ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

29 / 158
アナスタシア・パレード①

「およ? おめえなんか用か?」

 

「お祓いしてくれ~」

 

 ジャック(とナギサ)はモルガンと別れ、すぐさま『オラシオン教団』へ向かった。

 彼女を問いつめても解決には結びつかず、ならせめて奇蹟へすがろうと判断したからだ。それでどうこうなるとも思えないが、やらないよりはマシであろう。

 

「そっちの子は誰だべ?」

 

「ナギサと申す」

 

「クライブ、カインはいないのか? フェルナンドかフローラでもいい」

 

「教皇様はお出かけだべ、司祭長はお掃除中だべ」

 

「お主はなにを?」

 

「ぼーっとしてるべ」

 

「どこにいるんだよ? 呼んできてくれよ」

 

「わかったべ、ちょっと待っててくんろ」

 

 のんびりと答えて、クライブはフローラを呼びに行った。

 思えば、どんな状況でもクライブはマイペースであった。決して悪い人間ではないが、有事に頼りになるタイプではないと断言できる。

 

「ここは神殿のようだな」

 

「『オラシオン教団』だよ、はあ、モルガンめ~」

 

 今のところ体調に異変はない。が、鎧と一体化しているというはどうにも気持ち悪かった。

 

 

 

「ん~! アータ何してるのかしら?」

 

「げっ」

 

 クライブがフローラを連れて来るよりも先に、アナスタシアとエレナ、アディーナが『教団』へ戻って来た。

 従者はともかく、アナスタシア本人はこういう時に会いたい人物ではない。腰を浮かして逃げようとしたジャックだったが……。

 

「連れてきたべ」

 

「どうしました、ジャックさん?」

 

 タイミングよく(悪く)、クライブとフローラが戻ってきてしまった。

 旧体制派と新体制派、ジャックの連れている(彼女らには)見知らぬ美少女ナギサ、エレナらの詰問をどうにかかわし終えた頃には、ジャックはすっかりお祓いは後回しにして、帰りたくなっていた。

 

「そうだわ、丁度いいわね。アータからテアトルに伝えておいてちょうだい」

 

「何をだよ」

 

「アータシのすんばらし~パレードの警備依頼よ!」

 

 

 

「すごい人だね~」

 

「うむ、さすがは東方山猫家といったところだな」

 

「お金もいっぱいくれましたしね」

 

 テアトルへの依頼、それはアナスタシアが当主を務める4大貴族の一角、『東方山猫(ライアン)家』

が開催するパレードの警備であった。

 

 妖精戦争とそれにまつわる諸々で他家が勢力を落とした中、『東方山猫』は無傷で、一躍ラジアータ貴族のトップに躍り出ていた。

 その地位を盤石にするべく、龍の復活、妖精との戦争の再開と世相に暗いものが漂う中、何するものぞと勢力を誇示しようと、パレードを計画したのだ。

 

 アナスタシアは、騎士団を動員してよりその強さを印象付けたかったのだが、ラークス以下多数の反対にあって断念せざるを得なかった。そこで、テアトルに白羽の矢が立った。

 

 財力の誇示と、妨害を見越してのことである。一強状態ではあるが、その分他からの突き上げに晒されることも意味しており、面白く思わない勢力からの横やりが予想された。

 

 ジャックは、依頼をテアトルに伝えた。

 エルウェン、ジェラルドらが協議の末、依頼は受諾され、最低限の人員を残し、テアトルの隊のほとんどがパレードの警備に駆り出されたのだった。

 

「デニスさん、パレードまであとどれくらいかしら?」

 

「まだ少しかかるようです」

 

「シーザー隊長、ガレスと俺はどうしましょう?」

 

「コンラッドくんはどこですか~?」

 

 

 パレードは、城から『オラシオン』まで、アナスタシアが輿に乗って1周するというもの。

 その間、何事もなく済ませるのが戦士たちの使命だ。

 

「いいかオメエら! 『ヴォイド』のやつらに好き勝手させるんじゃねえぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

 ジェラルドは燃えていた。

 というのも、どうやら『ヴォイド』が対立貴族に雇われて、何か行動を起こすらしいとの情報が、『トリトン』からもたらされたからだ。

 

 荒事となれば、当然ノクターンが出張って来る。彼が相手となれば、黙ってはいられないのがジェラルドだ。

 

 テアトルの面々も、日ごろ対抗意識を抱いている『ヴォイド』の好き勝手させまいと、士気を高めている。

 

 賑やかなパレードの裏には、し烈な権力闘争と、燃えるライバル意識が満ち満ちている。

 それは、一つの戦争でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。