ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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リドリー②

「どうしたジャック?」

 

「ケアン殿譲りの気概を見せよ」

 

 自分でもわからない。だが、その一突きが放てなかった。

 

「なにをしているのです?」

 

「騎士の本分を果たすのです」

 

「騎士になるんだろ?」

 

 周囲からは諫める声が聞こえる。そうだ、騎士になるためにわざわざ上京して、セレクションに参加したのだ。

 

 しかしー

「ジャック」

 

「リドリー……」

 

 先刻会ったばかりの少女が、数年来の知古、否、それ以上の存在に思えてならなくなっている。一体どうしてしまったのか?

 

「ジャック」

 

「決着をつけるのだ」

 

 奇妙な記憶の混濁が関係しているのだろうか? エルウェンやカイン、ニュクスまでやってきている。確かに、『リドリー』を倒せばすべては終わる。

 

『リドリー』?

 

 そうだ、リドリーは『リドリー』となり再び現れたのだ、そしてコロシアム……

 

「ううっ⁉」

 

 身を裂くような痛みがジャックに襲い掛かった。剣を握り続けるどころか、立つことすら覚束ない。

 

「ジャック。ジャック。じゃっく、じゃっく。じゃっく……」

 

 ありとあらゆる声が呼びかけて来る。そのたびに、リドリーへ止めを刺さなくてはと苛んでくる。

 

「団長……」

 

 ジャックはガンツを見やった。いつの間にかコロシアムを埋め尽くすラジアータの人々。『騎士団』『テアトル』『オラシオン』『ヴァレス』『ヴォイド』、そこに属していない人々までおり。全員が

リドリーへ止めを刺すように叫んでいる。

 

その中で、唯一人彼だけが、ただ悲しそうに首を横へ振っていた。

 

 ……待て。

 

「俺、まだ、団長のこと知らないはずだぞ……」

 

 ジャックがガンツ・ロートシルトの名を初めて知ったのは、セレクションにリドリーと共に合格した後の顔合わせでだ。

 

「⁉」

 

 そうだ、セレクションでリドリーに敗けてしまった。でも、合格できた。

 

 それから数えきれないほどの出会いと別れがあり、永遠の別離を迎えてしまった者の中に、彼女が刻み込まれた。埋葬も、自分でやった。

 

 だが、その彼女の姿が妖精らの中にあったと聞きー

 

 

「!!!!!!!」

 

 ジャック・ラッセルは覚醒した。

 

 『ラジアータ城』コロシアム、その中心部で横たわっている『リドリー』の首元へ『アービトレイダー』を突き立てている。

 

 切っ先が白い皮膚を裂き、数筋の赤い血が首飾りのように映えていた。

 

「リドリー……」

 

 金髪をほどき、ヴァリアントメイルに身を包んだ少女。かつて『白夜の都』でその躯を抱き、『風虫の谷』で垣間見た時と寸分変わらぬ彼女がそこにいた。

 

「ジャック……」

 

 寂しそうな、それでいて安堵したような微笑を浮かべていた。

 

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