ゴブリントリオの襲撃後、妖精の姿はなく、ジャックらは薬草採集を終えて『ラジアータ』へ帰還した。
報酬を受け取り、ラークスへゴブリントリオの件を報告しようかとも思ったジャックであったが、多忙らしく取次ぎを許されず、チャーリーとニーナに伝言を残して城を後にした。
空いた時間をどうするか少し考えた末、『テアトル』での鍛錬へ費やすことに決め、ガレス、デイビッド、デニスらの横で木人相手に武器を振るった。
片手剣、両手剣、斧、槍。
心地よい汗をかき始めたころ、ジャックは顔を出したナルシェに手合わせを頼まれた。
快諾して数戦すると、デイビッドが試合を申し出てきた。終わるとガレス、グレゴリーと続き、最後にはジェラルドがやってきた。
「も、もう勘弁してくださいよ」
「うるせえ、なまってねえかみてやるぜ」
さすがに連戦、しかも『斬鉄』が相手ともなるとジェックも楽ができなくなる。散々喝をいれられ、ようやく解放された頃には体のあちこちが痛かった。
「手加減を知らねえんだから……いてて」
『テアトル』を出て、ジャックはぶつくさ言いながら『ビギン食堂』へ向かった。すっかり腹ペコだ。
その途上、ローレックと出くわした。
「あ、ど、どうも……」
「うっす」
「あ、お家に誰かいましたよ。女性の方でした」
女性、という漠然な情報にジャックは正体を見究めかねた。
詳細を聞こうとしたものの、ローレックも通りがけに目に入れた程度であり、憶えていなくてすまないと頭を下げられてしまった。
「ま、後でいっか」
ひとまず空腹を満たすことを優先して、ジャックは食堂へ足を踏み入れた。
夜になると、『ビギン食堂』は戦士たちで賑やかになる。
この日は特に夕食の予定が重なったのか、主要な隊のメンバーのほとんどが顔を見せ、『ヘクトン』の面々もやって来ていた。
「それでね、隊長がさ……」
「はは、相変わらずだなあ」
「俺はナルシェを庇ったんだ」
「またまた~」
和気あいあいと食事を楽しんでいたジャックだったが、そろそろ食後のデザートへ移ろうとかという頃に、ヴァージニアが顔を出してきた。
「げっ」
「ご挨拶だねジャックくん、折角君へのお客さんを連れて来たのに」
客と言われて、反射的にジャックは先ほどのローレックを思い出していた。
「家に来てた人?」
「そ、さっき行ってみたら待っててね、こうしてエスコートしたんだよ」
個人的にヴァージニアは気に入らないが、客を待たせていたことはバツが悪い。
しばらくすれば帰るか、日を改めるだろうとないがしろにしてしまっていた。
「悪かったよ……」
「気にしないで。あ、ボクにもジャックくんと同じのを、彼のおごりで」
「おいっ」
早速謝罪を後悔すれ、ジャックは彼女の言う客へ応対することにした。
が、その客の姿を見た途端、『龍殺し』は凍り付いていた。
「ジャック」
エアデール・ラッセル。
彼の姉であった。