ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

25 / 158
『セプティモ』危機一髪

 スターらの一件を片付けた後、ジャックは家に帰って寝転んでいた。

 疲れがあったわけではないが、依頼を受けたりどこかへ行ったりする気にもならなかったのだ。

 

「リドリー……」

 

 何度目かわからない言葉が口をついた。

 いっそ、妖精たちの住処へ突撃して、何もかもはっきりさせてしまおうかとも思う。

 その一方、真実を知るのが恐いという感情もまたあった。もし、リドリーが復活していたとしたら、自分はどうするのか……。わからない。

 

 そう、怖いのだ。

 自分のせいで失ってしまった大事な彼女を、どうしたらいいのか。

 どれだけ強い力を手に入れたとしても、覆しようのない過去の過ちに対しては無力である。

 

 と、何者かの気配を感じた。かなりうまく、足音を消している。

 

「ちょっと~、いるんでしょ~?」

 

 フラウの声だ。ジャックは脱力し、ドアを開けて盗賊娘と対面した。

 

「なんだよ?」

 

「あんたんとこの連中がちょっち面倒なことになってるからさ、教えてあげに来たのよ」

 

 

 

 

 ジャックは、リンカとフラウを伴ってドーセ地方へ急いでいた。

 

「だからさ、あんたを呼びにいったのよ」

 

「ゴブリンか……」

 

 フラウとリンカが仕事で遠出した帰り道、上級戦士デイビッドが率いる、テアトルのチーム・セプティモがゴブリンに襲撃される現場を目撃した。

 

 といっても、盗賊ギルドは慈善団体でもなければ、戦闘集団でもない。加勢するわけでもなくその場を去ったわけではあるが、流石にそのままでは気まずいからと、ジャックに知らせに行った。というのが、フラウの話の要約だった。

 

「騎士団は近くにいなかったのか?」

 

「みんなヘレンシア砦に行っちゃってるからさ、他のところは手薄なのよ」

 

 (一応)騎士であるジャックよりも、フラウの方が物知りのようだ。

 確かに、ゴブリンは、オークやエルフに比べれば害は少ない方であったが。

 

「最近は妖精をよく見かけるようになった……案外、本当に戦争が近いのかもな」

 

「……」

 

 リンカの言葉に、ジャックは答えなかった。

 

 

 

 シャングリラにほど近い岩場で、ジャックたちは傷を負った一団に遭遇した。

 

「あれ? カルロスにローレック……フローラ?」

 

 ジャックが面食らうのも無理はなかった。チーム・セプティモは、チームではあるものの、デイビッドのみが所属している隊だったからだ。

 

 カルロスは決まったチームに属せず、牢屋番を担当。ローレックは同じくどこにも属せずにいる戦士で、どちらもお世辞にも技量が良いとは言えなかった。

 

 フローラ、そしてよく見たらいるサイネリアに至っては、テアトル所属ですらない。

 

「ジャックさん! 私の危機を察して来てくれたのね! 感激だわ!」

 

「どういうこと? デイビッドは?」

 

「すぐわかる……」

 

「うおらあああああああ!」

 

 奇声をあげながら、デイビッドが一同へ向かってやって来ていた。

 双剣を振り回し、やたらめったら周囲を切り払っている姿は、どうも正気とは思えない。

 

「うおおおお! やったらああああ!」

 

「あ、ああ、き、来ましたあ」

 

「ゴブリンのパニックパウダーにやられてやがる、だらしねえ」

 

「ジャックさん、パパッとやっつけてください」

 

「う~ん?」

 

 何となく話が見えてきたジャックは、突撃してくるデイビッドへ一撃を加えて、難なく彼を失神させた。

 

「フローラ、介抱してあげて。サイネリアは、二人を」

 

「は、はい」

 

「さっすがジャックさん、後は任せてくださいね」

 

 ほどなく、デイビッドと二人は快復へ向かった。

 

「んあ? あ、てめえは……?」

 

「おっす、フラウとリンカが知らせてくれたよ。で、何があったの?」

 

「? 何かあったのか?」

 

 

 各々から証言を聞き、ことの顛末がようやくわかってきた。

 まず、フローラとサイネリアが、薬草収集の護衛をテアトルに依頼した。最近は妖精の活動も活発になっているからだ。

 

 本当はジャックに依頼したかったのだが、デイビッドがそこへ強引に割り込んできた。

 カルロスとローレックを(強引に)加えてチームを結成し、勢いに乗っていたデイビッドは、タイミングよくやってきたその依頼をデビュー戦にしようとしたのだった。

 

 そうしてドーセ地方へやって来た一行だったが、運悪くゴブリンたちの襲撃を受けた。腕の立つデイビッドは容易く彼らを蹴散らしたが、パニックパウダーが直撃し混乱、味方へ襲い掛かったのだ。

 

 フローラ、サイネリアとも治療技術を持っていたが、傷ついたカルロス、ローレックらを逃がすのにタイミングを逸し、危ないところでジャックらに助け出されたのだった。

 

「乙女のお願いを無視するなんてひどいです」

 

「タイミングが悪かったんだよ」

 

 サイネリアは何故かジャックを責めた。

 

「ま、そういうわけで。義理は果たしたよー」

 

「じゃあな」

 

 フラウとリンカはさっさと帰ってしまった。

 

「ちくしょー! 俺のデビューが!」

 

「帰ろうぜもう」

 

「ま、またゴブリンが来るかも」

 

 セプティモの面々はいまいち嚙み合わない。どうにも急造チームらしく、連携が取れていなかった。

 

 大山鳴動して鼠一匹、ジャックはどっと疲れて、一行をラジアータまで送り届けねばならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ジャックダ……」

 

「ヤッパリソウカ」

 

「パイン?」

 

「リドリーニホウコクスルゾ」

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。