ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

101 / 158
強さと心

 アスターの料理(味はともかく、衛生観念と調理環境に不安がある)を腹に詰め込んだあと、城を去ろうとしたジャックは、ガンツが戻ってきていることを思い出して、挨拶に出向こうとした。

 

 だが、かつて彼の部屋だった空間は消滅しており、どこにもその姿が見えなかった。途中、女子トイレから出て来たチャーリーに問うと。

 

「ご実家におられるのでは?」

 

 との答えに、ジャックは間抜けな顔を晒した。何となく、ガンツはこの城で生活していると思い込んでいたのだが、よくよく考えれば『西方獅子』の名を持つ四大貴族でもある、実家があるに決まっていた。

 

「あのさ、隊長のお母さんって、どうしてる?」

 

「さあ……私もそこまでは。ご存命とは聞いてますけど、ご高齢ですしあまり人前には出られないのでは」

 

 ジャックは、チャーリーに礼を言って別れた。

 

 ガンツに対する思いは複雑なものがあった。個人としては、気さくで尊敬できる隊長である。

 

 だが、その父ガウェインは、親友であるジャックの父ケアンを殺し出奔した罪人とされている。それを切っかけに、『西方獅子』家は勢力を落とし、両騎士団は解体された。

 

そして、戦争の最中、ジャックはガウェインと邂逅し、幾度かの邂逅の後、果し合いとなった。

 

『花翁林』と『龍殺し』の決闘は、少年の勝利に終わる。だが、去来したのは歓喜でも達成感でもなく、徒労と違和感だけだった。

 

本当に、ガウェインは父を殺したのか? その答えはついぞ得られなかった。真実を知る機会は、永遠に失われてしまった。

 

 だが、ガンツは父との因縁に、少なくとも自身は決着をつけた。

ラジアータを出る際、手紙でそうジャックに伝えた。それは、力とは別種の強さだと、彼には思えた。

 

 また、すぐに会える。そう呟いて、ジャックは城を後にした。

 

 

 城門を出て、街をぶらつこうと思い至ったジャックだったが、やはりまだ体が本調子でなく、雑貨屋『黒薔薇』で小休止を取っていた。

 

「居座るんじゃないよ、クズなんだから」

 

「アイテム選んでんだよ」

 

 店主のローズほど、客商売に向かない性格の持主は存在しないだろう。美人だが、口の悪さはアルと引けを取らない。品揃えと美貌、そして一部の者に受けがいいのか、今日まで店は存続しているようだが。

 

「お、タイミングいいな」

 

 そこへ、『ヴァレス』のフェリックスが入って来た。瞬間記憶能力を持つ優秀な魔術師で、女性と見まごう美貌から、『男性の』ファンクラブが存在する程だ。

 

「ジーニアスがお前を探してたぞ」

 

「え? あいつ、『ヴァレス』にいんの?」

 

「ああ、今ならまだ、中にいるはずだ」

 

「ふ~ん、サンキュ」

 

 向こうから用があるとは珍しい、ジャックは『黒薔薇』を出、学院へと足を向けた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。