「みなさん! ご無事ですか! 私ガンツとクライブさん、ジーニアスさんにフローラさんは無事です!」
「ジェラルドだ! 大隊長と教皇、アキレスと一緒にいる、『ヴォイド』の連中程ヤワじゃねえからな!」
「ヤワな『ヴォイド』様はかすり傷ひとつねえぜ! 『ヴァレス』の連中もここにいる!」
「おおっ、ジャックだ、ジャックが見える! 儂はジャックの近くにおる、ブルースとホリィも見えるぞ!」
声を聴き分ける限り、ソナタとヴァージニアの所在が確認できない。だが、この曲者二人の事、何かしら意図があるのだろう。
「みんな、俺は今ジェイジェイと向かい合ってる……悪いけど、
集中させてもらうぜ」
かつて対峙したガルヴァドスに勝るとも劣らない迫力だった。どれだけ人間が鍛えようとも到達できない巨躯と筋力、妖精族オークにのみ許された力が伝わって来る。
「ジェイジェイ⁉ 待てジャック、僕が行く!」
「ジーニアスさん、不用意に動いては……うひゃっ⁉」
「気いつけろ! オークとゴブリンどもは健在だぞ!」
あちこちで、健在の妖精たちと面々の戦いが始まっていた。
「引けねえんだよな」
「アア」
一瞬、ジャックは不可思議な幻視に襲われた。人間と妖精との戦争の様子、しかし、何かが違う。
ジャックは『人間と戦っていた』。
妖精たちを鼓舞し、仲間たちと剣を交える。そして、隣にはリドリーが……。幻視と云うにはそれはあまりにも実体を伴っていた。
「ヌガアア!」
刹那の弛緩を見逃すジェイジェイではなかった。人間の背丈以上もあるギロンの木を軽々と振り上げて、ジャックの頭蓋へ叩き込んだ。
頭部どころか、全身が肉塊へ易々変じるほどの威力であった。
ジャックは躱さなかったー
ブルースにはそう見えた、直後にギロンの木が地面に叩きつけられた衝撃で、危く倒れそうになるのを必死にこらえる。
そして、視界の端に健在なジャックを認めた。少なくとも、人の形を保って直立している。その傍には岩盤を砕きめり込んでいるギロンの木がある。
ジャックは、迫る巨木を前に意識を取り戻し、最小限の動きでそれを受け流したのだった。あまりにも動きが微小であったため、ブルースの目には不動であると見えた。
「……」
その実、ジャックが幻視から受けたショックは小さくなかった。
その内容、何よりリドリーの姿があったことが大きく心を揺さぶった。
だが、喜ぶべきか嘆くべきか、彼の戦士の本能は意志とは関係なしに『敵』を倒すために動いていた。
その手には『神槍パラダイム』が握られ、身体をねじり、ジェイジェイへ勢いよく投擲を仕掛けた。
ジェイジェイの反応は迅速だった。ギロンの木を素早く持ち上げると、受け止めるべく槍へ対応した。鈍重に見えるオークであるが、全身これ筋肉の塊という肉体はトゥトアス随一で、敏捷性にも優れているのだ。
槍を受け止め、今度は薙ぎ払いジャックを仕留める。ジェイジェイは脳裏に浮かべた光景を実現すべく、身を引き締めた。