「こんにちはジャックさん」
「あ、団長」
ガンツの丸顔が、ジャックの見上げる風景に入って来た。
「ジャックさんもお墓参りですか?」
「あ、いや……」
リドリーの墓へ備える花を持っているガンツを見ると、ジャックはバツが悪かった。足はここへ向くものの、肝心の土産を持ってきていない。
「いやはや、最近は色々ありすぎますよね、私も少し息抜きをしようと思いまして」
そう言いながら、瓶を取り出した。流石に酒ではなく、果実ジュースである。2つのコップに注ぐと、1つをジャックへ勧める。
二人を爽やかな風が包んだ。しばし、言葉もなくコップを口へ運ぶ。
「ジャックさん」
「はい」
「私、近頃ようやく父上のことがわかってきたような気がします」
ガウェインの名を出され、ジャックは思わず身を固くする。彼を討ったのは自分であるが、父ケアンを暗殺した仇でもあるからだ。
もっとも、刃を交えた後で、以前と同じようにその風評を信じ切ることはできなかったが。
「いえいえ、ジャックさんが気にすることはないんです。父上にも相応の理由がありましたが、何ら釈明もしなかったのですから」
ジャックは答えられなかった。
「ジャックさん、父上も、ケアン殿も、そしてザイン殿たちも、
そしてリドリーさんも、秩序に囚われていたんじゃないでしょうか」
「秩序?」
「トゥトアスの秩序、妖精の秩序、人の秩序、騎士の秩序、金龍としての秩序。それぞれがそれぞれの正義にのっとって、行動を起こしました」
ガンツは一気にコップの中身を飲み干した。
「その結果、皆が幸福でない最期を遂げてしまいましたそうせざるを得なかったんです。何千年も続く秩序をそう簡単に変えられるものではないでしょうから。私がお酒を辞められないのと一緒で」
「いや、それとこれとは違う気がしますけど……」
「だから、ジャックさん。今度こそ、秩序を全部取っ払ってしまおうじゃないですか。簡単じゃないでしょう、新しい悲劇も生まれるでしょう。でも、やってみる価値はありますよ」
どうやら、ガンツなりにジャックを励まそうとしているらしかった。恐らく、ジーニアスらの受け売りだろうが。
「……ありがとうございます、団長」
「いえいえ」
彼らの父であるケアンとガウェインは、無二の親友であった。
ジャックとガンツの間には、年齢や地位といった隔てるものがあり、父たちのような仲とはいかない。
だが、確かな信頼と尊敬があった。もし、二人の父がこの光景を見ていたら、喜ばしく思っただろう。