「無茶ヲイウノウ」
「そうでしょうか? そもそも、この戦争の原因はその二人によるところが大きい……妖精たちを先導する少女と、龍の姿に変じる力を持った鎧の人物……一体、彼らは何者なのです?」
ラークスは、ジェイジェイとブラッキーを揺らぎなく見据えた。
「その正体、目的、あなたたちの持つ情報を全て提供していただきたい。人間と敵対する強大な力を有しながら、その謎を隠したまま融和を求めるのは不可能でしょう」
「ンン?」
「さらに、貴方たちの言う人間の守護者たちは、確かに大いなる力を有していますが、あくまで人間です。数十年でその力は衰え、命を終えてしまう。その時、抑止力を失った人間の前に、少女と龍が立ちはだかることになるのではありませんか?」
「ウヒャヒャヒャ」
ブラッキーが愉快そうに笑った。
「ニンゲン、天晴ジャ。ワシャアハハンロンガデキン。ソウナッタラ、マチガイナク、ニンゲンヲホロボスジャロウナ」
「認めるのですか?」
「アア、マッタクミョウナジダイニイキテシモウタ。リュウヲホロボスチカラト、オノレガ死シタアトノコトマデカンガエヌク、ニンゲンガオル」
「誉め言葉と受け取っておきましょう……。それで、こちらの要求については?」
「少々ムズカシイノウ」
ジェイジェイが答えた。
「最大で、最低限の譲歩がそれです。他に、王国としては求めるものはありません」
「ソレガ、ムズカシインジャ。ヨウセイニリュウヲ裏切レトイウトルンジャカラナ」
「新しい時代と平和を望むのであれば……、妥当と判断します」
沈黙が場を支配した。
ラークスの言い分は正しい、結局のところ妖精たちの手に龍がある以上、対等な立ち位置での平和はあり得ない。
一方の妖精たちにとって、守護者たる龍は絶対的な存在だ。裏切りを考えることすら、許されぬほどに。
妖精戦争からしばらくして、龍とは兵器なのだと、『ヴァレス』のジーニアスをリーダーとした研究集団がラークスに上奏したことがある。
個々では人を上回る力を持つが、欲望の弱さと個体数の少なさ、種族による隔絶で人間と対して滅んでしまうと見越した『秩序』が遣わした、兵器。
一個体で人間を滅ぼし得る力を持ち、傷ついても癒しの眠りにつけば蘇ることができる。オーブでの封印ですら、脅威を先送りにしているに過ぎない。
ケアン、ジャックらが、龍殺しに成功したが、それは異例中の異例である。彼らをもってしても、龍を消滅させることは出来なかった。
ジャックの持つオーブはいずれ、力を取戻し龍へと戻るはずなのである。
確かに、人間が主役となる新たなる時代を迎えつつあるトゥトアスだが、妖精たちの出番が完全に消失したわけではない。