童貞が恋に落ちる瞬間   作:味噌村 幸太郎

3 / 4
エレベーターの子 ギャップが激しい子

エレベーターの子

 

 あれはいとこの結婚式の日だった。

 僕は二十歳になっても未だに彼女もなし、童貞をこじらせていた。

 そんな時に幸せいっぱいの結婚式を見てイライラしていた。

 飲みなれないビールをがぶ飲みして酔っ払いながら帰宅した。

 

 自宅のマンションはオートロックの自動ドアで一階で鍵を差し込まないと開かない。

 結婚式に参加したため、慣れないスーツを着ていて、どこに鍵をなおしたかわからなくなった。

 いとこと奥さんの熱いキッスを思い出して更にムカついてた。

 早く家に帰ってベッドに直行したいのに……。

「クソッ」

 そう呟くとドアが勝手に開いた。

 

 誰かが出てきたんだ。

 一人の制服を着た女の子だ。

 

(あ、僕の行っていた学校の制服だ)

 

 目が大きくてパッチリとした可愛らしい子。

 そしてイライラしていた僕に笑顔でこういった。

 

「こんにちは~」

 

 なんて眩しい笑顔なんだ。

 僕は先ほどのイライラも吹っ飛んで、うれしくなった。

「あ、ちわっ」

 相手は年下にも限らず、緊張してしまった、その可愛さに。

 

 

 それからしばらく、僕はその後輩ちゃんによくエレベーターで会うことが多くなった。

 名前は知らないけど、気になったから後輩ちゃんと名付けた。

 たぶん新しく引っ越してきた子なんだろう。

 

 ある日、バイト終わりでクタクタに疲れて帰ってきた。

 

 僕が集合ポストのダイヤルを回していると後ろから声をかけられた。

 振り返ると例の後輩ちゃんがエレベーターからひょっこり小さな顔を出してこういった。

「あの、乗りますか?」

「あ、うん」

 僕は急いでチラシを手にエレベーターに乗り込んだ。

 

 後輩ちゃんは振り返ると小さな声で僕に言った。

「あの何階ですか?」

 初めて会話したな……。

「一番上でお願い」

「わかりました」

 なんて優しい子なんだ。

 

 今日も校則をしっかりまもった三つ編みに乱れのない制服を着用している。

 真面目な子だなぁ。

 

 その後ろ姿をよく見るとどこか小刻みに震えている。

(ん、緊張しているのかな?)

 

 ま、まさか!

 わざわざ僕のためにエレベーターを待っていてくれて、尚且つ僕の階を聞いた……。

 僕の家を知りたいのでは?

 

 この子、僕に惚れているかもしれない!

 

 

ギャップが激しい子

 

 夏に近づいて僕は少しメンタルが脆くなっていた。

 風邪をひいているわけではないが、1週間以上学校を休んでいた。

 というか、避けていたのかしれない。

 

 パジャマで毎日過ごしていた。

 勉強もろくにせずテレビやゲームばかりでごろごろしている。

 それでも学校に行かなきゃなあとはなんとなく感じていた。

 

 けど、だるいなぁていうのが本音。

 

 日曜日になって、家族はみんな外出しており、家には僕一人だけになった。

 

 部屋でゲームをピコピコしているとインターホンが鳴った。

 

「はい?」

「あ、あの……同じクラスの鮫島です」

 

 僕が出るとマンションの一階に来ていたのは、クラスでも真面目で通っている委員長、鮫島さんだった。

 鮫島さんは成績優秀で、先生からも人気だった。

 自分から積極的に行動する人ではないのだけど、人に頼まれると喜んで助けるタイプ。

 制服もキッチリ着こなすし、話し方も上品。

 どこかおとなしい感じで、話すときも優しいけど小さな声で喋る女の子らしい子だった。

 

 それにしてもなんで鮫島さんが僕の家に?

 今の班では確かに同じグループなのだけど、彼女とはそんなに話したこともない。

 せいぜいが行事とかで必要なときに話すぐらいだ。

 

「鮫島さん? どうしたの?」

「うん、ちょっと近くに寄ったから」

 

 僕はとりあえず、一階の自動ドアを開けて、彼女がエレベーターであがってくるのを待った。

 ひょっとして、僕が連日学校を休んでいるから、先生に言われて委員長として、登校刺激でもするつもりなんじゃないかな……。

 やめてほしい。

 正直会いたくないなぁと思っていた。

 

 再びチャイムが鳴り、彼女が自宅前のドアまでたどり着いたことが知らさせる。

「ハァ……」

 ため息交じりにドアノブを開く。

 強い風と共に現れたのは、タンクトップにかなり丈の短いショートパンツ、それにミュールをはいた少女。

 僕は一瞬、目を疑った。

 その子があのクラスでおとなしくて真面目なスカート丈の鮫島さんって思いもしもなかった。

 

「あの、童貞くん。いきなり来てごめんね」

「い、いや別にいいけど」

 僕は目のやり場にこまった。

 こんなに露出度の高い同年代の子に会うのは初めてだったからだ。

 

「これ、この前パパたちと長崎に行ったの。だからよかったらご家族と食べて」

 鮫島さんは優しい声で僕にカステラをくれた。

 僕は学校で何度も鮫島さんの姿を目にしていたが、ハッキリいって地味な子という印象が強かった。

 しかし、今日の彼女ときたらどうだ?

 

 プライベードでは私服はこんなにもギャルギャルしいのか?

 とんだおビッチさんではないのか……いや、待てよ。

 

 アポなしでわざわざ僕の家におみやげを持ってきただと?

 しかもこんな露出度の高いファッションで。

 つまり僕が気になって仕方ないから、おみやげをパパさんに頼んでうちに来る口実を作ったんだ!?

 

 この子、僕に惚れているかもしれない!

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。