ゴジラ バーニングブラッド feat.リバイス&トリガー   作:ホシボシ

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第8話    (後編)

 

もちろん、カイは断った。

ただそれはネムのことが好きじゃないからだとか、そういう目で見れないからというわけではない。

むしろカイはネムが好きだった。綺麗だとは思うし、煙たがれるところもかもしれないが、こういう性格の人は必要だと思った。

ただ、やっぱり――……。それをはっきりと口にしなかったからヘンテコな関係が続いているが、今なら口にできる。

 

 

「どうやら。俺の火傷は治ってなかったってなぁ」

 

「?」

 

「脳が今でも燃えてやがる」

 

「どういうこと? 苦しいの?」

 

「それすら怪しい」

 

 

ゴジラが二体いるのはわかったし、納得だ。

両親を殺したゴジラと神代坂に現れたゴジラは同じだと思うが、テネと一緒に育ったゴジラは見たことがない。

だったら、そういうことなのだろう。

それは当然だ。当たり前だ。

 

 

「なのにどうしてだか、納得がいってねぇ……」

 

 

テネといた『アイツ』が許せない。

憎悪が、炎が消えてくれないのだ。

どうか、ヤツであってくれと願ってしまう自分がいた。

そうか。そうなのか。カイは自覚した。

 

メイにも少し話したことだ。

美味いものを食ったり、楽しいものを見たり、好きな人と一緒にいたり。そういうことはきっと幸せだ。でも舌を火傷してるから味がわからないし、目を火傷してるから何も見えない。肌を火傷しているから、触れられると酷く痛むんだ。

耳からは今もアイツの咆哮が聴こえてくる。

手に入れても、すべて一瞬でゴジラが壊すなら、それは手に入れたとは言わない。

それはきっと、ゴジラがいなくなっても同じなんだ。

その概念が幸福を踏み潰す。

 

 

「俺はまだ、あの日の夢を視てる。病院で眠ってるんだ……」

 

「鷹診さんのお友達も似たようなものだったのかもね」

 

「前に進むのが怖いらしい。忘れようとしてもダメだ。忘れようとするほどに恐怖が強くなる」

 

「みんなそうよ」

 

「だけど俺はゴジラを殺すために生きてきた。そうすることでしか生きられなかった。だから殺すならどのゴジラでもいいのかもしれないって心がある」

 

 

復讐を遂げたとしても両親は返ってこない。

ましてや今、復讐心よりを超える恐怖がある。

ゴジラを追いかけてきたと思ってきた。でも違う。ゴジラから逃げていただけだ。

 

 

「どうすればいいかわかんねぇ、困っちまったな。へへへ……」

 

「カイくん……」

 

 

それだけじゃない。アンギラス、ラドン、モスラ、そしてインファント島。

そんなの知らない。そんなの届かない。人間の自分じゃ追いつけない。

 

 

「ゴジラだけ殺しても足りねぇよ……」

 

 

そこで人の気配を感じてカイは横を見た。

コーラを三つ持った一輝が気まずそうに立っていた。

 

 

「ごめん、なさい。聞いちゃってました」

 

『怪獣が出たら避難できませんので、アトラクションはほとんど運転を中止していますだって……』

 

 

悲しそうなバイスはまあ置いておいて、一輝はカイの傍に来た。

 

 

「カイさん。風呂! 入りましょう!」

 

 

風呂。そのままの意味である。

だからアンタレス本部に戻った二人は大浴場のお湯の中で肩を並べていた。

 

 

「……どういう風の吹き回しだ?」

 

「人間、どんなことがあっても熱いお風呂につかれば復活できるんです」

 

「はは、本当かよ……?」

 

「オレ、銭湯やってる家の長男で。あ、しあわせ湯っていうんですけど」

 

 

ただのお風呂屋さんが悪魔と戦う仮面ライダーになってしまった。

 

 

「はじめは銭湯があるから弟に任せようと思ってました。一応、オレなりに弟の――、大二っていうんですけど、アイツのことを考えてたつもりなのに、どうにも上手くいかなくて」

 

 

ブチギレられたと苦い顔する。

 

 

「でも今は、世界中の人を悪魔から守るために戦ってます」

 

「ああ、それがいいかもな。アンタの力は特別だ」

 

「そう、やっぱり仮面ライダーは特別で。いろんな人を見てきました」

 

 

仮面ライダーを祈る人たち。

仮面ライダーだから助けられた人がいて、仮面ライダーだから恨まれた。

 

 

「みんな力を望んでる。変身したいから」

 

 

でも、少し違う。

確かに仮面ライダーだから変われたけど、仮面ライダーが変えたんじゃない。

やっぱりそれは仮面ライダーが齎した人間関係、それを受けて自分が変わったんだ。

悪魔もライダーも同じ仮面。つけてる人間が変わらないと、大した変化は齎されない。

 

 

「ウルトラマンも、タルタロスでしたっけ? あのロボット。あれもライダーと同じなんですよ」

 

 

一輝だってベルトがなければただの人間だ。

ケンゴもスパークレンスがなければウルトラマンに変われないと言っていた。

 

 

「でもオレたちはきっと……」

 

 

カイだって、スターファルコンの搭乗者になるために努力してきたはずだ。

その原動力が復讐心であったとしても、その技術を獲得した。

その事実は揺るぎのないものだ。

 

 

「アンタレスは、世界の人を守ることができる場所ですよ」

 

「……ああ」

 

「自分がどんな存在かは、自分が決めることができる」

 

 

たしかに、すぐに壊れてしまうものなのかもしれない。

 

 

「でもだからこそ、守るために戦うことができる」

 

「……ッ!」

 

「貴方にもオレと同じ力がある。いつかの自分を超えることができる」

 

 

蝕もうとしているのだろう。自分の中にある悪魔が今も。

しかしそれを超えることも、受け入れて、共に戦うこともできる。

 

 

「他人のために戦うのも、悪くないっすよ」

 

「……かもな。ワリィな、なんか。気を遣わせて」

 

「いえいえ。オレ、日本一のおせっかいですから」

 

「はは……、いいキャッチコピーじゃん」

 

「そうだ! ちょっと思ったんですけどココの大浴場、脱衣所に自販機ないですよね? 絶対置いたほうがいいですよ! 風呂上りの牛乳は最高なんだから!」

 

 

一輝の笑顔に釣られてカイも笑みを浮かべた。

しかしそこで、メイが服を着たまま入ってきた。

その表情は深刻だ。

 

 

「大変です! インファント島が!」

 

 

時間は巻き戻る。

ビーナスたちが空を見上げていた。

そこには巨大な船があった。三日月のように湾曲した形であり、その先端が光ると赤いレーザーが発射されて木々を爆発させて大地を吹き飛ばす。

ビーナスたちは悲鳴をあげて地下のほうへ避難していった。

 

 

「キュォォン!」

 

 

そんな彼女ら頭上を、モスラが羽を広げて飛んで行った。

触覚からジグザクな軌道で飛んでいく『ソディウム光線』を発射して船を落とそうと試みる。

しかしそれが命中することはなかった。

突如として赤い光線が飛んできて、相殺したのだ。

飛行してくるのは紛れもない怪獣だった。

 

 

『キシィイイ!』

 

 

金切声と電子音が混じった鳴き声。

両手には大きな鎌があり、腹部にはノコギリがあった。

彼らの兵器である"ガイガン"は、モスラとぶつかり合い、羽を切断しようと鎌を振るった。

 

 

「まったく。こんなところにあったとは」

 

 

インファント島、祭壇。

島長とテネが後ろに下がっていく中で、黒いコートと、サングラスを身に着けた集団が進んでいた。

数は五人。大柄の男、"パンチマン"。

銃を持った女、"ガンナー"。

剣を持った男、"ソードマン"。

シルエットが人間ではない。まさに正体不明、"モンスターX"。

そしてそれらの前に、リーダー各の男が立っている。

 

 

「どうしてこの場所が!?」

 

 

テネは焦っていた。

インファント島には簡易的な結界が施してある。

敵意や殺意を強く持ったものには見えなくなるような仕掛けだ。

たまたま迷い込んだならまだしも、狙って攻めてくるなんてできない筈なのに。

 

 

「案内してもらったのだ。キミにね」

 

 

そこでテネの背中の一部が赤く点滅した。

点滅はテネから離れて男の指先へ戻る。

テネのサイズですら資格できないほどの小さな小さなナノロボット、これが発信機としてインファント島の場所を特定したのである。

 

 

「私の名前はバイラス。"X(エックス)星人(せいじん)のバイラス"と覚えてくれ」

 

「異星人ね……ッ、目的はなぁにっ!?」

 

「この場所を我々の拠点にし、支配下に置く」

 

「そ、そんなの――」

 

「スマートに終わらせたい。キミが利口ならば死人は少なくて済む」

 

 

テネは目を細めた。

この祭壇がある場所はインファント島の中でも、特別なパワースポットである。

テネの力も増すために、いろいろなことができた。

たとえばあの時のように、遠く離れたメイへコンタクトをとることもだ。

 

 

『どうしてこの場所が?』

 

 

テネがバイラスにそう聞いた時には、既に"メイの脳裏"にこの光景を映し出していた。

 

 

「どうすればいいの!?」

 

 

メイが問いかけた。

テネはお守りを渡した時と同じように、メイをインファント島に召喚する方法がベストだと説いた。

しかし向こうは異星人。メイでは太刀打ちができないだろう。

そこで一計を案じる。

 

 

『お守りはまだ持っててくれてる?』

 

「もちろん!」

 

『それを一輝さんたちに渡してほしいの』

 

 

お守りを使えば一輝の精神を引っ張ってこれるという。

つまりリバイスドライバーを持ったメイを召喚して、一輝の精神を肉体へ憑依させればいいと。

 

 

『やったことないけど、がんばるもん!』

 

「わかった!」

 

 

ということなので、メイは一輝がいる大浴場にやってきたということだ。

一輝はすぐに脱衣所にあったリバイスドライバーと、無数のバイスタンプをメイに渡す。

 

 

「でも大丈夫かな? 精神がオレになるとはいえ、リジェクションが起こる可能性があるんだ」

 

 

聞けば、かつて変身に失敗したおじさん(28歳)がいるらしい。

そうなると悪魔が生まれて、返って不利になる可能性がある。

その点に関してはテネもやってみなければ、わからないという。

 

 

「お願いします!」

 

 

メイは即答した。

一輝は彼の目を見て、強く頷いた。

 

 

「お願い! テネ!」

 

『任せて! いくよっ!』

 

 

光が迸った。

テネの前にメイが着地する。

さらに光が迸った。精神が憑依し、メイの姿さえも変わる。

 

 

「フハハハハハハ!」

 

「!」

 

 

立ち止まるX星人たち。

 

 

「破壊と創造が繰り返されるこの混沌の時代! まったく新しい仮面ライダーが誕生しようとしていた!!」

 

 

バイスが顔を上げた。

 

 

「ヒーローは、悪魔と契約する!!」

 

 

今度は逆に、X星人たちが一歩後ろへ下がる番だった。

 

 

「行こうぜ、一輝!」

 

 

バイスは右を見た。

 

 

「あんれ?」

 

 

無。

 

 

「え? 一輝?」

 

 

誰もいない。返事はない。

 

 

「あれ? え? やだ。ちょっと、ねえ、一輝?」

 

 

返事はない。

 

 

「一輝ーっ?」

 

 

返事はない。

 

 

「一輝ちゃーん! ママよー!」

 

 

返事はない。

 

 

「嘘嘘! おれっちだよ! バイスだよーッ!」

 

 

返事は――

 

 

「答えてよ一輝!!」

 

 

返――

 

 

「やだああああああああああああああああ!」

 

 

失敗しました! と、テネの声が響く。

一輝はいまだに脱衣所にいる。

つまりテネがメイに憑依させたのは、一輝の中にいたバイスだったのである。

しかもリバイスドライバーだけは向こうにいってしまったので、非常によくない状況だった。

 

 

「ちくしょー!」

 

 

実体化はできてる。

バイスは腕をブンブン振ってバイラスに殴りかかるが、拳を払われ、受け流され、逆に裏拳で顔を殴られた。

 

 

(もう一人呼べないの!?)

 

 

メイはそういうが、テネは汗を浮かべていた。

インファント島に召喚できるのは、カイザーの資格を持つものか、あるいは地球のエネルギーを得た怪獣に対する強い想いを抱いたものだ。

アンギラスやラドン、モスラは人間との関係がない。

ゴジラだってそれは同じだ。メイくらいなものである。

 

 

「それはマイナスの感情でもいいのか?」

 

 

その時、視線がカイに集まった。

 

 

「どんだけアイツのことを考えてきたと思ってんだ!」

 

 

テネは戸惑った。

復讐心、それが凄まじいエネルギーを生むことは知っている。

確かに、カイならば召喚は可能かもしれない。

しかし彼自身が言っていたようにそれはマイナスの感情。それをインファント島に招き、この祭壇の場に招いていいものか。

 

 

(どうなんだろう? どうしたらいいんだろう?)

 

 

するとメイの声がテネの頭に響いた。

 

 

(信じよう! キミがまだ彼を信じられないなら、僕を信じて!)

 

 

テネは頷いた。すると、カイの慌てた声が聞こえる。

 

 

「悪い! ちょっと待て! 待ってくれ!」

 

 

カイは見つけたのだ。

ひょっこりと、ネムが脱衣所に顔を出している。

理由は二つあるのだが、まずはなにやらメイが血相を変えて脱衣所の方へ入っていったものだから、純粋に気になったため。

もう一つは……、まあ詳細は伏せよう。語るほど中身はない。

よこしまな思いだ。

 

 

「ネムさん。それは!?」

 

「え? これ? あぁ、コーヒー牛乳。下の売店で売ってたの。二人の分もあるから飲む?」

 

「ネムさん。アンタ、最高のタイミングだぜ!」

 

「あら本当? だったらいいのよ。うふふふ眼福」

 

 

いや、まあ、このタイミングでやるべきことではない。

しかしそれでもカイにとっては重要だった。

カイはネムからコーヒー牛乳を受け取ると、蓋を開けて――

 

 

「腰に手を当てて!」

 

 

一輝に教えられたとおりにして、一気に飲み干した。

 

 

「どうですか?」

 

「うめェな……! 染みるぜ!」

 

「はい!」

 

 

そこでカイはインファント島に立っていた。

見ればモンスターXがテネを掴み取っていた。

手に力を込めると、テネが苦しそうに呻き声をあげる。

さらに殴られて蹴り飛ばされているバイス。

まずいな。まずいだろう。誰だってわかる。だからカイは走った。

なぜ走る? 誰かが問いかける。

 

 

「憎しみを終わらせに来た!」

 

 

光が迸り、カイの姿が一輝に変わった。

 

 

「ハァア!」

 

 

飛び蹴りがモンスターXの肩を打つ。テネは解放され、飛んで逃げていった。

 

 

「一輝ーッ!」

 

 

バイスがドライバーとバイスタンプを投げる。

一輝はそれをキャッチすると、並び立つ侵略者をにらみつけた。

 

 

「なんだ? さっきから。こっちはスマートに終わらせたいのだが……」

 

「終わるさ。ただし、オレたちの勝ちでな!」

 

 

一輝はリバイスドライバーを腰へ押し当てるとベルトが出現して腰に固定される。

体の感覚を確かめるように。指を一本一本動かしていった。

 

 

「わいてきたぜ……!」

 

 

そしてバイスタンプを突き出し、起動させた。

 

 

『レックス!』

 

「ハァー……!」

 

 

一輝はバイスタンプを口元にもっていき、印面に息を当てた。

そして一気にバイスタンプをオーインジェクターに押し当てる。

 

 

「フハハハハハハーッッ!」『カモォン↑↑』『レ・レ・レ・レックス↑↑↑』

 

 

響き渡るバイスの笑い声。

体を捻り、そしてゆっくりと両腕を伸ばして旋回させていく。

 

 

『カモォン↑↑』『レ・レ・レ・レックス↑↑↑』

 


 

んもう! 遅いぞ一輝!

めちゃヤバかった!

 

わるい わるい

でも間に合ったんだからいいだろ?

さあ、あばれてやろうぜ!

 

怪獣ちゃんたちはデカすぎてアレだったけど。

コイツらだったら敵じゃないぜ! マジで!

ぶっとばしてやるからな!

 


 

『カモォン↑↑』『レ・レ・レ・レックス↑↑↑』

 

 

繰り返される電子音。さらに後ろへ表示されていく謎のメッセージ。

X星人たちは呆れたように笑みを浮かべて様子を伺っている。

そんな中、一輝が腕を戻す。

さらに左手を大きく開いて『五』本の指を真っすぐに伸ばした状態で腕を『十』字に組んだ。

 

 

「変身!」

 

 

バイスタンプをスロットに装填し、横に倒してロールさせる。

しかしそこでガンマンが動いた。

光線銃を抜くと、エネルギー弾を発砲して一輝を狙う。

 

 

『バディー↑ アーップ↑』

 

「ッ、何!?」

 

『オーイング↑ ショーニング↑ ローリング↑ ゴォーイング!!』

 

 

バイスが飛び上がり、巨大なハンコ型のエネルギーで一輝を押しつぶした。

すると透明なハンコの中に一輝が入ることになり、そこへ光弾が命中していく。

弾丸はハンコを貫けない。そうしていると、ハンコが弾け飛んだ。

 

 

『カ・メ・ン・ラ・イ・ダー↑』

 

 

複眼が光る。

同時にバイスも恐竜のフードを装着し、着地する。

 

 

『リ・バイ! バイス! リバァーイスッ↑!』

 

 

仮面ライダーリバイ。仮面ライダーバイス。

リバイの左腕を、バイスが右手で叩く。

続けてリバイの左手と、バイスの左手がタッチ。

最後にリバイの拳をバイスが右手で受け止めた。

そこで二人の背後に一瞬、仮面ライダーの紋章・ライダークレストが光り輝いた。

 

 

「イッキにいくぜ! バイス!」

 

「オッケー! おれっち暴れまーすッ!! フハハハハハ!」

 

 

"仮面ライダーリバイス"が、変身を完了させて走り出した!

 

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