花火大会は、以前のパレードで、妖精の襲撃という凶事があったのを糊塗するためか、アナスタシアの豊富な財力がこれでもかという程につぎ込まれていた。
「オホホホホー、ライアン家の力を目に焼き付けなさーい!」
飲み食いはし放題、終始花火が絶えることはなく、警備は騎士団が全て責任を持つと豪語しただけあり、市民だけでなくギルド所属の人々も、仕事を忘れて束の間の休息を楽しんでいた。
『テアトル』と『ヴォイド』の飲み比べ大会は大いに盛り上がり、飛び入り参加のユージンが優勝したのをアキレスが見咎めて、
ちょっとした喧嘩騒ぎが起きた。
『ヴァレス』のアーシェラは、自信満々で新生『JACK』シリーズを警備に投入したが、やはりというべきか花火や屋台に夢中になり、むしろ騎士たちの手を煩わせてしまっていた。
ただ、キラやニットらが迷子になった時は素早く探し当てており、一定の評価は得られたようだった。
『ヴォイド』の関係者も、今回ばかりは商売気を出さなかった。なんでも無料配布を前にしては、金をとる店は分が悪い。
ジャックは開会式が終わっても、重臣や貴族たちからのうんざりするような『挨拶』に巻き込まれて、中々自由になれなかった。
ようやく解放されると、声をかけて来る知り合いをあしらい、いそいそとどこかへ歩き出した。
それを待っていた一団が、彼を尾行すべく動き出した。互いを認識しつつも無視している、奇妙な集団だった。
「動いたな」
「悪しき道に進まれそうになったら、止めねばなりません」
ジャックを誘おうとしていた乙女たちの中でも、どうしても諦めきれない者たちである。その名は敢えて記さない。
どんどん町の中心を外れ、城外へ出ようとしているらしき彼を追い、乙女らは花火には目もくれず歩いていった。
そしてとうとう門に差し掛かったころ、ジャックが通り過ぎるのと入れ違いに、乙女たちの前に姿を現した影があった。
「リンカさん?」
「静かに、アンタらの気持ちはわかるけど……今日はあいつらの好きにさせてやれ」
「わ、私はただ、用事があるだけですけれど」
「よくないとは思いますけど……気になって」
小声で抗議する乙女たちに、リンカは手招きでついてこいと伝えた。
ジャックがたどり着いた場所には、先客がいた。
ジャック「どもっす」
ガンツ「おお、ジャックさん」
ジャック「やっぱり、団長も来てましたね」
敬愛する団長、その傍には、真新しい花が供えられている小さな墓がある。
ジャック「お待たせ、リドリー」
ガンツのそばに腰掛け、墓に眠る少女にジャックは優しく語り掛けた。