ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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水龍ケルビン⑦

 だが、トゥトアス随一の凶暴性と腕力は伊達ではない。オークらは巨大な岩石を易々と持ち上げて、こちらへ投げつけて来た。

 

「散らばって逃げるんだ!」

 

 レオナを脇に抱えてジャックは叫んだ。さながら隕石群のような岩落としには、逃げの一手を取るしかなかった。

 

「まずはオークを倒すぞ! このままじゃ全滅だ!」

 

「言われんでもわかってる!」

 

 一喝しつつ、ジェラルドがオークを斬り捨てた。負けじとノクターンが、そしてアキレスたちがオークへ向かっていく。さすがに実力者揃いであるだけあって、頑強なオーク達と対しても引いていない。

 

 レオナを後方組に任せてジャックも突撃し、形勢を立て直した『桃色豚闘士団』は優位に立ったかに見えた。

 

「ぐおっ⁉」

 

「ぺっ、なんだこりゃ⁉」

 

 だが、思わぬ伏兵が潜んでいた。ブラックゴブリンたちが投げつけて来た飛び道具、キノコパウダーである。

 

 毒キノコの胞子をまとめたそれは、着弾すると胞子を撒き散らして時として対象を毒とする。それ単体で命にかかわるというものではないが、胞子で器官をやられ、毒となれば徐々に生命を削られてしまう。

 

「ブルース! フローラ! 治療してくれ!」

 

「は、はい」

 

「くそっ」

 

「ざまあねえ」

 

 ジェラルドらは治療のため一時前線を退いた。代わって、あらゆる状態異常を克服しているエルウェン、カイン、ラークスが前に出たが、キノコパウダーにより視界と器官をやられて本来の実力が発揮できなかった。

 

 毒とならずとも、粘膜や器官に胞子が入っては戦闘ができなくなる。生物である以上、克服できぬ弱点だ。

 

「だったらこっちも飛び道具だ! じいさんやっちゃって!」

 

「言われずとも!」

 

 カーティスが妖精たちに魔砲エクスプロージョンを放った。

 

「待て! それはー」

 

 ジーニアスの警告も空しく、着弾した魔砲は充満していた胞子に引火して、粉塵爆発を起こした。

 

「ひゃ~!」

 

「あちちっ! あついですよ~!」

 

「ぬおおっ、すまん! 不覚じゃ!」

 

「そいつの頭の出来を考えてください!」

 

「俺の事がコンチクショー!」

 

 のしかかろうとするオークをアービトレイダーで切り伏せながらジャックは立上った。

 

 仲間は散り散りになっているが、妖精たちも混乱の中にある。もう一度集結して陣形をー

 

「うお!」

 

 ジャックは飛んできた『それ』を反射的に切り落とした際に生じた隙に、オークに殴られ吹き飛ばされてしまった。

 

「ジャックさん!」

 

「って~……」

 

 ブルースに抱き起されながら頭を振る。先ほど飛んできたものは何か? 岩にしては感触がおかしかった。

 

「ジャック様、治療を」

 

「待って」

 

 戦況を把握するのが先だ。洞窟内で気流がなく、煙が晴れずに個々を確認しずらい。荒事に慣れていないフローラたちを優先して助け出さねば。

 

「コウナッチマッタカア」

 

「! ジェイジェイ……」

 

 ひと際大きな影が姿を現した。オークの族長、ジェイジェイである。

 

「ニンゲンヨオ、ウマクイカンモンダナア」

 

「俺は……あんたたたちと戦いに来たんじゃない。『水龍』と戦いに来たんだ」

 

「ダカラ、ワシャアラガキタンジャ。ケルビンサマヲマモラニャナラン」

 

 そこに潜む皮肉にジャックが気づくことはなかった。

 

 守護神である龍を、妖精が守らんとしている。それは、『龍殺し』と呼ばれる人間の『龍』にかかっては、龍すら危ういと妖精たちが思っていることの現れだった。

 

 さらに、この『龍』は絶対の守護者と言って良いかわからない。よりによってその『龍殺し』と同じ姿をした鎧の戦士が変化したものだ。

 

 何もかもが不確かな中にあっても、ジェイジェイは己が責務を果たせねばならない。結局彼は、妖精の一員なのだから。

 

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