ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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花火大会③

 行動といっても、要するにジャックへ『花火大会へ一緒に行こう』と伝えるだけである。

 

流石に正面から言うのは気恥ずかしく、仲間たちは手紙でその旨を伝えたわけだが、肝心のジャックが朝からどこかへ姿を消していた。

 

 

「おっ」

 

 その日、彼を最初に発見したのはヘルツであった。情報に関しては『ヴォイド』に一日の長がある。日課の情報収集に勤しんでいる最中、城から出て来たジャックを認め、後をつけた。

 

「ん?」

 

「やっほ」

 

 数歩とかからず気づいたジャックに軽く挨拶すると、隣りに立って探りを入れる。

 

「宰相と内緒話?」

 

「ん、色々とね」

 

「内緒話は人に話したくなるよねえ」

 

「ダメダメ、口止めされてるんだから」

 

「な~んだツマンナイ。……ところで、花火大会は誰と行くか決めた?」

 

 実のところ、これが本命の質問だった。彼女自身、手紙をしたためた一人である。

 

「あん? 花火大会?」

 

「一緒に行こうって手紙が来てたでしょ」

 

「……あ、俺、朝から城行ってたからさ。そっか、花火大会か……」

 

「まだ見てないのね、よっ、イロオトコ。よりどりみどりで、誰選ぶのかな?」

 

「ん……いや、あのさ」

 

 ジャックは困ったように頭を掻いた。

 

「もう、予定いれちゃってんだよね……悪いことしたかな」

 

 

 ヘルツを出発点に、その情報は手紙を出した仲間たちへ雷光の如く広まった。

 

 落胆、悲嘆、逆上、反応は様々だが、終着点は皆一様に同じだった。

 

 予定の相手は誰⁉

 

 手紙を見る前から決めていた、ということは、花火大会を知ってからすぐに彼ないし相手から誘ったことになる。

 

 朴念仁のジャックが? あり得ない、ならば、やはり誘われたとみるべきだろう。

 

 誰が?

 

(同じ戦士ギルドのアリシアさんでしょうか)

 

(ミランダかな、隅に置けねえな)

 

(お、お兄ちゃんから聞いてもらって……だ、ダメよそんなの……)

 

(案外、エレナだったりして。あれはフェイクで……)

 

(きっと『ヴァレス』の誰かよ、汚い手を使って……)

 

(『ビギン食堂』のユーリさんかしら……よくジャックさん利用しているし)

 

 直接、ジャックに聞けばはっきりするだろう。

 

 しかし、それをためらわせる空気が確かにあった。ジャックが誰と花火大会に行こうと、それは彼の自由である。おまけに、帰宅してから手紙を確認した彼は、一人一人へ断りの挨拶をしに回った。

 

 本来、話はそこで終わりだ。が、道理で感情の整理が付けられれば、誰も苦労はしない。

 

ジャックと過ごす相手が知りたい、その想いは大小の差こそあれ、個々人の間で高まっていった。

 

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