コミュ障がリボーンの世界で頑張る話   作:酉野笹実

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コミュ障な私

異世界転生やトリップは正直、私には関係ないものだと思っていた。

 

 

私は月森 早恵。引きこもり、ネクラ、オタクの三要素をもったどうしようもない廃人で、生来、体が弱いせいか病院に入退院を繰返して、まともに学校に行ってないせいか、リアル友達に恵まれたこともなく、パソコン越しでないと、人とのコミュニケーションができない大学生(通信)になっていた。

 

相棒はパソコンだが、もちろんクラッキングや、ハッカーなんてできない。良くて2chで掲示板荒らしがハイスピードでできるぐらいのタイピング力はある程度だ。

 

趣味はタロット占いとオンラインゲーム。MMOの古い友人は私を「タロットの貴腐人」と呼ぶ。あ、ごめんなさい嘘です、ほんとは「ゾンビちゃん」です。脳ミソ腐ってるから人間扱いしてくれません(泣)。

 

 

親にも随分、迷惑をかけたよなあー…

 

そんなおり、私は死を迎える。

 

死因は思い出せないが、たぶん病死だとおもう…うーんはっきりしないなぁ。

 

 

とにかくだ。私は死後、冥府の死者受付の鬼さんと出会うことになる。

 

鬼徹の鬼灯様はやはり居なかったが、目の前の死者受付係のお兄さん…いや、鬼さんも中々のスーツが似合うイケメンです。

 

 

「て、て転生?」

 

「ええ、貴方のような魂が欠けた者は極楽地獄だと判断されるまえに転生する決まりになっています。」

 

「…ど、どいうことで?」

 

「つまり、前世の貴方の人生が短かったのは、魂を精製するさいに欠陥が生じたからです。それら欠陥魂は十王の審判を受ける際に木っ端微塵に壊れる可能性があるのです。」

 

「え、ええと…グラスに熱湯を、そ、注ぐ

みたいな?」

 

「そう言うことです。十王の審判は時間もかかる上に、魂を弄られます(舌を抜いたりなど)。まともな魂でさえ壊れそうなのですから、欠陥魂をもつ人間は余計に審判を受けられません。再度異世界で転生し、欠陥部分を修復する義務をもつのです。本来なら貴女は子供のうちに死んで債の河原に行き、石山築きあげてから転生するんですが…成人してますし十王の審判を受けるために…異世界で人生やり直しと言うことになりました。」

 

「…(成人してて良かった!)」

 

「因みに、欠陥魂をもつ方には異世界転生後に特典がつきます」

 

「と、っ特典が?」

 

「はい。もし、戦争真っ最中の世界で即死されて、魂が修復されないまま帰られたら困るので 、護身能力を付随します。」

 

「うぇええ!?転生場所はえ、選べないんですか!?」

 

「異世界は異世界ですから。ファンタジーな世界もあれば、貴女の前世と似た世界もあります。ドンパチしている戦争まっただ中の世界もあります。貴方はそこで、少なくとも80歳以上は生きてください。」

 

「は、80歳、ですか?」

 

ながっ!とツッコミをいれたが、鬼さんの顔は真顔だ。

 

 

 

「はい。魂の修復は時間がかかりますからね。ああ、護身能力は何にしますか?先に転生された方はチート能力を漏れなく付与されますが。」

 

「い、いきなり…言われても。」

 

「…では、こちらで適当に決めて宜しいですね?」

 

「あ、出来れば私が知る能力で…。」

 

そう言うと鬼さんは「ふむ、了解しました。」とにやりと笑って紙に難かを書き足している

 

 

不安だ。

 

 

そんな訳で、気がついたら2LDKの見知らぬマンションでした。

 

ナニコレ。

 

机の上には銀のアタッシュケースと、日記帳、手紙が乗っかっていた。

 

 

まずは、手紙から。

 

 

《月森早恵様

 

これを読んでいるころ、転生されて混乱されているかと思うので説明いたします。

 

貴方は現在、13歳の少女として転生しております。

 

良かったですね。あんなに行きたがってた中学にいけるんですよ。闘病で青春時代を楽しめなかった貴女のために肉体を若くしてみました。》

 

 

いや、今さら中学生になりたくなかったんですけど。

 

 

《現在、貴方の両親は半月前に事故で亡くなり、貴方はこのマンションのオーナーをしている親戚に引き取られたと言うことになっています。あ、安心してください。その親戚も、貴女の両親もただの架空の人物です。》

 

「…それってどうなの。」

 

《実はこのマンションは異世界に複数ある冥府関係者専用マンションで、マンションの持ち主は閻魔大王です。マンションの家賃や、光熱費は安心してください。》

 

「さようで…」

 

 

《…生活費・学費ですが、貴女が大学卒業するまで、こちらでの支給となります。》

 

 

「え、そこまで…」

 

《…誤解しないよう書き加えて置きますが、こちらはツケです。貴女が働けて仕事につけたら少しずつ返して貰います。我々が本来、貴女に用意できるのは身元と住むところまでです。》

 

…人生はそう甘くなかった…。まあ、そうだよね。

 

《さて、貴女につけた能力ですが、アタッシュケースの中にありますので、確認お願いします。》

 

 

私はその文章に嫌な予感を感じる。

 

卓袱台の上の鈍い銀の光を放つそれを、ごくりと唾を飲み込み、開けると。私は直ぐにアタッシュケースの蓋を閉じた。

 

 

「……。」

 

だらだらと、嫌な汗が流れだす。

 

 

いやね、確かに知っているやつだよ?

 

でも何故ここに?

 

 

 

アタッシュケースの中にはS.E.E.S.と書かれた拳銃に似た某ゲームの召喚器

 

 

Special Extracurricular Execute Sector

 

和訳だと特別課外活動部。大人気ゲームペルソナ3の主人公達が使うそれ、そのままで、私はその横に置かれた契約者の鍵をみて、固まった。ベルベットルームに行けるのだろうか?

 

 

…ここはペルソナの世界なのだろうか?

 

 

確かに知っている能力だが、もしかして本物の拳銃かもしれないし、何かのコスプレの小道具かもしれない。

 

びびりの私がこれを頭につけて「ペルソナ~!!」と叫びながら、目をカッとする人にはなれない。確実に私がやれば中二病こじらせた人みたいになるのは間違いない。

 

…あの鬼さんは私に黒歴史を刻ませたいらしい。

 

何故にペルソナ3!?と考えるも謎が深まるばかりで、私は頭を抱えたくなる。

 

暫く考えたが仕方なく、諦めて、アタッシュケースには召喚器の他に、説明書みたいのがあったので読んでみた。

 

 

《これを読んでいる頃、何故にペルソナ3?と思っているころでしょう。なので、ご説明します。

 

その召喚器とベルベットルームの鍵は本物です。私の方でイゴール氏と契約を結んで置きます。》

 

何故か契約されとる!?

 

《貴女の能力は貴女のゲームのやりこみ度で決まります。つまり、ペルソナ全書は貴女のデータベースどおりです。》

 

 

マジか。私…ペルソナ3、4超やりこんだんですけど。

ジャックフロストとかレベル99だよ!?

 

 

《貴女が使役できるペルソナは3、4。召喚器がなくとうにタロットをパリーンとさせる方法もできますが、召喚器があれば、安全にペルソナを制御できます。

 

ただし、貴女の今、使えるペルソナはひとつもありません。

 

ワイルドの力は、この世界の特定の人間とコミュニケーションがとれた場合、ひとつずつ開放されます。》

 

「やられた…。」

 

つまり、鬼さんは私のコミュ障を治すべく、あえてペルソナ能力を選んだようです。

 

《メザセ!脱、コミュ障!》と書かれたメモに泣きたくなった。

 

最低でも22人とお友達にならねばならないらしい。

 

鬱だ。友達はネットではいるが、リアルでは皆無だ。

 

どうしろと?

 

私は大きなため息をついた。


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