一行はそのまま、城へと通された。入城前、城の周囲を騎士らが慌しく行き交っているのが見えた。無論、城は最重要防衛拠点であるが、何か違和感を感じるものもあった。
ほどなく、ジャック、ガンツ、クライブ、ジーニアス、エルウェン、カイン、カーティスが会議室に通され、オルトロスも姿を現した。各ギルドの頭が揃ったことになる。
「これはこれは、『水龍』討伐の武功誠めでたく存じます。『ヴォイド』一同を代表し深く感謝いたしますぞ」
うやうやしく頭を下げたオルトロスの言葉を額面通りに受け取る者はいなかった。人の好いガンツも、クライヴでさえ。
ヴァージニアとソナタが参加していたとはいえ、帰還した矢先に既に討伐の事実を把握しているこの老紳士は、相変わらず底が知れない。
重い沈黙を破るように、レナード、ナツメ、ラークスが姿を現した。いずれも険が深い。
「皆さん、『水龍』の討伐を成し遂げていただきありがとうございます。国王、そしてラジアータの民全員に代わって御礼申し上げます」
ラークスに応じるように全員が頭を下げたが、それだけのためにここに招集されたとはさらさら思えず、次の言葉を待ち受けた。間違いなく、吉報ではない。
「ジャックさん、落ち着いて聞いてください」
名指しされたジャックは身をこわばらせた。嫌でも、数日前に再会を果たした少女の姿が脳裏に蘇ってくる。
ラークスは、この沈着な男には珍しく言いよどんで、意を決して口を開いた。
「ラジアータ城に、リドリー・ティンバーレイクが現れ、コロシアムを占拠してー」
「あれ?」
ジャックは医療室のベッドの上で目を覚ました。混乱していると、聞きなれた声が耳に飛び込んでくる。
「あ、お目覚めですかジャックさん」
「全く世話のかかるやつだ」
ガンツとジーニアスである。
「団長? ジーニアスも……え?」
「何も覚えていませんか?」
ガンツの語るところによると、ラークスから『リドリー』のことを聞かされた途端、弾かれたようにジャックは席を立ったそうだった。
予測していたのか、レナードに捕まりもみ合いになった。流石に武器を出すまではいかなかったものの、ジャックは立ちはだかるなら実力行使も辞さない勢いで、エルウェンとカインが加勢して、やむを得ず気絶させた。とのことだった。
「落ち着いてください、ジャックさん」
まず間違いない、とジャックは判断した。そのもみ合いは覚えていないが、ラークスの言を思い出すと、もう少しで部屋から飛び出しそうだった。
「……すいません」
「ラークス卿からの言伝だ。明日からリドリー嬢についての対策を協議する、今日は休息するように」
「わかったよ……」
本音を言えば、今すぐにでもコロシアムへ駆け込みたい。だが、『水龍』討伐後も行軍は続き体は本調子ではなく、戦闘が予想される今、突貫は命取りに成りかねない。
また、ラークスが休息を指示したということは、少なくとも差し迫った害を『リドリー』が与えていないのだろう。でなければ、休息を与える余裕はない。