ボルゴンディアーゾの内部は不気味に静まり返っていた。予想されたオークやゴブリンらの姿も、モンスターの姿もない。
「罠であろうな」
「こ、怖くない、怖くない……」
カーティス、レオナ、ファラウスが魔砲による索敵を行った。それぞれ得手とする魔砲と別に、基礎的な魔法を扱える。
「奥の方にとてつもない力の反応があります」
「『龍』だろうな、より詳細な情報は?」
「力が強すぎてわからないの……ごめんなさい」
「いえいえレオナさん、貴重な情報をありがとうございます。さて、どうしましょうか?」
「俺がいっちょ行ってきますよ」
ジャックが手をあげた。
「ならぼくも、ジャックくんよりも斥候は得意だよ」
「私も赴く」
ヴァージニアとソナタが名乗りをあげた。オルトロスから、多少なりとも『点数稼ぎ』をするように言いつけられているからだ。
ジャックとしても断る理由はなく、先行して偵察に向った。
結論から言ってしまうと、『敵』はあっけなく見つかった。
ジェイジェイとブラッキーが、大きな横穴の前に鎮座していたのだ。恐らくその先に、『水龍』がいるのだろう。
「ああも堂々とされてるとやりにくいよね」
「戻ってみんなとどうするか話そう」
ジーニアスなら、あるいは説得できるかもしれない。そう考えたジャックだったが、甘い目論みへの後悔はすぐにやってきた。
「敵襲なり」
ソナタがかぎ爪を構えるのとほとんど同時に、狼たちがジャックを襲った。
グラムを抜き放ちながらジャックは思い切り舌打ちした。ブラックゴブリンは、ウルフライダーを始めとして狼との交流が深い。
族長のブラッキーが狼を操れると予想していなかった、己を恥じた。
「おりゃっ!」
幸い、狼たちはジャックの敵ではなかった。だが、物音を聞きつけた妖精たちが迫って来る。
「団長たちのとこまで戻るぞ!」
そのまま戦っても勝てたかもしれない。だが、ジャックは自分よりもヴァージニアとソナタが怪我を負う危険を避けたのだった。
「団長~! 見つかっちゃいました!」
「なんとっ!」
「あちゃ~、まずいだなあ」
この三人にかかっては、どんな深刻な事態もつまみ食いをしようとして見つかったかのような暢気さになってしまう。かつてはここに、もう一人少女の姿があったのだが。
「つーわけで、じーさんたち頼んだ!」
「年寄りをこき使いおって」
「が、頑張ります」
「荒事は得意じゃないですが、全力を尽くしましょう」
ジャックたちを追跡してきたオークとブラックゴブリンたちに、『ヴァレス』自慢の魔砲が叩きつけられた。
カーティスの着弾すると爆発を起こす火球、レオナのルーンを用いた光線、ファラウスの氷の矢。予想だにしなかった奇襲を受けて妖精たちは大きく戦列を乱した。