ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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チーム・ヘクトン③

 ほどなく、オラシオンの面々が現場に到着し、近場であるヴァレスにも動員がかけられ、周辺は怪我人の手当てや後片付けで人々がごった返していた。

 

 ジャックたちは力仕事が専門という事で、邪魔になるがれきや木材の運搬に駆り出されていた。ジャックは息も切らさなかったが、ダニエルとナルシェはひいひいと嘆息し、ジャーバスに至っては途中で吐いてあえなく怪我人らに並んで寝かされていた。

 

「ジャ、ジャックう、休憩しようよお」

 

「んあ? じゃ、そうすっか」

 

 ダニエルの泣きが入り、3人は木蔭に座り込んだ。

 

「ナルシェは無茶するなよ?」

 

「はあ……はあ……へ、平気だよ」

 

 病に臥せった時間が長かったためか、ナルシェは体力的に一段劣っていた。それでも、戦士ギルドの入隊試験を突破した当たり、並々ならぬ努力を重ねたことも見て取れた。

 

「ハロー、テアトルのみんな~」

 

「ご苦労様です」

 

 ジャックらに、サイネリアとフローラが飲み物を運んできた。モーフ医院の受付嬢と、『神の手』と称される医師を父に持つ、オラシオンの司祭長を務める少女たち。二人とも、かつてジャックの仲間として数々の冒険に同行していた。

 

「ジャックさんたら、戻ってきたらまず私のところへ挨拶でしょ?」

 

「あ~、そのつもりだったんだけど色々さ」

 

「もうっ、いけずねっ」

 

「お元気そうでなによりです」

 

 飲み物を渡しながらフローラが言う、先ほどジャックが顔を出した時にはできなかった挨拶を、ようやく出来るのが嬉しそうだった。

 

「ちゃんとご飯を食べてますか? 怪我はないですか?」

 

「大丈夫だよ」

 

 照れくさそうにジャックは返した。フローラはジャックが、正確には騎士団をクビになって、テアトルに所属したての頃からの、いわば古株の仲間であった。未熟なジャックを、その医療の腕と神の奇跡で幾度となく救った。

 自然と、そのやり取りも当時に近いものになる。

 

「あ、あの、フローラさん、ぼく、ちょっと腕が痛いような気がするかも」

 

 そこにダニエルが割り込んできた。恋多きダニエルは、『ビギン食堂』のウェイター、ユーリを筆頭に、好意を抱いた女性にはてんで弱かった。

 

「そーか、そーか、じゃあ、治してやんねえとなあ」

 

「ひっ、ビ、ビシャス⁉」

 

「おらおら、モンク式指圧だぜダニエルくんよお」

 

「あいたたたたた!」

 

 邪まなダニエルの目論見は、いつの間にかその背後に立っていたビシャスによって潰えた。男勝りなモンクの少女ビシャスによって、ダニエルはこってりと油を絞られる羽目になった。その傍には、困った顔をしたミランダもいた。

 

「ジャックさん、こちらでしたか」

 

「よ、ミランダ」

 

「お伝えしなければいけないことがあるんです、さっき―」

 

「ジャック、ここだったか」

 

 騎士たちを従えて、おかっぱ頭のひげ男がジャックらの前に現れた。騎士にして、ジャックの先輩でもあったレナードだ。部下の中には、チャーリー、ニーナの姿もあった。

 

「おっさんじゃん」

 

「おっさん言うな! 全く、探したぞ」

 

「なんか俺よく探されてんな……で、どしたの?」

 

「ラークス様がお呼びだよ。至急、城に来るんだ」

 

「ラークスさんが? ……う~ん、でもさ、俺たち今依頼の真っ最中なんだよね」

 

「ああ? お前なあ、宰相閣下の呼び出しと依頼、どっちが大事だと思ってるんだ」

 

「だって、依頼の途中放棄は良くないもん」

 

「行ってこい、ジャック」

 

 先刻よりは薄まった青い顔のジャーバスが、よろよろと歩いてきて言った。

 

「後は俺が引き継いで報告する、魔物は倒したし文句はないだろ」

 

「え~、でも隊長報酬金でツケ払ったりしない?」

 

「するか! ……レナード殿、相変わらずな奴ですが、よろしくお願いします」

 

「あれ? 顔見知り?」

 

「うほん、一応『紫色山猫騎士団(ヴィオレシャソバージュ)』隊長だからな」

 

「え? おっさんが? ナツメは?」

 

「ナツメ様が、現在の将軍の地位についていらっしゃいます」

 

 ニーナが誇らしげに言う。

 

「ま、ともかく来い、ここは―」

 

「トールビーストだあー!」

 

 悲鳴とともに、獣の咆哮が響き渡る。

 トールビーストが、今まさに逃げ惑うヴァレスの教員たちに襲い掛からんとしているのだった。

 

「りゃあ!」

 

 『神槍パラダイム』の投擲は、トールビーストの上半身を抉り、消し飛ばした。かろうじてその動きを目で追えたのは、フェルナンドらモンクマスター数名であり、他の者はトールビーストへ反応するのもやっとの刹那の出来事だった。

 

「随分魔物が多いんだな……ま、フェルナンドたちがいるなら平気かな。それじゃなみんな、ちょっと行ってくる」

 

 呆気に取られているレナードの肩をジャックが叩いた。

 

「どしたんだよ、おっさん?」

 

「お、おっさん言うな……あれは、お前がやったのか?」

 

「ん? ああ、そうだけど」

 

 レナードは内心で戦慄していた。なまじ腕に覚えがあるだけに、この青年の力のすさまじさが計り知れないものだと認めざるを得なかった。新米騎士、戦士、そして『龍殺し』。かつての生意気なだけだった少年は、底知れぬ怪物へ今も尚成長し続けているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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