ゴジラ バーニングブラッド feat.リバイス&トリガー   作:ホシボシ

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第1話 God nose

「信じられません!」

 

全く――、信じられません!

しかも……の…られない事件が! 今、我々の眼前において……されているのであります!

今や、ゴ……の通…した跡は…炎の海と……見渡せ………町から!

 

新……方面は……海です!

神代坂テレビをご覧の皆さま! これは劇でも映画でもありません。

現実の奇跡! 世紀の怪事件です! 我々の世界は一瞬のうちに200万年の昔に引き戻されたのでありましょうか……?

 

 

「こちらはMS短波無線機による実況放送班であります!」

 

 

ゴ……は……ま、この放送を送って……テレビ塔に……進んでまいりました!

もう退避する、いとまも……。

我々の命……。

ますます近づいて……りまし…。

いよいよ最後です。

右手を塔に……した! もの凄い力です!

 

 

「いよいよ最期!」

 

 

さようなら。

 

 

「みなさんさようなら!」

 

 

男が電波塔から落ちていった。

 

◆

 

人生はクソだ。

いつか誰かがそう言った。

間違っちゃいないが正解でもない。

正しくは、上手くいかなかったヤツはとことん上手くいかずにズルズル引きずることになる。

 

 

「………」

 

 

三冨士(みふじ)カイは目を覚ました。

夏なのに寒い。風が強いんだ。海辺の崖はいつもそうだった。

立ち上がって崖の下を見ると誰かの靴があった。

少し離れたところにある大きな崖のほうは観光名所になっていて、食事をする場所や写真を撮る所がたくさんある。

遊覧船も出ているから、ボランティアの人間がよく見回りにきていた。

だがこう少し離れたところともなれば、ほぼ同じ高さの崖であったとしても誰もいない。

 

見たところ死体はなかった。

流されたのか、それとも初めから靴だけだったのか。

この場所にはよく来るが、飛んだ人間を見たのはたったの一回だけだった。

危ないと叫んだが、あの人は止まらなかった。

名前も知らない人だった。

 

カイは羨んだ。

なぜならばそれはきっと揺るぎのない勝利だったからだ。

だがカイには『負け』に見えた。

 

「カイ」

「カイ」

 

父と母が笑っていた。

カイは微笑み、二人のもとへ行こうとして気づいた。

母が薄い。紙みたいだ。顔も潰れて、誰だかわからない。

父は赤く爛れている。

幻想と無限のケロイド。そう名付けた。

空も同じ柄だ。

ずっと悪夢を見る。

 

 

今も覚めない。

 

 

「こら」

 

 

頬に当たる手が冷たくて、カイは目を覚ました。

気だるい。唸りながら体を起こす。

ボサボサで乱雑に伸びはやした髪、後ろは結んであるが、寝ているときは解いている。

カイの前にいたのは、赤毛の女性だった。

夢樹(ゆめき)ネムは、カイの隣に座った。

 

 

「ダメでしょ? こんなところでサボっちゃ」

 

「……やる気なくて」

 

「じゃあいっしょにサボりましょ!」

 

 

カシュッと音がした。

ネムはレモンサワーをグビグビ飲み始めた。

 

 

「医療班なのに。いいんですか……?」

 

「だからよ。あんなこと、できゃあしないわ。私の仕事はケガをした人を治すことだもの」

 

「じゃあこなきゃよかった」

 

「そういうわけにもいかないのよ、大人の世界は。あなたもわかるでしょ? 飲む?」

 

「飛行機で来てるんで」

 

「あら、そう。残念」

 

 

ネムはカイのために開けたグレープフルーツサワーをグビグビと飲み始めた。

 

すべてのはじまりは1954年。

神代坂(かみしろざか)という街に、巨大怪獣が現れた。

 

呉爾羅。

大戸島にある伝承によると、普段は海底で眠っているが人間の愚かさに反応して目覚めるらしい。

近海の生物を食らいつくし、やがては陸にあがり人間を食らい始める。

処女の血を飲むと眠くなるとされており、大戸島では毎年『生贄』を海に流していたという。

 

後に『ヤマネ博士』が怪獣の正体を突き止める。

 

それは呉爾羅伝承のモデルとなった、絶滅を免れた恐竜『ゴジラサウルス』が水爆実験の影響で変異したものだった。

政府はこれを"水爆怪獣ゴジラ"と名付け、戦車や戦闘機で迎え撃った。

しかしゴジラの皮膚は厚く、攻撃をものともしないばかりか、微量ではあるものの放射能をまき散らしながら移動して建物を薙ぎ払い、さらに口からは高濃度の放射能エネルギーを超高温ミストとして噴射して神代坂を火の海に変えた。

 

 

『その有様は、終わった筈の戦争を思い出させたのです』

 

『その光景に、誰よりも胸を痛めている青年がいました』

 

 

セリザワ博士です。

彼はかつて戦争で大きな傷を負い、体が思うように動かせなくなり、右目も失いました。

婚約は解消されてしまい、幻視や幻覚に悩まされた彼は、人との交流を避け、少しでも戦争を忘れるために研究に没頭しました。

そんな彼はある日、酸素を研究する中で禁断の存在を見つけてしまいます。

後に名付けられたそれは、水中酸素破壊剤・オキシジェンデストロイヤー。

 

博士は絶望しました。

戦争を忘れようともがいた結果、どんな兵器よりも恐ろしいものを生み出してしまったのですから。

彼はそれを決して、世間に公表しないでおこうと心に決めました。

しかしテレビを見てゴジラの存在を知った彼は、察してしまったのです。

ゴジラを倒すことができるのは、この最強の兵器だけだと。

 

彼は悩みました。

久しぶりに訪ねてきた元婚約者や友人に説得されても、初めは拒みました。

なぜならばゴジラを倒した兵器を、人間は放っておくわけがないからです。

 

しかし彼にはたった一人、息子がいました。

血のつながりはありません。悩んで眠れない夜、気分転換に出かけた散歩で出会った子供でした。

母親は酷く錯乱していました。夫は戦争で死んだようです。両親はゴジラが食い破った電車に乗っていたそうです。

彼女は子供を川に流そうとしていました。

育てられないそうです。なぜならば彼女は病を患っていたからです。

彼女は酷く怯えていました。ゴジラを恐れていたのです。

殺されるくらいならばいっそ自分の手で、と。

 

博士はそれくらいならば自分が引き取ると、赤ん坊を連れて帰りました。

名前を聞かなかったので、レンと名付けました。

博士はレンを少しだけ育てました。

博士は気づきました。

 

 

「オガタ、僕はね、知ってしまったんだ。とても単純なことだがこの歳まで理解できなかった」

 

 

それを聞いた友人は驚きました。

 

 

「こいつは興味深いね。俺よりもずっと頭のいいお前が、いったい何を知ったというんだい?」

 

 

博士は頷きました。

 

 

「生きるものは、孤独には耐えられない」

 

 

博士はレンを愛しました。

なので博士はゴジラを倒そうと誓ったのです。

すべての研究成果を燃やし、博士は友人とともに海に入りました。

そして友人だけを逃がし、オキシジェンデストロイヤーを起動させました。

博士は自らの頭の中にあるオキシジェンデストロイヤーの設計図ごと、ゴジラを葬り去ったのです。

こうしてゴジラは死にましたが、ヤマネ博士が最後にポツリと言いました。

 

 

「あのゴジラが最後の一匹だとは……、思えない」

 

 

もしも、水爆実験が立て続けに行われるとしたら、あのゴジラの同類がまた世界のどこかに現れてくるかもしれない……。

 

 

『これが、我々人類を苛む永遠の呪縛となりました』

 

 

いつか、また。

それが人々の心に残り続けたのです。

思えば、世界にはいろいろな神話や伝承があります。もしもそこに何かしらのモデルがいたとすれば……?

だから人間はいずれ現れるかもしれない怪獣に対抗するチームを作りました。

 

 

「それが、我々、アンタレスなのです!」

 

 

◆

 

 

「アカン! エグイってほんまコレ! 死ぬほど疲れたわ!」

 

 

分厚いゴジラの着ぐるみの中から汗だくの男が飛び出してきた。

那須川(なすかわ)マルオ。筋肉質のガッチリとした体が特徴的な大男である。

整えられた口髭と、あご髭がトレードマークであり、身だしなみを気にする彼は素早く汗を拭いて体にスプレーをかけていた。

 

 

「ナスさんおつかれ~」

 

「おお! サンキュー!」

 

 

那須川はカイが投げたペットボトルを受け取ると、ものの三秒ほどで飲み干した。

 

 

「って、お前らなぁ、何をサボっとんねん!」

 

「悪い悪い。でも俺、"逃げ惑う人A"だしさ。いなくても変わらないだろ……?」

 

「私も、"逃げ惑う人B"だし」

 

「何をぬかしとんねん! あのな、そういうのがおるからリアリティが出るんやろ?」

 

「まあまあ、いいじゃないか。逃げ惑うCからLはいたんだし。あれだけいれば二人だけいなくても気にはならないさ」

 

 

メガネをかけた落ち着いた雰囲気の男性が入ってきた。

鷹診(たかみ)レイジ。今日の『劇』で、ゴジラの説明を行っていたのが彼だった。

 

仰々しい組織名をつけられてはいるが、かつてよりだいぶと小規模になってきた。

というのもゴジラが現れてから約68年経ったが、その間に他の怪獣が現れたことはない。

やはり巨大怪獣はゴジラだけだったのか? そうは思えど、不安は消えない。

目撃情報はたびたび送られてきた。

だからアンタレスは、サーチ(怪獣の捜索)、スタディ(研究)、シェルター(怪獣出現時の避難誘導)を目的として活動しているのだ。

今日はスタディの一環として、近くの小学校でゴジラの劇をやっていたのだった。

 

 

「あ、あの!」

 

 

片づけを行っていると、一人の男の子がメモ帳を片手にやってきた。

 

 

「どうしたんだい?」

 

 

鷹診がしゃがみ、男の子と目を合わせる。

 

 

「ぼく、ゴジラが好きで……!」

 

 

こういうのは珍しくない。

巨大怪獣という存在に一定の興味を示す子供は出てくるものだ。

そういう特撮作品も多いし、ましてやかつての被害を知らない世代からしてみれば、ロマン溢れる話だろう。

鷹診は少年の疑問の一つ一つに丁寧に回答していった。

ゴジラに関心を持ってもらうことはアンタレスにとっては重要なことである。

 

 

「どうしてゴジラは町を破壊したんですか?」

 

「……わからない。一体どこを目指そうとしたのかは今も調査中なんだ。それにもしかしたらどこも目指していなかったのかもしれない」

 

「そうなんですか?」

 

「もしかしたら怒っていたのかもしれないね人間に。破壊できればどこでもよかった」

 

「ど、どうして?」

 

「我々がゴジラを怪獣に変えてしまったんだ。核兵器なんてものは作るべきじゃなかったんだよ」

 

「ぼくたちのせいですか? ぼくらが悪いんですか?」

 

「悪いか悪くないかも……、難しいね。まあでもキミにもいつかわかるよ。人間は後からならなんとでき言えるものさ。だからキミだけの答えがいつか生まれる」

 

 

男の子は何度か頷き、戻っていった。

カイも、それを見送りながら、ふと右を見た。

核兵器。鷹診の言葉が頭をよぎる。

カイが見ていたのは、この神代坂にいればどこからでも見ることができる巨大な『塔』だ。

クリスタルタワー。文字通りクリスタルのように澄み渡り、なおかつ眩い輝きを放つ巨大な建造物。その役割はエネルギー供給施設である。

 

1993年。

日本はすべての原子力発電所の稼働停止を宣言した。

 

その背景にゴジラの影があったことはいうまでもない。

アンタレスは当時、ゴジラの行動目的が核エネルギーの採取であった可能性が高いと発表した。

もしもまたゴジラか、それに類似する怪獣が現れて原発が狙われたらどうなるか?

以後、日本は火力発電や風力発電を主とすることを決めたのである。

しかしそれらでは、原発に見合う電力の供給が行えるとはいいがたかった。

そんな中、1999年。日本の歴史が変わる日がやってくる。

 

極星(きょくせい)という未知の鉱物が見つかったのだ。

 

それに火をつけてみると、灯った炎は永遠に消えることはなかった。

研究の末、この鉱物には無尽蔵のエネルギーが込められているらしい。

その一端しか理解できなかったが、それでも生み出されたプラズマエネルギーによる発電システムを確立することができた。

そして建設されたのが極星保管施設、クリスタルタワーである。

極星発電のおかげで電力の心配は解消された。今もタワーでは極星の研究が行われており、今後の発展が期待されているのである。

 

 

「………」

 

 

カイは思い出していた。

一部の学者は極星はゴジラの体内で生み出されたされた龍涎香(りゅうぜんこう)(クジラの腸内に発生する結石)のようなものだと提唱していた。

 

影に、怯えている。

今日も道で『白夜(びゃくや)』と呼ばれる白装束の集団がスピーチを行っていた。

人間は怪獣に世界を返却するべきだ。人間こそが環境汚染の原因であり、今の生活を改善しない限りは怪獣に滅ぼされるのだとか何とか。

多くの人間はそれを聞き流して歩き去るが、心のどこかで影を感じている。

にも関わらず、見えない。見ようとしない。目を塞ぎたがる。

ゴジラ以降、怪獣は一体も現れなかったが、それは間違いだとカイは今でも思っている。

彼はゴジラに会っていた。

そして父と母を殺されたのだ。

 

 

『本当だ! 本当に見たんだ!』

 

 

何度も何度も繰り返した言葉だが、誰も信じてくれなかった。

ゴジラは死んだのだ。いるわけがない。

いたとしても、それほど大きな生物がいたなら絶対に痕跡があるものなのだと。

 

確かにそうかもしれない。

足跡は見つからなかったし、当時のカイは6歳だ。

発言の信ぴょう性がないのはわかっている。

 

だが、だったら崩壊した家はどう説明する?

踏みつぶされて原形をとどめていない母の死体はどう説明する?

黒焦げになって転がっていた父の死体はどう説明する?

 

カイは覚えている。あの咆哮、あの姿、あの口から放たれた熱線。

間違いない。幻ではない。

あれは正真正銘、水爆怪獣ゴジラだった。

 

 

「ん?」

 

 

少し、景色が暗かった。

それは黒い靄があるからだと気づく。

はて? これはなんだろうか? 黒い煙だろうか?

しかし近くで火災があった様子はないし、何かを燃やしている気配もないし、煙突がはない。

地下から何かガスが漏れている可能性もある。

カイは鷹診たちに声をかけようと――

 

 

「え?」

 

 

ネムの声が聞こえて、カイは動きを止めた。

視線を横に戻す。ビルの間にそびえたつ『黒』があった。

 

シン――、と。静まり返った気がした。

 

あまりにも唐突に視界に入ってきたそれを、誰もが信じられず言葉が出てこなかった。

間違いなく、つい先ほどまであんなものはなかった。

ではそれはなんだ? 巨岩とも見間違えたが、それが生物であるということに気づくのはすぐだった。

 

 

「ゴォォォォオォオォォォオォオオ!」

 

 

鳴いたのだ。

口が裂けて、音が出た。

みんな、震えを感じた。

音の衝撃なのか、それとも違うものが体を震わせたのか。

いずれにせよ、その轟音が人々から一瞬で声を奪った。

 

ブゥン、と音がした。一つ、背びれが赤黒く光る。

また一つ、ブゥンと、背びれが光った。

また、一つ。また一つ。そうやってだんだん尾から頭のほうへと光が伝わり――

 

そしてそれが。

巨大怪獣が口を開けた。

 

「!!」

 

赤い熱線が出た。

ピィィィィっと高い音がして、細長いレーザーがビルを貫き、後ろにあるビルを貫いて爆発が巻き起こる。

降り注ぐ瓦礫が多くの人々を飲み込んで、そこでやっと悲鳴が聞こえた。

逃げ惑う人々の中で、怪獣は歩き出す。

その瞳は黒目しかなく、真っ黒でどこを見ているのかわからない。

 

「ガァアア!」

 

怪獣は近くにあった建物を爪で破壊し、尾をふるってマンションを叩き壊した。

崩れ落ちる無数の瓦礫。邪魔だと言わんばかりに熱線が飛ぶ。

首を払い、レーザーが移動していく。炎の中に多くの人が消えていった。

 

 

「……ぜ」

 

 

足が震えている。

しかしそれは恐怖ではない。それを超越した何かだ。

彼は、あまりにも大きな感情を制御できず、思わずニヤリと笑った。

 

 

「会いたかったぜ……! ゴジラ!!」

 

 

それは間違いない、あの日見た、水爆怪獣ゴジラだった。

目を合わせようと思ったが、ゴジラには黒目しかない。

しかしカイはゴジラと目が合っているのだと信じた。信じるしかできなかった。

 

 

「お前を殺すことだけを考えて生きてきた!!」

 

 

カイたちは走り出し、『それ』に向かった。

 

 

 

 

「にゃー!」

 

一方、逃げ惑う人々の中を猫が走っていた。

 

 

「ミケ!」

 

 

男の子が猫を追いかける。彼の猫だった。

 

 

「りーちゃん!!」

 

 

母親が血相を変えて、男の子を追いかける。

男の子は猫を抱きしめ、母親は男の子を抱きしめた。

 

 

「あ、あ……!」

 

 

腰が抜ける。

すぐそこにゴジラがいた。

足を上げる。巨大な影が親子とペットを覆う。

 

 

「いやぁぁあああ!」

 

 

母親は息子たちを強く抱きしめ、目を瞑った。

 

 

「……っっ?」

 

 

しかしいくら待っても痛みはない。

それを感じる前に死んだのだろうか?

ゆっくりと目を開けるが、ここはまだ現世だった。

 

上を見る。ゴジラが足を止めていた。

ゴジラは下を見ていた。親子を見ていた。

なので親子を避けるように足を前に出し、歩いていった。

 

 

「ママ見て! 怪獣さんがぼくらを避けてくれ――、り゛ゅんっっ!!」

 

 

親子がまとめて吹き飛んだ。

ゴジラが尻尾で弾き飛ばしたのだ。

ゴジラの口が裂けた。笑っているようだった。

 

 

「………」

 

 

ゴジラが止まった。

凄まじい光を感じたからだ。

ゆっくりと振り返る。殺したはずの親子と猫一匹が生きている。

 

 

「ゴォオオオオオオオオオオ!」

 

 

不快感に吠えた。

親子はボール状のバリアの中にいたのだ。

弾き飛ばされたそのボールを受け止めたものは、親子と猫を地面におろして避難させる。

そして、振り返った。

 

 

『ULTRAMAN・TRIGGER! MULTI-TYPE!!』

 

 

右手は指を伸ばして前に出し、左手は引いて拳を握る。

構えを取ったウルトラマントリガーは、ゴジラと睨み合った。

 

 

◆

 

 

 

「ハァ!」

 

飛びかかり、殴りつける。

ゴジラの皮膚に沈む拳。衝撃でよろけたところへ、トリガーは蹴りを繰り出した。

しかし力を込められたのか、ビクともしない。

そのままゴジラは腕を振るって引っ掻いてくるが、トリガーは後ろに飛びながら光弾を連射して命中させていく。

 

 

「ゴォォォォオ……!」

 

 

ゴジラが構えた。背ビレが光る。

着地したトリガーは前に走り、そのまま両足を揃えて地面を蹴る。

ピィィーと、高い音がして、ゴジラの口から赤いレーザーが発射された。

しかしトリガーは前宙でそれを飛び越え、そのまま足を突き出す。

 

 

「ウ゛ア゛ッッ!」

 

 

しかし飛び蹴りがもう少しでゴジラに届くというところで、ゴジラは体を回転させた。

振るわれた尾がトリガーを弾き、そのままマンションを巻き込んで墜落してしまう。

瓦礫がまとわりつく。トリガーは素早く立ち上がったが、そこで思わず前のめりになった。

 

ゴジラが消えていたのだ。

素早く左右を確認するが、ゴジラの姿はない。

後ろか? 素早くターンを行ったが、やはりゴジラはいなかった。

 

 

(あんなに大きいのに、すぐに身を隠せるなんて……!?)

 

 

辺りを見回すが穴を掘って逃げた様子はない。

では空か? トリガーは一歩後ずさりながら上を見るが、やはりそこにゴジラはいなかった。

 

 

「グアアァ!」

 

 

次の瞬間、背中に凄まじい熱と衝撃を感じた。

よろけると何かにぶつかる感触。

顔を上げるとゴジラの手が見えた。

顔を殴られてトリガーは右へはじかれる。

 

何かにぶつかった。ゴジラだった。

蹴られたトリガーはそのままの勢いでバク転を行い、ゴジラから距離を取る。

さらに飛び上がり、飛行、上空からゴジラの動きを把握しようとした。

 

 

(え!? いない?)

 

 

ゴジラがどこにもいない。

そんな馬鹿な? トリガーが混乱していると、頭部に強い力を感じた。

ゴジラだった。トリガーの頭を掴み、そのまま落下いく。

 

「ゴガアァアアアア!」

 

「グアァアアアア!」

 

地面に叩きつけられたトリガーから苦痛の声があがる。

しかしそれを上回る混乱があった。

それなりに高く飛んだつもりだったが、ゴジラは後ろにいた。

ゴジラは飛行能力を持っている? しかし翼はない。跳躍で到達したとでもいうのか?

 

 

「グォオ!」

 

 

トリガーの胸を抑えるゴジラの足。

さらにトリガーは見た。ゴジラの口の中が光っている。

 

「ハアッ!」

 

「ゴッ!」

 

トリガーは何とか足を上げて蹴りでゴジラを怯ませると、さらに足を殴りつけて抵抗する。

しかしゴジラはトリガーを踏みつけたまま、さらに口内の光を強めていった。

このままではマズいが、そこでゴジラがよろけて力が緩んだ。

トリガーは足を持ち上げて地面を転がり、拘束を抜け出す。

さらに飛び上がり、ゴジラを攻撃してくれたサークルアームズを手元に呼び寄せた。

 

 

「ハァアア!」

 

 

走り、剣でゴジラを切り抜けようとした。

ズブリと、刃がゴジラの胴体に沈んでいく。

 

 

「!?」

 

 

トリガーは大きな違和感を覚えた。

攻撃は当たったはずだが、どうしてだか全く手ごたえがない。

そこでトリガーはゴジラが一瞬にして消え、真横に現れたのを見た。

振るわれた足がトリガーを打つ。

そうか――、と、理解する。よろけた背後に現れるゴジラ。

トリガーは剣を突き出したが、ゴジラは消えて、そして後ろに現れる。

 

 

(ワープだ!!)

 

 

ゴジラは口を開けた。

トリガーの背中にレーザーを当てようとして、やめる。

振り返り発射する赤い線。それは飛びかかってきた巨大なゴリラを撃ち抜き、爆散させた。

 

 

『レクレク!』『カマカマ!』『バリバリスタンプフィーバー!』

 

 

ゴジラよりは小さいが、それでも大きめのティラノサウルスとカマキリが纏わりつくようにゴジラへ攻撃を仕掛けていった。

ティラノは噛みつき、カマキリは両手の鎌でゴジラの肉体を傷つけながら飛び回るが――

 

「ゴオオオオオオオオオ!」

 

体内放射。

ゴジラの体からエネルギー派が拡散されて、ティラノとカマキリを吹き飛ばした。

カマキリはその際の衝撃でバラバラになり、ティラノもまた首を掴まれていた。

ゴジラが力を込めると、ティラノは苦し気に呻く。

そしてブチリと音がして、頭部と胴体が分離した。

 

 

「ハァァアア!」

 

 

ゴジラの後ろ。

トリガーが飛び上がって、剣を振り上げるが、そこでレーザー音が聞こえた。

ゴジラの背ビレから赤い線が幾重にも発射されてトリガーを撃ったのだ。

ゴジラはそこでしばらく停止する。やがて真っ黒な瞳が一つのビルの上を捉えた。

 

 

「あれ? なんかおれっちたちのこと見てない? アイツ」

 

 

次の瞬間、ピィィイイと音が鳴った。

 

 

「ウォオオオオ!」

 

 

バイスは咄嗟に前に出てエネルギーシールドを展開させてリバイを守った。

しかしその衝撃にバイスの足裏が滑る。リバイが受け止めるが勢いは止まらず、二人はフェンスを突き破って地面に落下した。

 

 

「グアぁ!」「ぎゅへぇ!」

 

 

変身しているおかげで落下の際のダメージは軽減されたが、先ほどと今の衝撃で変身が解除されてしまった。

それで終わってくれればよかったが、赤いレーザーがビルを切断したのが見えた。

ほどなくして、ビルの上半分がそれが一輝たちのほうへ落下してきたではないか。

 

 

『ヤッベェエエエエ! これはまずいって一輝(いっき)!』

 

「ぐッッ!」

 

 

絶体絶命かと思われたが、そこで光が迸る。

トリガーが割り入り、ビルを受け止めたのだ。

しかしそうなると動きは制限される。ゴジラは口を開き、背ビレを光らせていく。

 

 

「!!」

 

 

爆発音。

ゴジラの背ビレに次々とミサイルが着弾していく。

 

 

「ゴジラ……!」

 

 

カイから搾り出るようにして漏れた声。

アンタレスはいつかまた現れるかもしれない怪獣のために、それに対抗する兵器を開発していた。

極星をエネルギーコアとするその名は、『タルタロス』。

正式パイロットは三人。

まずは三冨士カイが搭乗する戦闘機・スターファルコン。

 

 

「被害は甚大だ。さらにゴジラの他にも人型の巨大生物が確認できる。様子を見ている時間はない。一気に終わらせよう」

 

 

そして鷹診レイジが搭乗する巨大なドリルがついた飛行機能付き潜水艦・ゴウテン。

 

 

「ついにこの時が来たんやな……! うっしッ! 任せとき!」

 

 

最後に那須川マルオが搭乗する巨大なパワードリルが二つ付いた戦車・ランドマン。

 

 

「鷹診さん。俺をメインにしてやらせてくれ!」

 

「カイくん。気持ちはわかるがタイプ3のテストはまだ完了していない」

 

「でも!」

 

「それに今のキミではシステムのの数値を安定させることができるとは思えない。違うかい?」

 

「それは――ッッ!」

 

 

カイは言葉を飲み込んだ。

 

 

「……わかった。俺は、ゴジラを殺せればそれでいい」

 

「感謝するよ。ではいくよ! カイくん! ナスさん!」

 

 

三人は同時にボタンを押していく。

そこでゴジラからレーザーが放たれたが、三機は素早くスライド移動で光線を回避した。

さらにスターファルコンからレーザーが発射されてゴジラに向かう。

 

黒い霧が散布された。

ゴジラは一瞬でスターファルコンの真下に現れ、真上を向いてレーザーを発射しようと試みる。

だがその前に全身が爆発していく。ランドマンからも無数のミサイルが発射されていたのだ。

追撃にランドマンは二つのドリルを回転させて機体を跳ねる。

ゴジラの心臓があるだろう胸に向かっていったが、そこでゴジラはワープ。ランドマンの後ろに回ると、レーザーを発射した。

 

だが同時にゴジラの頭部が爆発した。

ゴウテンのドリル中央から発射された光弾が直撃して、衝撃で頭部の向きが変わったのだ。

おかげで放たれた赤黒い線は、ランドマンを逸れて地面に直撃する。

 

 

「ゴオオオオオ!」

 

 

ゴジラが尾を振るった。

しかし三機はそれを回避すると、そのまま変形を開始する。

スターファルコンが突出しているコックピット部分が機体に収納され、ランドマンもキャタピラ部分が変形して、ジョイント部分に代わる。

極星が放つ光のラインが三機を繋いだ。

スターファルコンが下半身に。ランドマンが上半身になったのを確認すると、鷹診が最後のレバーを引いた。

 

 

「「「チェンジ! タイタン!」」」

 

 

ゴウテンが折れて展開し、『首』ができた。

つまり頭だ。それがランドマンに繋がり、三機の合体完了を知らせる電子音が流れる。

 

 

『Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-type』

 

 

タルタロス、タイタンモード。

巨大怪獣に対抗するべく三機の極星を合わせて、さらなる高出力のエネルギーでの戦闘を可能にする形態である。

コックピットが連結し、正面から見て右にカイ、左に那須川、そして二人の前、中央部分にメインパイロットとなる鷹診が座っている。

完成したのは両腕のドリルと頭部のドリルが特徴的な、戦闘や移動などバランスの取れた形態。

タルタロス・タイプ1。

 

 

「合体完了! 『モゲラ』、発進します!」

 

 

バシュン! と音がして、モゲラが地面を滑る。

巨体でありながらも極星のエネルギーにより、常時ホバー移動を可能にしているのだ。

エアロスライドにより、一瞬でゴジラの前に位置をとった。

モゲラの右腕、ドリルの先がゴジラの胴体に食い込んだ。

 

 

「今だ! パワースパイラル」

 

「了解ィッ!」

 

 

那須川がレバーを引くとドリルが回転し、ゴジラが悲鳴をあげた。

カイは目を見開く。

 

 

「見ろ……! 見ろよ! なあ、見てくれよ! ほら! いたんだ! やっぱりいやがった! こ……、この野郎! 一体全体今まで、どこに隠れてやがったんだ! あぁ? ほら、見てくれよナスさん! 鷹診さん! こいつが! こいつが俺の家族をこッ、こ、殺しやがったんだ! くそっ! あぁ、クソッ!」

 

「落ち着くんだカイくん! ミサイルを頼む!」

 

「あ……! す、すまねぇ鷹診さ――」

 

 

衝撃を感じた。

ゴジラの体内放射を受けて、モゲラは吹き飛ばされる。

とはいえ、鷹診の操縦で地面に倒れることなく体勢を立て直し、すでに展開済みの左ドリルをゴジラに向けた。

 

 

「スパイラルグレネード発射!」

 

 

割れたドリルの中からミサイルが発射されてゴジラに向かう。

ゴジラは不動だった。当然ミサイルが命中するが、そこで目を疑うようなことが起きる。

ミサイルがなんのことはなくゴジラを『通過』していったのだ。

確かに胴体に命中したはずなのに、すり抜けるように貫通して、かといってゴジラにダメージが入ったような様子もない。

 

 

「どうなってんねん……ッ! おかしいやろ!」

 

 

尤もだ。

さらにゴジラは消えて、モゲラの背後に現れた。

しかし予想はできたため、鷹診は既にボタンを押していた。

モゲラの背中にある電磁ノコギリが高速回転すると、衝撃波・ショックフォースが放たれた。

 

ゴジラが霧と変わる。

すぐに距離をとったところに出現した。

一方でモゲラもゴジラと向き合い、胸部中央からパラボラアンテナ型の砲身を伸ばした。

ゴジラが背ビレを赤く光らせる中で、鷹診は素早く出力を設定する。

 

 

「プラズマメーサーキャノン! 発射!」

 

 

ゴジラのレーザーとモゲラのレーザーがぶつかり合う。

競り合うエネルギー、しかし徐々にゴジラの赤が、モゲラの銀を塗り物していく。

目を細める鷹診。するとそこで光線が飛んできて、加勢が入る。

 

 

「ぉぉぉ! なんや知らんけど助かったで!」

 

 

那須川が笑った。

ゼペリオン光線とメーサーキャノンはゴジラのビームを押していき、そして爆発が巻き起こる。

 

「……ッ!?」

 

煙が晴れたとき、ゴジラはどこにもいなかった。

 

 

「ッッ、どこに! 俺はここだぞ! おい! どうした? 殺し損ねた俺がここにいるんだぞ!」

 

 

カイはそう叫んでみたが、結果は同じで。

 

 

 




編集は全くしていないので、毎日投稿とまではいかないかもしれませんが、本文そのものはもう全部できているので、なるべく早く投稿していきます(´・ω・)b
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