朝まで続いた掃除の後、ジャックは城からの呼び出しを受け、寝ぼけ眼をこすりながら家を出た。
(何故か」後を引き継いだデイビッドがようやく掃除を終え、ふらふらと自身の家に戻って、エアデールは一人家に残されていた。
「……夜には帰って来るわよね」
そのまま清潔さを取戻した家で待機するを望まず、エアデールは仕度をして外出した。
ジャックがラジアータに戻ったというのを、故郷の『トリア村』を訪れた行商人からいたのが今回の上京を決めた発端である。
『龍殺し』も、彼女にかかってはいつまでも手のかかる心配な弟に過ぎなかった。
それと並行して、都見物という目的も持っていた。なにしろ、故郷から遠く離れた『ラジアータ王国』までは滅多な事では訪れることがない。折角だから、あちこち見て回りたかったし、隣家のサーバルらから土産を頼まれてもいたのだった。
「どうも~」
「あら? あなた……」
「ヴァージニアだよ」
そんなエアデールへ、声をかけてきたのはヴァージニア。
相変わらず柔和な、そしてどこか油断ならない笑顔のまま彼女へ近づいていく。
「ジャックくんにはお世話になってます」
「まあまあ……あの子が迷惑かけてませんか?」
「いえいえ、大恩人ですよ」
無論、真っ当な意味でではない。確かにジャックは彼女を助けたことが何度かあるが、大抵は成り行きと彼女がそう仕向けたためであり、一筋縄ではいかない強かな少女なのだった。
「ところでどちらに?」
「いえ、ちょっと散策かしら。何しろ久しぶりだから」
「一緒にいいですか? 僕もここに来てから全然で」
「ええ、いいわよ」
エアデールにとっても悪くない申し出だった。
ジャックの知り合いであれば、彼について色々聞きたかったし、慣れない土地では一人より二人の方が心強い。
「む……」
そこへ、ナギサが姿を現した。
「やあ、ナギサくん」
「……誰だ? わしは主をしらん」
「ん~、きみは有名人だからねえ」
ナギサはあからさまに不機嫌だった。初対面ですでに、ヴァージニアの持つ危険な雰囲気を察したらしい。
「ジャックにご用ですか?」
「そうだが……主は?」
「姉のエアデール・ラッセルです」
「! ……姉君」
「ナギサくんは東の国からジャックくんにリベンジにしに来たんですよ」
「あら、ジャックが何かしたんですか?」
「む……試合に敗れ……その……雪辱を、雪辱を……晴らさねばならぬ」
ナギサはしどろもどろに答えた。
何故か自分について詳しい怪しい少女と、(いろいろな意味で)関心の先であるジャックの姉を前に、どういう態度を取ればいいか決めかねていた。
「あの子ったら……」
「ジャックくんは色々顔が広いからねえ」
「いいわ、一度詳しく話を聞きましょうお城だったわね?」
「あ、ジャックはそこか?」
かくして、エアデール、ヴァージニア、ナギサと土地勘のない3人組は、ジャックを探して一路ラジアータの町を進みだしたのだった。