ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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リドリー⑧

 城の外に出たジャックは、『白夜の都』を思い出していた。あの時もリドリーを抱いて……だが、今彼女は生きている。

 

「止めろジャック」

 

「とりあえず、どっかで落ち着こうぜ」

 

 ジャックは歩き出した。ガンツとジーニアスが追い付くが、その異様な雰囲気に、ガンツは言葉をかけるのがためらわれた。

 

「金龍、ハップの記憶も知りたい。秩序が作られる以前の歴史や、太古の妖精時代のことも記録したいんだ」

 

 ジーニアスは、そうでもなさそうだったが。

 

 ジャックはそんな二人を無視していた。というよりも、『リドリー』しか見えていなかった。

 

「遠い遠いところでさ、そこならお前が暴れても大丈夫だろ」

 

「わかってるだろ、ジャック……私は……」

 

「俺強くなったからさ、『龍殺し』だぞ?」

 

「ジャック……」

 

「ここじゃさ、みんなどうしても怖がっちゃうから……な?」

 

 門へ向けて、粛々と歩いていく。もう夜も遅い時間であり、流石に人気は少ない。

 

 だが、皆無ではなく、『ヴォイド』の張っていた根に足をとられずにいることは不可能であった。

 

「あれれ~、ジャックったらお熱いー」

 

 ひょこっと顔を出したヘルツが、『リドリー』を見つめて神妙な顔になった。流石の彼女も、城内で起きていることをまだ知り得ていない。

 

「ごめん、今ちょっと……」

 

「ん~、訳アリ? ならしょうがないっか」

 

 ひらひらと手を振って、ヘルツは去っていった。当然、オルトロスに報告するのだろう。

 

「ジャック……」

 

「大丈夫だって、リドリー」

 

 あくまで、ジャックの声は優しい。

 

 夜の街を行き交うのは大人たちだった。『桃色豚闘士団』に参戦していた者たちの姿はない。そもそも、長い任務から戻って休息をとっているはずなのだ。

 

 ジャックも、そうだったのだが……。

 

「うい~、あ~、嫁さん欲しい~」

 

「げっ、隊長」

 

「ん~、なんだあ、ケッ、女連れかあ~」

 

 出来るだけ早くその場を去りたかったが。泥酔したジャーバスはそれを許さない。

 

「騎士様は違うよなあ~」

 

「呑みすぎだよ隊長……」

 

「いいか、よく聞けよおジャック……」

 

 ジャーバスは『カンちゃん』でいつものように痛飲し(ツケ)、ギスケに叩きだされて虫の居所が悪かった。

 

『ヘクトン』は相変わらず依頼無沙汰で、日々貧窮にあえぐ彼は酒に逃げるしかない。

 

「お前ひとりでなあ、何でもできると思うんじゃないぞお」

 

「わかってるよ」

 

「『龍殺し』だなんて言ってなあ、一人で全部……大隊長や副長の助けもあって……うええっ、気持ち悪い~」

 

 ふらふらと、ジャーバスは去って言った。

 

 大出世を果たした元部下への恨みつらみが、酒も手伝って口を突いて出た。それだけだ。

 

 そしてそれが、ジャックの人生の一部に大きな変化をもたらした。

 

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