「んが……」
小鳥のさえずりと朝陽で目覚めたジャックは、家に複数人の女性がいるのに驚くと同時に昨夜の記憶を取り戻していた。
「みんな泊まったのかよ……」
しかも、家主たる彼は床に寝ており、ベッドと寝袋には女性陣が横になっていたのだ。
それに音を上げるほどやわではないが、やはり気に障るものだった。
「ふ~……」
「ジャック! ジャックう!」
「んあ? ダニエル?」
外からダニエルの焦った叫び声が聞こえて来た。
「どした?」
「大変なんだよジャー」
開け放たれた玄関から見える室内。そこには目覚めかけた少女たち。いずれも顔見知りで、ダニエル自身憎からず思っていた子ばかりだ。
「……」
「ダニエル?」
「き、きみってやつはあああああああ!」
「うわっ、ど、どうしたんだよ?」
真っ赤になってぷりぷり怒るダニエルをなだめるうちに、エアデールらも覚醒して間に入ってダニエルを止めた。
エアデールは姉で、皆はなし崩し的に(という程でもないが)泊まっていったと説明し、ようやくダニエルは落着きを取戻したのだった。
「ジャック、あなたやっぱり夜遊びを……」
「してねーって!」
誤解よりなにより、ジャックはエアデールの説教が怖かった。
一度始まれば無限に思えるほど続き、一切の反論も許されないのだ。
「ダニエルさん、それでどうされたんですか?」
「え? あ、そ、そうだった! ジャック、大変なんだよ! 龍が、龍が出たんだって!」
「! ……どこに?」
「それは―」
「ジャックさんいますか⁉」
「大変なんですよ~!」
ニーナとチャーリーが駆け込んできた。二人とも極度の緊張からか蒼ざめて、冷たい汗をかいている。
来訪の目的は聞くまでもない。
「……とりあえず、ラークスさんところに行く。歩きながら聞かせてくれ」
ジャックは素早く身支度を整えると部屋を出、ふり返って姉たちを見た。
「姉ちゃんはここにいて。みんなは……多分、ギルドから招集がかかるだろうからそっちにな」
返事は待たなかった。
ジャックは一路城を目指し、一度も振り返ることをしなかった。
エアデールは何も言えなかった。かつて父が倒し、そして弟が滅した龍の復活という言葉に理解が追い付いていなかったのだ。
「ジャック……」
弟へ激励なり、身を案じた言葉なりをかけることも出来た。
それを止めたのは、ジャックに恐らく生まれて初めて、『怖さ』を感じたからだ。
そう、かつて明朗快活だった父が見せたようなもう一つの顔。いつからか纏っていた、言いようのない恐ろしい威圧感。
『龍殺し』の殺気。