も、良く良く考えれば今でもケトルを使ってない日本人は多いと思う…いや、やかんで十分だしね…取り敢えず冷蔵庫を開けてみればミネラルウォーターが入っている……ラベルに英語でFree Drink…加えてComplimentary表記は良いとして、普通に日本語でご自由にお飲みくださいって書いてあるのは…何か海外来てる気がしなくなって来る…まぁ、文句言うのはお門違いなんだけどさ…私は結局日本語か、フランス語の方が分かりやすい訳だし…ちなみにフランスだとドイツ程に何処でも英語が通じる訳では無い模様…最も、私はフランスだと素直にフランス語使うから…その辺気にする事は特に無いんだけど。
ケトルの蓋を開けて、ミネラルウォーターを注いでスイッチを入れる……んー…本でも読もうかな。
……大して読み進める事無く、カチッと言う音ともにケトルのお湯が沸いてしまったのはご愛嬌か…まぁ、早いのはありがたいし…最近のやかんだと沸いた時うるさくて千冬が起きちゃうしね…
「ハァ…」
とは言え、何となくしっくり来ないとは感じてしまう…私って、見た目こうでもやっぱり日本人なんだろうね…
「次は日本国内の旅行に行きたいなぁ…」
普段は特別故郷である日本について何かを思う事は無い…でも、フランス来た時にも感じる違和感を今もここ、ドイツで感じてるし…何だかんだ私は日本が好きなんだろうね…
「でも、あまり楽しめる所は無い様な…」
日本で旅行って言うと、大抵は温泉が有る所になる…私、熱い風呂苦手だからなぁ…
「ま、今は良いか。」
せっかくドイツまで来たのに、もう帰りたいとか考えてるのは贅沢が過ぎる…まぁ、千冬が起きたら普通に観光にでも行こう…どうせ、暇だしね…てか、元々旅行をしに来た訳でも無いし。