ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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花火大会②

 

「……」

 

「……」

 

 数刻、フラウとエレナの気まずい沈黙は続いた。

 

 どちらともなく、先に目をそらした方が負けと、つまらない意地が先行したのだ。

 

 ぶつかる視線が発する殺気が周囲を満たしていき、通りがかりの野良猫は悲鳴をあげて逃げ出し、出勤途中のローレックが怯えて家へと逃げ帰った。

 

「あら?」

 

 均衡を破ったのは、ジャックの家から顔を出したエアデールだった。

 

「あなたたちは……?」

 

「あ、す、すいません、ジャックさんはいらっしゃいますか?」

 

「ちょっと用事があって」

 

「ごめんなさい、朝早くにどこかに出掛けちゃったのよ」

 

 エアデールは声を潜めた。

 

「あの子、何かまたしちゃったの?」

 

 思わず、エレナとフラウは顔を見合わせた。

 

「今日はお客さんがいっぱい来てるのよ。それから手紙も、悪い事じゃないといいけど……」

 

 玄関わきに、詰まれた手紙の束が見えた。いずれも、女性らしい装飾が施されている。

 

 二人は確信した。

 

((先を越された……!))

 

 

 花火大会開催の告知後、一部の人々の間で沸き起こる欲求があった。

 

 意中の相手と一緒に行きたい。

 

 これまでの花火大会でも、恋人同士で連れ立っている様はありふれた光景だった。自然な流れである。

 

 問題は、基本的に恋人を構成しているのは、当人と相手を合わせて二人である、という点だった。

 

 つまり、AがBを好きだとして、一緒に花火を見るということは、AとB二人きりでの状況を指す。ここにCという人物が混じってはいけないし、AとCが一緒に花火を見ても、Aの願いは満たされない。

 

 故に、AはBを誘う。が、Cも同様にBを誘いたがっていたらどうなるだろうか? ばかりか、D,E、もBを誘っていたら?

 

 BがAを選べば、C、D、Eの願いは叶わず、組み合わせが異なっても、誰かは涙を呑まねばならない。当然のことだ。

 

 しかし、こと恋愛感情が絡むと、単純には済ませられない。

 

 ラジアータ王国、戦勝記念花火大会において、その単純には済ませられない大事件が起ろうとしていた。

 

 渦中の人物は、『龍殺し』ことジャック・ラッセル。以前よりは大人びて思慮深くなっているが、基本的にはお気楽で元気いっぱいの青年だ。

 

 彼は過去、そして今に至るまで、多くのギルドの女性と友誼を結んでいた。時に悩みを解消し、時に実力を見せつけ、時に要求に応えて。

 

それは彼女たちの力を、依頼や冒険達成のために貸して欲しかったためであり、好感はあっても好意のためでは決してなかった。

 

だが、当人の想いと、先方の想いは必ずしも一致を見ないことが多々ある。

 

日々の任務で、彼は仲間を気遣い礼を忘れず、善性を失わなかった。戦争では多くの出会いと喪失による痛みを経て、少年は『龍殺し』となり、より人として成熟していった。

 

 共に過ごす中、淡い思いを抱く仲間達が現れた。しかし、戦争終結後、ジャックはラジアータを去ってしまった。月日がたつごとに、淡い思いは、いつの日にか思い出す、懐かしき日々の一部に収まっていった。

 

 が、ジャックは戻って来た。思いは再燃し、この機を逃すまいと、仲間たちは行動を開始したのだった。

 

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