ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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水龍ケルビン⑫

「さすがにないっしょ」

 

 ジャックが答えた。人も、妖精も、龍も、等しく彼の前で死んでいった。例え相手が『秩序』そのものであろうと、不滅のはずがない。

 

「だけど、打つ手がないじゃないかジャックくん」

 

「んまあ、それはそう」

 

 雨のように注ぐ氷の矢を回避しつつ、愚痴るようにジャックは続けた。大隊長の剣戟でも、カーティスの魔砲でも傷つけられないのは事実だ。

 

「ジャックさん、一旦引いてみましょうか?」

 

「追って来ますよ団長。絶対」

 

「だが、このままだと打つ手がないぞ」

 

 ジーニアスの言わんとすることはわかる。しかし、退避しては追撃を受け、それを回避しつつラジアータまで戻るのは至難の業だ。

 

「ほいやっ、ほいっ」

 

「クライヴさん、危ないですよ!」

 

「だけんども司祭長、ちいっとでも攻撃しないと倒せねえべ」

 

 物陰から忠告するフローラに、クライヴは平素と変わらぬ暢気さで応じた。確かに、彼に出来る攻撃と言えば毒薬を投げることだけだ。

 

 だがー

 

(ん?)

 

 それが突破口となった。

 

「クライヴ! 続けてくれ!」

 

「ん~?」

 

「袋……フローラもやってくれ! 皆は二人を守って!」

 

「何か妙案がありまして?」

 

「まだわかんないけど……とにかくやってくれ!」

 

 ここで仲間たちがそれに異を唱えたりサボタージュをしないあたり、ジャックの統率力の高さがうかがえた。

 

 困惑しつつ、クライヴと並んでフローラは彼女の持つ石化袋を投げつける。もちろん、龍の前に売店で買えるそれが通じる訳もない。

 

「これは……?」

 

 だが、その目的は別にあった。毒薬と石化袋が龍の身体に入り込み、流水に乗って泥のように濁らせていったのだ。

 

「あれだ!」

 

 ジャックが指さす先には、流水に乗って走る玉のようなものがあった。

 

「な、なんなんでしょう?」

 

「心臓か? ジャック」

 

「多分ね、あれさえ潰しちゃえば……おおっと!」

 

 押し寄せる濁流を必死に回避する。残念ながら『龍』はただ話し合うだけの時間を与えてはくれない。

 

「二人は投げ続けてくれ! 俺があれを潰すから!」

 

 氷の矢、急流の刃、巨大な水の塊、容赦なく降り注ぐ攻撃をかわしながら、ジャックは『心臓』をつけ狙う。

 

 斧や大剣では遅くて駄目だ。片手剣か槍で一撃を加えなくては。

 

(! 今だ!)

 

 跳躍して、『魔剣グラム』で一閃する。『龍』の身体を巡っていた玉は半分に引き裂かれた。

 

「やったか⁉」

 

 アキレスが拳を握った。その瞬間確かに、『水龍』は動きを止めた。

 

「倒したー」

 

「いや、待て。ぬか喜びだったみたいだぜ」

 

 ノクターンが毒づいたのを契機とするように、『水龍』は再び活動を始めてしまった。

 

「くそ! あれ、心臓じゃねえのかよ!」

 

「待ちなさいジャック、『水龍』の身体にはもう一つ玉が流れているようです」

 

 カインが指さす先に、濁った『龍』の肉体を駆け巡る二つの玉が確かに見えた。ジャックが発見したものよりも小さく、しっかりと観察せねばすぐに見逃してしまうほどだ。

 

「二つ……」

 

 しかも、一方を潰しても意味がない。先ほどジャックが切り裂いた玉も復活している以上、恐らく同時に破壊せねば効果がないだろう。

 

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