ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

32 / 158
アナスタシア・パレード④

 間違いなかった。

 妖精との戦争で相対した強敵、輝く翼を有した妖精たちの統率役。こと人間への憎しみに関しては随一の存在。不老と『魂継ぎ』による不死を実現した、妖精の始祖。

 

 妖精軍の長にして族長ザイン、『龍殺し』ケアン・ラッセルを暗殺したギルを要する、ライトエルフだ。

 

「エ、エルフだと⁉」

 

「あ、あんなにいっぱい!」

 

 うろたえるジャーバスらを尻目に、ジャックが、そして少し遅れてナギサが飛び出していた。

 

「りゃああ!」

 

 『神槍パラダイム』の一振りで、アナスタシアらへ降り注ごうとしていた光弾を薙ぎ払い、正面から迎撃できる位置へ陣取る。

 

「全員『オラシオン』の中に隠れるんだ!」

 

 真っ先にドワイト、グラントが、エレナとアディーナに担がれてアナスタシアが建物の中へ避難を開始、他の人々もパニックに陥りながら後に続いた。

 

「人間め!」

 

「思い知れ!」

 

 ライトエルフたちは、宙を舞いながら光弾や魔法で攻撃を仕掛けてきた。

 ジャック、ナギサは避難者たちへそれが注がないように迎撃し、時間を稼いでいた。

 

「チ、チーム『ヘクトン』も続くぞー!」

 

「お、おー!」

 

「おー!」

 

「ナルシェ! 怪我をするんじゃないわよ!」

 

「危なくなったらこっちに来なさい!」

 

 ややあって、『ヘクトン』の面々が加勢に参上した。

 

「うおー!」

 

「きゃーっ」

 

「う、ううっ」

 

 が、エルフらの魔法に翻弄されるばかりで、かえってジャックらの負担を増やす結果になった。

 『ツヴァイト』、『クアルト』、『トリトン』らが合流した時点で、『ヘクトン』の面々は避難者たちの補助へ回されたのだった。

 

「ライトエルフだと! ノクターンの野郎、何を考えてやがる!」

 

 ジェラルドががなる。さしもの彼も、『ヴォイド』が妖精を引き込むとは予想だにしなかったようだ。

 

「今は目前の敵を処理しよう」

 

「シーザーさんに賛成ね」

 

 シーザー、アリシアは冷静にライトエルフと相対した。流石に『テアトル』の主力チームともなると、魔法にも完ぺきに対応しほとんど被害を出さないでいる。

 

 だが―

 

「らちが明きません! 隊長!」

 

「少々不利ですね……」

 

 ライトエルフ側にも、打撃を与えられないでいた。

 如何せん、相手は宙を飛べる上に魔法による遠距離攻撃が主体、いかに優れた剣術であれど、リーチが違いすぎた。

 

「ナギサはそっち!」

 

「言われずとも!」

 

 だが、それをものともしない例外がいた。

 

 ジャックは、建物の壁を蹴って飛び上り、『パラダイム』でもってエルフたちを叩き落としていった。

 時にはエルフを足場にして飛び移り、軽やかな動きで空中の敵を捉えていく。

 

 ナギサは斬撃を飛ばしていく。その剣技はシーザーをして、ほれぼれする程のものだった。同じ長刀を使う身として、その扱い一つで力量がわかる。

 恐らく、真正面から戦えば苦戦は必至だろう。

 

「っち、こっちも負けるんじゃねえ!」

 

 ジェラルドは、落下してきたエルフへ歩を進めた。

 エルフと戦うのは、先の戦争で経験済みである。ただ、前回は『戦争』というくくりにあって、騎士団や他ギルド、特に『ヴァレス』らの遠距離攻撃が得意な協力者も多々あり、彼らの飛行能力もそれほどの脅威ではなかった。

 

「どりゃああ!」

 

 それが、『個』として挑まねばならなくなると、苦戦を免れない。

 戦闘において絶対はあり得ず、ありとあらゆる局面に対応せねばならない。

 歴戦の勇士であるジェラルドであっても、改めて実感する一瞬であった。

 

 ジャックとナギサ、そしてジェラルドらの活躍でライトエルフたちはその数を減らし、残った者たちも戦意を失いつつあった。

 

 それが一変したのは、増援が現れた瞬間である。

 

「あいつは!」

 

 黒い鎧の戦士。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。