行動といっても、要するにジャックへ『花火大会へ一緒に行こう』と伝えるだけである。
流石に正面から言うのは気恥ずかしく、仲間たちは手紙でその旨を伝えたわけだが、肝心のジャックが朝からどこかへ姿を消していた。
「おっ」
その日、彼を最初に発見したのはヘルツであった。情報に関しては『ヴォイド』に一日の長がある。日課の情報収集に勤しんでいる最中、城から出て来たジャックを認め、後をつけた。
「ん?」
「やっほ」
数歩とかからず気づいたジャックに軽く挨拶すると、隣りに立って探りを入れる。
「宰相と内緒話?」
「ん、色々とね」
「内緒話は人に話したくなるよねえ」
「ダメダメ、口止めされてるんだから」
「な~んだツマンナイ。……ところで、花火大会は誰と行くか決めた?」
実のところ、これが本命の質問だった。彼女自身、手紙をしたためた一人である。
「あん? 花火大会?」
「一緒に行こうって手紙が来てたでしょ」
「……あ、俺、朝から城行ってたからさ。そっか、花火大会か……」
「まだ見てないのね、よっ、イロオトコ。よりどりみどりで、誰選ぶのかな?」
「ん……いや、あのさ」
ジャックは困ったように頭を掻いた。
「もう、予定いれちゃってんだよね……悪いことしたかな」
ヘルツを出発点に、その情報は手紙を出した仲間たちへ雷光の如く広まった。
落胆、悲嘆、逆上、反応は様々だが、終着点は皆一様に同じだった。
予定の相手は誰⁉
手紙を見る前から決めていた、ということは、花火大会を知ってからすぐに彼ないし相手から誘ったことになる。
朴念仁のジャックが? あり得ない、ならば、やはり誘われたとみるべきだろう。
誰が?
(同じ戦士ギルドのアリシアさんでしょうか)
(ミランダかな、隅に置けねえな)
(お、お兄ちゃんから聞いてもらって……だ、ダメよそんなの……)
(案外、エレナだったりして。あれはフェイクで……)
(きっと『ヴァレス』の誰かよ、汚い手を使って……)
(『ビギン食堂』のユーリさんかしら……よくジャックさん利用しているし)
直接、ジャックに聞けばはっきりするだろう。
しかし、それをためらわせる空気が確かにあった。ジャックが誰と花火大会に行こうと、それは彼の自由である。おまけに、帰宅してから手紙を確認した彼は、一人一人へ断りの挨拶をしに回った。
本来、話はそこで終わりだ。が、道理で感情の整理が付けられれば、誰も苦労はしない。
ジャックと過ごす相手が知りたい、その想いは大小の差こそあれ、個々人の間で高まっていった。