『太陽と栄光の黄街』を通り抜け、ジャックと『リドリー』はルプス門へ差し掛かった。
少し離れて、ガンツとジーニアスが付いて来ているが、見守っているだけだ。
不思議なほど人影も、街の明かりも少なく見える。
「行こう、『リドリー』」
「もう十分だ、ジャック」
少女の頬を涙が横切った。
「本当に……ありがとう」
「あのな、これから出発するんだぞ? とりあえず……どうかな、北の大地とかに……」
「ジャック、本当にもう、後少しなんだ……」
『リドリー』はジャックの手を握った。
「私が私でいられるのは……」
「大丈夫だって」
少女を覗き込む青年の瞳はどこまでも優しく、悲しい。
「俺を信じてくれよ。リドリー」
「ジャック……」
「あの日、俺はお前と一緒に行かなかった。だから、今日は一緒に行こう、な?」
「ジャック、ジャック……」
『リドリー』はほとんどジャックに抱き着いていた。
「共に、共に生きたかった……」
「今からだって遅くないよ」
「私が間違ってたんだ……全ては……」
「もうやめろリドリー、とにかく行こう」
「全ては私の罪……」
瞬間、『リドリー』はジャックから弾けるように離れていた。
ガンツとジーニアスの目からは、その体が金色に輝いているように見え、さらに背なにエルフのものらしく光の翼が生えていた。
「金龍とエルフの発現⁉」
ジーニスアが昂奮して叫んだ。
「リドリー!」
「滅びは定め……トゥトアスの秩序……」
振りかざした手に、禍々しい輝きを放つエネルギーが集っていく。
「リドリーさん⁉」
「やめろ、リドリー!」
「人は滅び、大地は蘇る」
「やめるんだ! 秩序の輪廻を外れ、なお繁栄を得る道がー」
「妖精たちの未来のために、ザイン様達の犠牲が無駄じゃなかった証のために」
エネルギーが集約し、光球となった。かつてノゲイラやザインが見せた光弾の数百倍の力が、その中で暴風雨の如く渦巻いている。
それが着弾すれば、ラジアータ王国は一瞬で灰燼と化すだろう。
「リドリー!」
「リドリーさん! 止めて!」
「妖精と人間は手を繋げられる! もう少し、もう少し待ってくれ!」
「全てはトゥトアスのため」
「リドリーイイイイイ!」
「ジャック」
その時、『金龍』と『ハップ』の隙間から、リドリーが顔を出した。
「ありがとう」
「……!」
その日、ラジアータ王国が消滅を免れついに新たなる秩序を確立した理由を知るのは、ガンツとジーニアス、ラークス。
そして、『龍殺し』として『全て』の龍を滅ぼした、ジャック・ラッセルのみである。