ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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花火大会⑥

ジャック「団長、お母さんとは話しできたんですか?」

 

ガンツ「はい、今まで散々苦労をかけまして……」

 

 連続して花火が打ちあがる。リンカと乙女たちは、少し離れたところから二人を見守った。

 

ジャック「なんか、大変なことになっちゃいましたね」

 

ガンツ「そうですね……騎士団に復帰できたのは嬉しいですけど、龍と戦うのは……いや、今まではジャックさんにそれを任せきりでしたから、少しは楽をしてもらいませんと」

 

ジャック「はは、まあ、皆の助けがあったからできたんですけど」

 

 ガンツが、高価そうなワインを取り出し3つの杯へ注いだ。

 

ガンツ「さ、どうぞ。家にあった一番良いワインです」

 

ジャック「いいんですか?」

 

ガンツ「今やジャックさんは副団長、お酒くらいいいでしょう」

 

 互いに杯をとり、一つはリドリーへ捧げ、二人は乾杯し一気に

ワインを飲み干す。

 

「ひゃあ~!」

 

「ふふ、まだジャックさんには早かったようですね」

 

「……リドリーは、お酒はどうだったんでしょうね」

 

「そうですねえ……ジャスネさまは中々の酒豪でしたが……」

 

 乙女たちは言葉を発しない、そうすべきでない場が形成されて

いると肌で感じられるからだ。

 

「団長も聞いてると思いますけど、向こうにはリドリー……がい

ます」

 

「ええ、ラークス様とジーニアスさんから伺いました」

 

「ジーニアスの言うように、秩序の修正とかいうのだったら……

また、リドリーを……」

 

「ジャックさん、まだわからないじゃないですか」

 

「え?」

 

「ジーニアスさんは優れた頭脳をお持ちです、でも、推測が全部

正しいとは限らないかもしれません」

 

 続く言葉のためか、ガンツはワインを一気に呷った。

 

「……そのリドリーさんは、本当のリドリーさんで、何かがあっ

て記憶を失ってしまってるだけかも」

 

 『リドリー』の姿を見てから、一瞬たりともジャックの頭脳か

ら離れない誘惑であった。

 

 そして、先の戦争の終わり、『白夜の都』から彼女の亡骸を抱い

て脱出し、この墓へ埋葬した記憶がそれを否定し続けている。

 

 リドリーは、間違いなく死んだ。

 

「だから、結論を出すのはまだにしましょう」

 

 他の人間の口から出ていたら、平静でいられない台詞だった。

 

 だが、この人の好い団長から発せられたそれは、悪意なく、そ

して彼自身が信じたがっているものだと信じられた。

 

 ガンツとリドリーの面識はそれほど深くない、彼女の方は、当

初、頼りない団長を不安がっていた。しかし、激動の運命の中、

同じ仲間として、人として信頼があったのは確かであった。

 

「そうかも……しれないですね」

 

「ええ、だからジャックさん、最後まであきらめないでおきましょう」

 

「はい」

 

 それきり、リドリーの話題は出なくなった。ラジアータを離れている間の出来事や、『水龍』への対策について語り合った。

 

 

「リンカ姉さま、知ってたの?」

 

「まさか、コテツの誘いを断ってまで会う奴が、ろくでもないのだったら一発殴ってやろうって思ってたけど……ろくでなしはあたしだったね」

 

 リンカは乙女たちへ小さく手を叩いた。

 

「さ、戻るんだよお嬢さんたち。今夜のあいつらは、二人きりにしてやらなきゃダメさ」

 

 乙女たちは素直に従った。

 

 その心に浮かぶのは、淡い想いの終焉、諦めきれない決意、リドリーという少女への憧憬……様々であるが、リンカの助言が正しいとの認識は共通していた。

 

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