間違いなかった。
妖精との戦争で相対した強敵、輝く翼を有した妖精たちの統率役。こと人間への憎しみに関しては随一の存在。不老と『魂継ぎ』による不死を実現した、妖精の始祖。
妖精軍の長にして族長ザイン、『龍殺し』ケアン・ラッセルを暗殺したギルを要する、ライトエルフだ。
「エ、エルフだと⁉」
「あ、あんなにいっぱい!」
うろたえるジャーバスらを尻目に、ジャックが、そして少し遅れてナギサが飛び出していた。
「りゃああ!」
『神槍パラダイム』の一振りで、アナスタシアらへ降り注ごうとしていた光弾を薙ぎ払い、正面から迎撃できる位置へ陣取る。
「全員『オラシオン』の中に隠れるんだ!」
真っ先にドワイト、グラントが、エレナとアディーナに担がれてアナスタシアが建物の中へ避難を開始、他の人々もパニックに陥りながら後に続いた。
「人間め!」
「思い知れ!」
ライトエルフたちは、宙を舞いながら光弾や魔法で攻撃を仕掛けてきた。
ジャック、ナギサは避難者たちへそれが注がないように迎撃し、時間を稼いでいた。
「チ、チーム『ヘクトン』も続くぞー!」
「お、おー!」
「おー!」
「ナルシェ! 怪我をするんじゃないわよ!」
「危なくなったらこっちに来なさい!」
ややあって、『ヘクトン』の面々が加勢に参上した。
「うおー!」
「きゃーっ」
「う、ううっ」
が、エルフらの魔法に翻弄されるばかりで、かえってジャックらの負担を増やす結果になった。
『ツヴァイト』、『クアルト』、『トリトン』らが合流した時点で、『ヘクトン』の面々は避難者たちの補助へ回されたのだった。
「ライトエルフだと! ノクターンの野郎、何を考えてやがる!」
ジェラルドががなる。さしもの彼も、『ヴォイド』が妖精を引き込むとは予想だにしなかったようだ。
「今は目前の敵を処理しよう」
「シーザーさんに賛成ね」
シーザー、アリシアは冷静にライトエルフと相対した。流石に『テアトル』の主力チームともなると、魔法にも完ぺきに対応しほとんど被害を出さないでいる。
だが―
「らちが明きません! 隊長!」
「少々不利ですね……」
ライトエルフ側にも、打撃を与えられないでいた。
如何せん、相手は宙を飛べる上に魔法による遠距離攻撃が主体、いかに優れた剣術であれど、リーチが違いすぎた。
「ナギサはそっち!」
「言われずとも!」
だが、それをものともしない例外がいた。
ジャックは、建物の壁を蹴って飛び上り、『パラダイム』でもってエルフたちを叩き落としていった。
時にはエルフを足場にして飛び移り、軽やかな動きで空中の敵を捉えていく。
ナギサは斬撃を飛ばしていく。その剣技はシーザーをして、ほれぼれする程のものだった。同じ長刀を使う身として、その扱い一つで力量がわかる。
恐らく、真正面から戦えば苦戦は必至だろう。
「っち、こっちも負けるんじゃねえ!」
ジェラルドは、落下してきたエルフへ歩を進めた。
エルフと戦うのは、先の戦争で経験済みである。ただ、前回は『戦争』というくくりにあって、騎士団や他ギルド、特に『ヴァレス』らの遠距離攻撃が得意な協力者も多々あり、彼らの飛行能力もそれほどの脅威ではなかった。
「どりゃああ!」
それが、『個』として挑まねばならなくなると、苦戦を免れない。
戦闘において絶対はあり得ず、ありとあらゆる局面に対応せねばならない。
歴戦の勇士であるジェラルドであっても、改めて実感する一瞬であった。
ジャックとナギサ、そしてジェラルドらの活躍でライトエルフたちはその数を減らし、残った者たちも戦意を失いつつあった。
それが一変したのは、増援が現れた瞬間である。
「あいつは!」
黒い鎧の戦士。