ラジアータストーリーズ 龍の目覚め   作:ニシムラタカハシ

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アナスタシア・パレード⑤

「来てくれたか!」

 

「ジャック!」

 

「……」

 

 やはり、この黒い鎧は『ジャック』と呼ばれている。

 妖精に与する存在に、よりによって『龍殺し』にしてギル、ザイン、ガルバドスら長や英雄を葬った男の名を冠している。

 

 名を聞くたびに、ジャックにはいいようのない感情が込み上げてきた。

 リドリーらしき少女と、ジャックを名乗る強者……。

 

 黒い鎧はライトエルフらを庇いつつ、以前ふるっていた長刀で戦士ギルドの面々を寄せ付けない。

 どうやら、前回と同じく撤退のための殿を務めるようだ。

 

「ほら、しっかりしなさい」

 

「!」

 

「増援よ、切り替えないと」

 

 アリシアに肩を叩かれて、ジャックは迷い込んだ心の迷宮から抜け出した。

 朗らかな笑顔と共に、アリシアは剣を黒い鎧に向ける。

 

「相当な腕みたいね、一緒にかからないと危なそう」

 

「……うしっ!」

 

 ジャックは『パラダイム』から、『アビトレイター』と『グラム』の二刀流へと武器を切り替えた。

 アリシア、シーザー、ジェラルドがそれに並ぶ。

 

「相手にとって不足なし」

 

「少しは骨がありそうじゃねえか」

 

「副長、こいつめちゃくちゃ強いっすよ。油断しないで」

 

「おうおう、『斬鉄』のジェラルドも見くびられたもんだ、若造に

心配されるとはな」

 

「へへっ……俺も結構強くなったっすから」

 

 ジェラルドは豪快に笑い―

 

「どりゃあ!」

 

 突貫した。

 ジャック、アリシア、シーザーが続く、遅れたのではなく、時間差をつけて黒い鎧の反応を乱そうとしたのだ。

 

 

 すさまじい剣戟が5人の間で交わされた。

 グレゴリー、ガレスらはライトエルフたちを追撃しつつ、そのすさまじさに舌を巻いた。

 3人の隊長の腕は十分にわかっているつもりだったが、ジャックはさらにその上をいっている。

 その上で、黒い鎧は劣勢気味ながらも、その4人の足止めを続けているのだ。

 

「しぇああ!」

 

 ジェラルドの突きを躱す。

 

「ぬん」

 

 シーザーの切り上げを、長刀で封じつつ蹴り込んで距離を稼ぐ。

 

「やあ!」

 

 アリシアの一撃を受けて衝撃を殺し、態勢を崩した彼女へ切り下す。

 

「くっ!」

 

 間一髪、ジャックがその一撃を受ける。

 一見押しているようでも、僅かの隙を狙って油断なく急所へ迫る。改めて、ジャックは黒い鎧の技量に戦慄せざるを得なかった。

 

 

 黒い鎧は後退すると、手を天に掲げた。すると、そこに巨大な斧が出現した。

 そのまま、大きく飛び上り、思い切り斧を振りかぶる。

 

「やばい! みんな構えろ!」

 

 斧が大地に接した瞬間、すさまじい衝撃波が周囲に走った。 

 備えていた戦士たちでさえ、受けきるのが精いっぱいの一撃だ。

 

(『大地斬』⁉)

 

 ジャックの背に寒気が走った。それは、彼が斧を使う際に使用する技と酷似していたからだ。

 加えて、黒い鎧は武器を自在に操ることができるようだ。

 

 それも含め、自分と『そっくり』だった。

 

「引くぞジャック!」

 

 撤退を遂げたライトエルフの叫びに答えるように、黒い鎧は軽やかに跳ねてあっという間に姿を消した。

 

 追おうとしたジャックであったが、ライトエルフの憎しみのこもった瞳に射すくめられて、その足は止まってしまった。

 

「愚かなニンゲンどもめ……トゥトアスの怒りを知るがいい……」

 

 吐き捨てるように言って、ライトエルフは撤退した。

 

 残されたジャックは、負傷した仲間の救出も追撃の準備にも移れず、ただ棒立ちでいるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

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