「あ、ジャ、ジャックさん……」
「久しぶりね」
『ヴァレス』の門をくぐった途端、レオナとマリエッタに出くわした。
「おっす、ジーニアスどこ?」
「お、お兄ちゃん、ですか?」
「教授室じゃない?」
「そっか……ありがとな」
「あ、あの、お兄ちゃんのところに行くなら、い、一緒、に……」
「なんだ、レオナも用事あんの? じゃ、いこっか」
「あたしも行くわ」
かくして、3人はジーニアスを探し学院を歩み出した。
そして、当然の如く迷った。
「あれれ? ここはどこかしら」
「てか、『ヴァレス』の外じゃねえか⁉」
「こ、ここって、『ヴォイド』の……」
「……何してるんだい、アンタ達」
教授室を探して右往左往、途中、デレクに場所を聞くもさらに迷い、倉庫や天井裏を徘徊した挙句、何故か『奈落獣』に迷い込んでしまった。イリスが不審な目で3人を見ている。
その後も迷いに迷い、離散、再集合を経て、ようやく教授室にたどり着いたときには、日がとっぷり暮れていた。
「ん? おい、どこで油を売ってたんだ。僕の貴重な時間を浪費して、探してたんだぞ……レオナ? どういう組み合わせだ?」
「俺が聞きてえよ……」
「あ、脚がパンパン……」
「今日はよく眠れそうね」
ジャックはしげしげと教授室を見回した。他の教室とは違って、工場か研究室といった様子だ。
モルガンとアーシェラもいて、なにやら黒板に書かれた複雑な方程式を前に議論を重ねている。脇に積まれた山は、よく見ると『JACKシリーズ』の残骸だ。
「何やってんだ、あれ?」
「最新式ゴーレムに、お前が着ている鎧を装着させる実験だ」
「ふーん? っていうか、鎧を脱がせる研究は⁉ 俺、これ着っぱなしなんだけど」
「知らん」
「っ、こ、この……」
「それより、僕の用だ、お前に話しておくことがある」
「なんだよっ」
「アルガンダースについてだ」
思わず、居住まいを正すジャックだった。
アルガンダース、元は、古代エルフ王が統治した王国の古城の名。なのだが……その後、名を冠した事象が複数確認されている。
一つは、不老のライトエルフたちに死をもたらす病。ダークエルフの族長、ノゲイラ、その弟ザインが魅入られている。意識を伝える『魂継ぎ』が封じられ、最後は苔に似た繭に包まれ終焉を迎えてしまう。
一つは、人間を凶暴化させる病。戦争初期からラジアータでも流行し、シーラ等、ジャックの知り合いも冒された。
ただ、その詳細は未だ解明されていなかった。ノゲイラは、人間たるリドリーへ『魂継ぎ』を行ったことで、『穢れ』を得たために罹患したとされている。一方、ザインはそれに当てはまらない。
人間に感染する際も、症状は共通しているとして、感染経路、
感染方法、治癒の条件、再発、免疫等の存在など、不明な点が多すぎた。病自体が戦争終結と同時に消滅したため、研究の仕様もなかったのだ。