翌日、街中で花火大会の後片付けに奔走する騎士らの間を抜け、
ワインの残る頭を抑えながら、ジャックは城へ出向いた。
呼び出された宰相室には、ガンツの他にジーニアス、クライブの姿もあった。『桃色豚闘士団』勢ぞろいである。
「お忙しい所すいません。『水龍』についてお話があります」
「出たんですか?」
「いや、だが、オーク、ブラックゴブリンに動きがあると報告があった」
いきるジャックをジーニアスが制した。
「『ヴォイド』からの情報だ、グリーンオークの族長ジェイジェイが、ブラッドオークをまとめているらしい。ブラックゴブリンは……少しわからないが」
前回の戦争で、ブラッドオーク族長ガルヴァドスはジャックに倒されたが、ジェイジェイの死は確認されず、グリーンオークは種族としての参戦を回避したのではとの見方があった。
ブラックゴブリンは、明確に参戦していないとされている。胞子の雪が舞うゴブランヘブンにて酩酊しており、戦場でその姿を見た者がいないからだ。
この二種族に関しては、時間的猶予がなかったのか、あるいはザインが敢えて参加を求めなかったとの考察もある。グリーンオークは、ブラッドオークの持つ『強きものに従え』という掟すら持っておらず、意志薄弱で戦場で混乱を招くからだ。キノコ中毒のブラックゴブリンも言うまでもない。
ただ、両族長、ジェイジェイとブラッキーに関しては、その頭脳、実力ともに抜きん出ているとの報告もある。
ブラックゴブリンの一部とは面識のあるジャックだが、流石にこの二人については全く知り得なかった。ジーニアスも、ダークエルフたちから、かつて聞いた程度である。
「エルフたちはどうなんでしょう?」
「ライトエルフ、ダークエルフ共に頻繁に行き来しているらしい。
最後に残った『龍』だ、堕ちれば士気に大きく響く」
妖精たちも、前回の戦争から学んでいる。世界の昼夜を行き交う金と銀の龍は、その存在が保たれているかも不明で、かつ銀龍は人間の味方をしようとしていた。
味方と断言できるのは、今や『リドリー』と、『ジャック』が変じる『水龍』のみ。それすら打ち倒されてしまえば、士気を保つことは出来ないだろう。
ドワーフ、グリーンゴブリンは戦いを放棄した、死に物狂いで残された妖精たちは向かってくるに違いない。
「作戦は全て、『桃色豚闘士団』にお任せします。本国を護る最低限の兵だけは残し、『水龍』討伐に全力を尽くしてください」
言われるまでもなかった。
「ひゃ~、なんかすっげえことになっただなあ。田舎に手紙で、知らせておくべか」
宰相室を出、研究を続けると足早に去ったジーニアスを見送ると、のんきに呟いているクライブを見ながら、ジャックはガンツに耳打ちした。
「団長、クライブまで騎士にしちゃって大丈夫なんすか? 俺が言う事じゃないけど……」
友人として、一個人としてこの純朴な青年は善良で信頼に値する人物とジャックは断言出来たが、些か能力が頼りなかった。
「いやぁ、騎士団復帰の話の時、どうしてかクライブさんまでついて来ちゃいまして……つい、勢いで」
「勢いって……」
「そういや、おらは副団長でいいだか?」
「あのな、副団長は俺だぞ?」
「二人いてもいいんでねえか?」
「クライブさん……その話はおいおい……」
時々、ジャックはクライブが羨ましくなった。悩まないと言う事は、一つの救いなのではないだろうか。